21日朝日新聞は、”ナワリヌイ氏妻「闘いを続ける」【6.8万人、遺体引き渡し要求】”と題する下記のような記事を掲載しました。
”北極圏の刑務所で獄死したロシアの反政権派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の妻ユリアさんが19日、夫の遺志を継ぎ、「さらに激しく闘いを続ける」と宣言した。5万人規模の追悼デモが3月2日にモスクワで計画されるなど、批判の声が広がっている。
ロシア当局によると、ナワリヌイ氏は16日に死去した。国外にいるユリアさんはSNSに動画を投降し、「プーチンは私の夫を殺した。同時に私たちの希望や自由、未来を、私たちから奪おうとした」と述べた。
ロシアの独立系メディアによると、ナワリヌイ氏は3年間で計308日間、懲罰の独房にいれられた。
ユリアさんは、「部屋は6、7平方メートルで床の穴がトイレ代わり。横になることもできない」過酷な環境だったとしたが、「彼はあきらめなかった」と強調した。「大切なのは、アレクセイのために、自分たちのために闘い続けることだ。もっと必死に、もっと激しく」と訴えた。…”以下略
また、合わせて
”母「息子に会わせて」訴え”と題して、ナワリヌイ氏の母、リュドミラさんの訴えも掲載しました。
こうした情報が、ロシアを悪者として追い詰め、プーチン政権を転覆して覇権と利益を維持したいアメリカにとって、極めて有効であることを見逃してはいけないと思います。バイデン政権の高官や情報機関の関係者が、ナワリヌイ氏やユリア氏に接触し、プーチン政権転覆のために、さまざまな支援をしているのではないかと想像します。
ナワリヌイ氏の死亡にこだわり、プーチンが殺したものとして、連日、ロシアを悪者にするような記事を掲載しているメディアが、ガザで毎日、多数のパレスチナ人が不当に殺されている事実を受け流し、イスラエルの戦争犯罪を阻止しようとしない現実を、私は、受け入れることができません。
メディアは、不確かな情報を、事実であるかのように報じてはいけないと思います。また、確かな情報に対する自らの姿勢をはっきりとさせる責任があると思います。犯罪は止める必要があるのです。止めようと意図する報道が必要だと思います。
また2024年2月24日で、ウクライナ戦争が2年を経過し、3年目に入るからでしょうか、ウクライナに関わる記事が、連日、いろいろなかたちで掲載されています。20日には”「芸術さえ壊される ウクライナ 300ケ所以上の文化財」”と題する記事が掲載されました。ウクライナが、アメリカをはじめとするNATO諸国の支援を受けてヤヌコビッチ政権を転覆し、その後もロシアを挑発し続けた事実を隠し、さ、ウクライナの戦争被害の報道を、停戦につなげようとする意図を示さず、ロシアのプーチン政権を変えなければくり返される、という論調で書かれていることに、私は、大きな問題を感じます。
先日は、何人かのウクライナの人たちの証言が朝日新聞に掲載されていたのですが、その中のオレクシー・ロクチオノウさん(64)の「100メートル先の工場に着弾」と題する証言には、見逃すことのできない考え方が示されていました。下記です。
”…即時停戦には反対です。もしいま停戦すれば、ロシア力を蓄え、間違いなく再び戦争を始めます。ウクライナが負けたら、次はバルト三国、その次はポーランドです。プーチン大統領は止まらない。ウクライナが独立した1991年時点の全領土が解放されなければいけません。ロシア軍を撃退し、再び現れないようにしなければなりません。ミサイル攻撃で工場が燃えたり、シェルターに避難したり。そんな暮らしは平和ではない。子供達が笑って静かに暮らせるような、そんな日が来てほしいと願っています。”
同じような考え方は、日本でもしばしば目にしたり、耳にしたりしました。私は、この考え方はゼレンスキー大統領によって広められた考え方だと思います。また、この考え方は、プーチン政権を転覆したいアメリカの戦略から出てきたものだと思います。
ロシアをあらゆる組織化から追放し、オリンピックをはじめとする、世界の諸大会からさえもアスリートを排除して、あらゆる交流を遮断したり、話し合いを拒否じたりしなければ、”ウクライナが負けたら、次はバルト三国、その次はポーランドです”などということには決してならないと思います。また、ならないように交流を深め、話し合いをするべきなのだと思います。
こうした考え方で、話し合いを避け、ロシアを敵視し、武力を充実させたり、高度化させしたりして、軍事訓練などをくり返すから、ロシアの方も、それに対応するのだと思います。
国連憲章第二条の3に”
”すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。”
とあります。西側諸国の対応は、国連憲章違反だと思います。
ウクライナ戦争でも、イスラエル・パレスチナ戦争でも、国連憲章に基づいた、平和的な解決のための該当国を中心とする話し合いがありません。それは、圧倒的な経済力と軍事力を持つアメリカが、それを維持し、発展させるための世界戦略をもって関わっているからだと思います。そうした世界戦略は、アメリカの過去の対外政策や外交政策にもあらわれていたと思います。
ふり返れば、アメリカは、相手がアメリカを攻撃したわけではないのに、朝鮮戦争でも、ベトナム戦争でも、湾岸戦争でも、イラク戦争でも、アフガニスタン戦争でも、敵対する国家や組織を武力をもって攻撃しました。国連憲章違反だと思います。
だから、考えるのですが、日米安保条約およびそれに基づく「地位協定」が改定されたり、破棄されたりしない限り、日本も平和に寄与する国にはなれないと思います。
日米安保条約の第六条には、下記のようにあります。
”第六条
- 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。
前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。
そして、日米地位協定(正式名称は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定)第二条の1(a) は、下記のように定めています。
”第二条【施設区域の提供と返還】
