ポルシェが特許出願した「6ストローク エンジン」が、一部の人々の間で話題になっています。しかし、同社が正式に発表した資料で知られたのではなく、恐らく、出願してから 18ヶ月が経過して、特許公開期間に入ったからでしょう。
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出願時に提出された資料の一部が入手できましたので、改めて考察をしてみたいと思います。
最初に注目したのは ストロークの長さです。 120㎜ 近くもあり、同社の SUV「マカン」の 3リッター V6エンジン のストローク が 69㎜ である事を考えても長い事です。ただ、単気筒の試験用エンジンを製作して試験を行なっている可能性もあります。
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次に注目したのは、独特の機構でストローク長を変化させているのですが、上死点と下死点ともに、それぞれ約 20㎜ 近く伸びている点です。 クランク角 0度 から吸気を始めて、180度から 圧縮行程にはいりますが、そこからストローク長が伸びるので、吸気を始めた際の上死点を超えて更に圧縮して、約360度 で点火・爆発となっています。
そして、ここから 最も長い膨張行程に入ります。ここだけに注目すると、エンジンの熱効率を追求する “アトキンソンサイクル” が想起されます。 つまり、高効率を追求した開発が顔を出しているのです。
そして、540度では、下死点が 約 20mm 下がり、シリンダー壁面に設けられた「掃気ポート」から新気の導入と燃焼ガスの排気を同時に進めます。ここが 2ストロークエンジンと同じ仕組みで、720度 で点火・爆発 となのですが、ここにも 熱効率を高める仕組みが入っていそうです。 つまり、新気導入の際、シリンダーヘッドの排気バルブを閉じるのを遅らせて、実質的な圧縮行程を短くして、点火・爆発の次に続く 膨張行程(ここでは 短ストロークに切り替わっています)を 圧縮行程と比較して長くしている可能性があります。これも、アトキソンサイクルの考え方の応用で、熱効率を高めるのに役立つでしょう。
以上の特徴から、この特許は高回転・高出力 という目的で開発されているのではなく、内燃機関の熱効率を高める事を目的としていると思われます。応用範囲としては、ガソリン以外の代替燃料を用いた 発電用内燃機、例えば 電動の大型船舶の発電ユニットなど、脱炭素による地球温暖化対策で あらゆる乗り物が電動化へと進む中で、貴重な内燃機としての勝呂を切り開くのかも知れません。 或いは、膨張するクラウドシステムにより電力需要は高まる一方の現代で、社会インフラ・電力網を支える スマートグリッドに寄与できる可能性もありそうです。
The most distinctive feature of the six-stroke engine for which Porsche has applied for a patent is that the stroke of the pistons is changed by a special mechanism. It is believed that Porsche is pursuing the possibility of significantly improving thermal efficiency by taking advantage of the feature that the top and bottom dead centers of the pistons change significantly over the course of three revolutions of the crankshaft. As for future uses, it is believed that the engine will not only be used as a high-revving, high-output sports car engine, but that as all vehicles, including not only automobiles but also airplanes and ships, are moving toward electrification, it is believed that the engine will be used as a valuable power generation unit that takes advantage of the unique characteristics of internal combustion engines.
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