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テレスコピック形式フロントフォークとBENDA方式 / Telescopic front forks and BENDA system

2024-04-28 22:11:30 | オートバイ基本講座の基本

source : Cycle World Magazine
https://x.gd/yHZ02

 

次々と意欲的なデザインの車両を発表している、中国の BENDA Motorcycle が新たに発表した「BENDA Napoleon 250」を先ずは見て下さい。

First of all, take a look at the newly announced "BENDA Napoleon 250" by the Chinese company BENDA Motorcycle, which has continuously released vehicles with ambitious designs.


この記事を見た時、最も注目したのは サスペンションの形式がとても変わっている事です。特に、フロントサスペンションは、殆どのオートバイで採用されている「テレスコピック」形式のフロントフォークではなく、一見、「ガーターフォーク」の様に見える形式です。

What caught my attention most was that his suspension style was very unusual. In particular, the front suspension is not the "telescopic" type front fork that is used on most motorcycles, but rather a type that at first glance looks like a "garter fork."


ところが、画像を詳細に眺めてみると、通常の「テレスコピック」形式のフロントフォークに、片側 2本の構造材(ロッド)と ダンパーを装着した形だと判りました。ただ、問題なのは、この「BENDA」方式にどんなメリットがあるのかです。ですから、この「BENDA」方式のメリットと、通常の「テレスコピック」形式の欠点を考察してみました。

However, upon closer inspection of the image, we found that it was a normal "telescopic" front fork with two structural members (rods) on each side and a damper attached. However, the question is, what kind of benefits does this "BENDA" method have?So, I decided to consider the benefits of this "BENDA" method and the drawbacks of the regular "telescopic" format.



最初に考えたのが、通常の「テレスコピック」形式の欠点の払拭を狙った形式なのか?という事でした。 「テレスコピック」形式のフロントフォークの欠点は、剛性が決定的に不足している事です。その為、上の左の図で示した様に、アクスルシャフトが前後に常に揺れてしまいます。
では、「BENDA」方式は? と、期待を込めて解析してみると、多少効果はあるものの、実際には欠点克服には至っていないと思われます。構造を確認しましょう。通常のテレスコピック型のフロントフォークの内部にはスプリングが入っている筈です。そして、フォークの伸縮に合わせて、ロッドA とロッドBの角度が変わり、ダンパーユニットで無駄なリバウンドを吸収する形式ですから、路面からの衝撃の一部がロッドに伝わるものの、フォークの縦方向の剛性への寄与は大きくないと予想されます。

The first thing I thought was that this type was designed to eliminate the lack of rigidity, which is a drawback of the regular "telescopic" type. That's what it meant. With the telescopic type, the axle shaft tends to constantly swing back and forth, as shown in the diagram on the left above.
I tried to analyze the "BENDA" method with high hopes, and although it is somewhat effective, I don't think it actually overcomes its shortcomings. Although some of the impact from the road surface is transmitted to the rod, it is not expected to contribute significantly to the longitudinal stiffness of the fork.




次に考えたのは、「テレスコピック」形式のフロントフォークの最大の欠点である、フォークの整列が乱れ易く、その結果、旋回時のフロントフォークの伸縮により、右旋回と左旋回では操縦特性に違いが生じ易い事の解消効果です。これは、リンクが前後方向へ張り出している為、明らかに整列を乱す様な外力に対する剛性が高く、きっと効果はあると思われます。しかし、これだけの構造物を付加して、フロントフォーク内には潤滑用のオイルも入れて、重量的にもコスト的にも、相応のメリットがあるかと問われれば、大きな疑問が残ります。

この様に、「テレスコピック」形式のフロントフォークは、簡単な構造で製作が容易で、しかもフォークの伸縮によって「トレール量」を適度に変化させる事も容易で、更には、剛性の低ささえもライディングの容易さに感じさせている事が多くの車両で採用されている最大の理由でしょう。しかし、「テレスコピック」形式を超えるフロントフォークの形式は数多く考案されており、そういう形式を眺めるだけでも “夢” や “妄想” が広がってしまいます。

Next, I considered the biggest drawback of the "telescopic" type front fork, which is that the alignment of the fork is easily disturbed, and as a result, the front fork expands and contracts when turning, resulting in poor handling characteristics when turning right and left. This is the effect of eliminating things that tend to cause differences. This is because the links protrude in the front and back direction, so it has high rigidity against external forces that would obviously disturb the alignment, so it is sure to be effective. However, if you ask me whether adding this much structure and including lubricating oil in the front fork has any merits in terms of weight and cost, a big question remains.

In this way, the "telescopic" type front fork has a simple structure and is easy to manufacture, and it is also easy to change the "trail amount" appropriately by expanding and contracting the fork, and even the low rigidity makes it easy to ride. The ease of use is probably the biggest reason why it is used in many vehicles. However, many front fork formats that exceed the "telescopic" format have been devised, and just looking at such formats can fill you with dreams and delusions.