1(a) 合衆国は、相互協力及び安全保障条約第六条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許される。個個の施設及び区域に関する協定は、第25条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなければならない。「施設及び区域」には当該施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。”
これらの条約や協定は、先日も触れた当時のアメリカのダレス国務長官が語った「望む数の兵力を望む場所に望む期間だけ駐留させる権利」をアメリカに与えたものですが、現実は、こうした条約や規定さえ、守られてはいないのです。
「日米地位協定逐条批判」地位協定研究会(新日本出版社)は、それを明らかにしています。下記に抜萃した文章には、その決定的証拠ともいえる、アメリカ国防総省発表の「アメリカと日本の安全保障関係に関する報告書」も、下記のように取り上げています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2 「排他的使用権」を容認する反国民的規定──第三条
日本政府は、米軍が安保条約の目的を越えて基地を違法に使用していることを容認している。「排他的使用権」についても、たとえば、ドイツの補足協定の署名議定書で明らかにされているように、「防衛活動」という「目的の遂行上必要な範囲内のものに限られる」。すなわち米軍の使用の仕方が米軍の施設・区域を設定した目的に合致するかどうか、軍隊としての機能上、最小限不可欠であるのかなどの限界がある。
それ自体、憲法違反の疑いが強い米軍用地の特別措置法(日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等に関する特別措置法)でも、「駐留軍の用に供するため土地などを必要とする場合において、その土地等などを駐留の軍用に供することが適正且つ合理的であるときは、この法律を定めるところにより、これを使用し、又は収用することができる」(第三条)との限界を規定している。
そして米軍の施設・区域の提供は、あくまで安保条約第六条を基礎としているのであるから、同条の「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」という目的によって制約される。ところが、在日米軍は、この目的の範囲を大きく逸脱し、アジア・太平洋地域さらには世界に向けてその機能を強化・拡大している。現に、イラクによるクウェート侵攻に端を発して1991年の度湾岸戦争に際しても、在日駐留米軍は、日本の米軍基地から湾岸戦争へ参加している。
沖縄からは、嘉手納基地の空中給油機、第一特殊部隊群第一大隊(グリーンベレー)、海兵隊8000名などが現実に湾岸戦争に参加した。また、96年9月の米軍のイラク攻撃についても。在日米軍が参加している。95年2月に発表されたアメリカの「東アジア戦略報告」、96年4月の日米両首脳による日米安保共同宣言に明示されている安保「再定義」からも明らかのように、日米安保条約、駐留米軍が、アジア・太平洋さらには地球規模で機能しつつある。
このように目的を逸脱した基地の使用ついても、日本政府はなんら問題とせず、逆に、アメリカの要求にしたって、みずから積極的に憲法や法律を無視する態度に出ている。このような地位協定とその明文すら逸脱する運用によって、基地被害が放置され、国民の生活と権利が犠牲にされつづけてきたのである。今、このような反国民的規定の存在そのものが問われなければならない
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1 日本の国土を提供する根拠条項──第2、4条
3 安保条約の目的にも反した基地提供の実態。
しかも、安保条約・地位協定の実際の運用、すなわち基地の提供の仕方に問題がある。日本政府は、安保絶対必要論の立場から基地の提供をはかってきたが、この解釈運用は日米両政府の思うままの恣意的なものになってきた。そのため、ほんらいなら安保条約の規定にも反する基地提供がおこわれてきたのが最近の実態である。
すでに見たように、「施設・区域」の提供を定めた地位協定の根拠となっているのは、安保条約の第六条である。安保条約第六条は、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全に寄与するため。アメリカ合衆国はその陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」とのべている。既定今日の目的は、日「本国の安全」と「極東の平和と安全」と明記されている。しかし、実態は、この目的条項をはるかに逸脱している。
たとえば、現在、日本に展開している米軍の主力は、沖縄における海兵隊であり、横須賀を母港とする空母戦艦群であり、また横田、三沢、嘉手納の第五空軍である。その作戦行動は極東の領域を遥かに超えたアジア・太平洋地域であり、中東・ペルシャ湾であり、すなわち地球規模の地域である。沖縄、岩国、厚木、横田、三沢、横須賀、佐世保などをはじめとした米軍基地は、安保条約の基地使用目的にすら反して提供されている。
アメリカ国防総省が95年3月に発表した「アメリカと日本の安全保障関係に関する報告書95年3月一日付は次のように述べている。
「日本におけるわれわれの陸軍、空軍、海軍および海兵隊の基地は、アジア太平洋における防衛の第一線を支援するものである。これらの部隊は、広範な局地的、地域的、並びにペルシャ湾にいたるまでの地域外の緊急事態に対処する準備を整えている。太平洋とインド洋の横断距離は非常に長いので、アメリカは、地域的緊急事態に対応できるように計画された。小規模で、機敏で、より機動性に富む部隊を重視しており、そのことが在日米軍基地の地理的重要性を大きく高めている」1991年1月17日に始まった湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦は、この典型例であった。湾岸戦争では、在日米軍基地から沖縄の海兵隊約8000人以上、横須賀母港とする空母ミッドウェー戦闘群六隻。岩国の海兵隊攻撃機ニ個飛行中隊31機、横田の輸送部隊などが出動した。
また、96年9月のイラクに対する武力攻撃には、三沢のF16戦闘爆撃機、嘉手納の空中給油機、横須賀のトマホーク搭載駆逐艦が出撃した。
すでに在日米軍の実態は、このような地球規模に展開する軍隊となっているのである。ここには、国民の意思はもちろん、国会の意思もまるで反映されていない。