 

 

 


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「 Fior タイプ」フロントフォーク / ”Fior type" Front Fork

2024-03-20 22:55:23 | オートバイ基本講座の基本

 
Tip Bandit 伝、
 
ドゥカティのユニットと電気モーターを搭載した、ハイブリッドモデルのコンセプト車です。 僕が最も惹かれて点は「Fior タイプ」のフロントフォークです。

 This is a concept hybrid model with a Ducati unit and an electric motor. The thing that attracted me the most was the "Fior type" front fork.
 

記事 / Article:TIP Bandithttps://x.gd/KCkUS  >
    

どの車両メーカーも電動化の波は無視できず、何等かの模索は行なっており、その過程で誕生したのが、デンマーク人のDaniel Kemnirts 氏が製作したこのコンセプト車です。どこまで ドゥカティ社の関与があるかは不明ですが、2気筒 499㏄ 60kw(約 80Hp)と 電気モーター 50kw (67Hp)を搭載していて、搭載方法もオーソドックスで特に目新しい点はありません。
   
ただ、注目した点は「Fior タイプ」のフロントフォークを採用している点です。Fior とは元レーサーとして活躍した後で 、1980年代に WGP用(現在の MotoGP)にフレームコンストラクターとして参戦していた人の名前です。そして、そのフレームで最も注目を集めていたのが「Fior タイプ」のフロントフォークです。その構造や Fior 氏自身の事が書かれた記事は別途紹介します。
    
このフロントフォークは、殆ど車両で採用されている テレスコピック形式の欠点を解消して、優れた剛性と安定性、そしてサスペンションとしての作動性の高さを実現した優れたシステムです。そして、覚えている人も多いと思いますが、1991年、NZ の天才的なエンジニア・Britten 氏が作り、当時のワールドクラスのツイン(車)レースで圧倒的な成績を収めた、 Britten V1000 のフロントフォークもこの「Fior タイプ」だったのです。同様な形式も考案されているなど、呼び 名は色々ありますが、著者の意向に沿って「Fior タイプ」と記載しました。 
    

記事 / Article : Lawrence  https://lrnc.cc/_ct/17235916 >


All motorcycle manufacturers are looking for some form of electrification, and this concept vehicle, created by Danish designer Daniel Kemnirts, is the result of that process. Although the extent of Ducati's involvement is unclear, the bike is powered by a two-cylinder 499 cc 499 lb-60 kW (approx. 80 Hp) and an electric motor 50 kW (67 Hp), and the installation method is orthodox and nothing new.
  
However, one thing that caught our attention was the use of "Fior-type" front forks, the name of a former racer and frame constructor who competed in the WGP (now MotoGP) in the 1980s. The most notable feature of the frame was the "Fior-type" front fork. The article describing its construction and Mr. Fior himself will be introduced separately.
    
This front fork is an excellent system that eliminates the shortcomings of the telescopic type used in most vehicles and provides excellent rigidity and stability, as well as high suspension performance. And, as many of you may remember, the front fork of the Britten V1000, built by the brilliant NZ engineer Britten in 1991 and a dominant winner in the world-class twin races of the time, was also of this "Fior type". There are many different names for this type of fork, but I have used "Fior type" in accordance with the author's intention. 



< 記事 / Article :https://gra-npo.org/policy/yokai_column/diary/20210820_Britten/britten.html






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MotoE、2023年から ドカティ・ワンメイクレース車両 / Ducati's one-make vehicle for MotoE

2023-04-13 13:00:44 | オートバイ基本講座の基本

Now Moto News 伝、

MotoE、2019年から MotoGP との併催で行なわれていた 電動バイクレース。2023年から ワンメイク車両として、エネルジカに代わって、名乗りを挙げた ドゥカティ のレース用車両。MotoGP で実績のある多くの部品や構成&配置を継承している事が分かるが、操縦特性に大きく影響するホイールベースがかなり長く、冷却系から 電動車でも冷却の大切さも分かる。

一番の関心事は、モーター配置と駆動系だから、左側の画像も確認したいところ。ただ、ワンメイク車両として供給する事もあり、コストや信頼性、メインテナンス性を優先させて、さほど攻めた設計にはなっていないだろう。

https://www.facebook.com/photo?fbid=681423447320307&set=a.502313458564641


MotoE, an electric motorcycle race that has been held in conjunction with MotoGP since 2019. From 2023, as a one-make vehicle, Ducati racing, replacing Energica. It can be seen that it inherits many parts, configurations and arrangements that have been proven in MotoGP, but the wheelbase, which greatly affects the steering characteristics, is quite long, and the cooling system shows the importance of cooling even in electric vehicles.

My main concern is the motor arrangement and drivetrain, so I would like to check the image on the left as well. However, since it is sometimes supplied as a one-make vehicle, it is not designed so aggressively, prioritizing cost, reliability, and maintainability.


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VTR君、身体をほぐして、整体で、大変化!

2022-07-10 01:11:23 | オートバイ基本講座の基本

   
明日(7/10)は “クリニック” イベント開催の日。
最近、なぜか、乗り難さを感じていた VTR君。 妙に素っ気なく、”つっけんどん” な態度を振る舞う態度が気になっていた。日頃、あまり乗ってやっていない後ろめたさもあって、少し機嫌を取る為に、一度、身体のコリをほぐしてやって、きちんと整体をしてあげる事にした。
    
エンジンマウント 左右 6ヶ所とスインアームのアクスルシャフト、そして リアのサスペンションユニットの上下2ヶ所のマウントボルトを緩め、車体を正立させてたまま、ゴムハンマーでエンジンからフレームまで衝撃を与えて、一旦放置。
それから、エンジンとスイングアームピポットを結ぶ、プレート状のサブフレーム左右 4ヶ所のボルトを指定トルクで締め、次に、スイングアームピポットシャフトも指定トルクで締め、そして、エンジン中央部とフレームをつなぐ左右2ヶ所のボルトも指定トルクで締めてあげた。最後に、サスペンションユニットの上下マウント用ボルトを指定トルクの 2割減で締めてあげた。

 

さあ、機嫌は直っているだろうか?と、燃料タンクやシートを元に戻して、路上につれ出してあげようとして、すぐに、変化に気付いた。1st ギアに入れた時のショックが少ない。まるで、超高性能のエンジンオイル添加剤を入れた様な感じだ。走り出せば、もっと多くの違いに気付いた。 真っ直ぐ、気負い無く、スーと走ってくれるのだ。 当然、シフトチェンジもスムーズになっている。さらに、アクセルを戻した時もスムーズになっている。このスムーズさを体験したお蔭で、昨日はでは車体後部が左右に少し揺れる症状があった事に気付かされた程だ。
    


アクセルワークへの神経質な動きが少なくなったので、ターンはうんと楽になった。まるで、一気に上達した様に感じられるほどで驚いた。これで、明日(7/10)の現地への往復は随分楽しくなるだろうし、もっと、イベント開催が楽しみになった。 興奮して眠れないほどで心配になる程だ。

これは、きっと、全国の VTR君もご機嫌になるメニューに間違いない。 エンジンがフレームの一部を担当しているから、きっと、大きな変化が生まれたのだと思う。エンジンガードやスラッシュガードなど、後付けでサブフレームを取り付けていない限り、必ず、生まれ変わるのは感じられるだそう。 

 


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「キャスター」ではなく、「ステアリング(回転)軸角」と書きます

2022-05-30 05:25:55 | オートバイ基本講座の基本

『 日本特有の「キャスター」 』

現在、日本の二輪業界では「キャスター」という言葉がよく使われてますがが、実際のオートバイには「キャスター」らしき部品はありません。
  

また、専門誌のライターでさえ、「キャスター」という言葉で角度を表現させていますが、角度を表現するならばキャスター角とするべきで、適切な理解を求めるならば、「キャスター」という言葉の利用には慎重になるべきでしょう。

 

『 自転車や欧州メーカーでの表記 』

実は、自転車の世界では「ステアリング(回転)軸角」という表記が一般的で、その角度は路面からの角度を示していて、日本での「キャスター」が鉛直方向からの角度としているのとは異なります。
  


また、自転車に限らず、欧州主要二輪メーカーでは、角度を示すための「キャスター」という表現は無く、「ステアリング軸角度」や「ステアリングヘッド角度」として、路面からの角度で示されるのが一般的です。
   

以上の理由で、「ステアリング回転軸角(キャスター)」と書く事にします。 また、角度の測定方法も、路面からの角度を「ステアリング回転軸角」と書きます。



『 四輪業界での「キングピン」は、適切な利用へ 』

実は、四輪業界でも「キングピン角度」という言葉が最近までよく使われていて、整備の国家試験にも出てくる程でしたが、現在は改められつつあります。それは、「キングピン」という物は現在も形を変えて残っていますが、一般的な乗用車には「キングピン」は無く、より適切な表現をする為に使われなくなっているのです。



『 キングピンとは 』

キングピンとは、歴史は古くて、四輪式の馬車の時代に遡ります。馬車の前二輪は、馬の向きに合わせて向きが変わる様に、ターンテーブルステアリング方式と呼ばれる、前2輪のフレームと馬車とは 1本の太い「回転軸」で繋がっていて、これが「キングピン」のルーツです。

19世紀末、馬車から自動車の時代に移った際、前輪の向きを変える機構の部品の一部を「キンギピン」と呼んでいたのですが、21世紀の現代、一般乗用車で「キングピン」がある車両は殆ど無くなっているので、より適切な「ステアリング(回転)軸角度」等の表現に訂正されています。


ただ、現代でも「キングピン」が発明された当時のまま残っている車両が多く走っています。それは、トレーラー(被牽引車両)の連結部分にあります。 名称は、「第5輪」とか「カプラー」と「ピン」など呼ばれていますが、馬車が発明された当時からの「キングピン」の構造そのものです。




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