先日、朝日新聞は、「無所属ケネディ氏米大統領選撤退へ トランプ氏を支持か」と題する記事を掲載しました。そして、”民主党の候補がハリス氏になり、リードしていたトランプ氏を追い上げているという世論調査が相次いでいることを受け、トランプ氏にはケネディ氏の支持層を取り込みたい狙いがあるとみられる”という文章で締め括られていました。
でも、大事なことは、トランプ氏の選挙戦略ではなく、長く民主党員であったケネディ氏が、なぜ撤退を決意し、共和党のトランプ氏を支持することにしたのか、ということではないかと思います。NHKも、朝日新聞とほぼ同じ内容の報道をしていました。日本のメディアが、みなケネディ氏の主張を無視し、支持層拡大を狙ったトランプ氏の選挙戦略問題に矮小化してしまうのはなぜか、と思います。
朝日新聞をはじめとする日本の大手メディアは、みなハリス氏支持の立場で、大統領選の報道をしており、客観的事実を読者にきちんと伝えていないように思います。
ケネディ氏は、下記の講演のなかで、とても重要なことを語っています。民主党は変質したというのです。その主張をまったく無視して、トランプ氏の支持層拡大の選挙戦略問題に矮小化したり、ケネディ氏を陰謀論者としたり、陰謀論を信じる政治家と見做すような報道をする朝日新聞をはじめとする日本の大手メディアも、アメリカの民主党と同じように変質してしまったのではないかと思います。
「DS解体」を宣言しているトランプ氏が再びアメリカの大統領になれば、アメリカ社会は相当混乱するでしょうが、国際社会の戦争状態は解消されていくように思います。だから、トランプ氏の選挙公約ともいえる「DS解体」の演説の、日本語訳のついたTwitterの動画を、以前、投稿文に貼り付けたのですが、いつの間にか「削除」されていました。驚きました。だから発信元を探したら、”Leading Report”、というサイトが、「DS解体」の内容の英文をつけてtweetしていました(https://twitter.com/LeadingReport/status/1750332674701463838)。ケネディ氏の演説内容とも関連して、興味深いものがあると思います。
”Trump’s plan to dismantle the ‘Deep State':
1. Immediately reissue 2020 executive order restoring the president’s authority to remove rogue bureaucrats and wield that power “very aggressively."
2. Clean out all the corrupt actors in our national security and intelligence apparatus.
3. Totally reform FISA courts.
4. Establish a “Truth and Reconciliation Commission” to declassify and publish all documents on the deep state’s spying, censorship, and corruption.
5. Launch a major crackdown on government leakers who collude with “fake news to deliberately weave false narratives and subvert our government and democracy.”
6. Make every inspector general’s office independent and physically separated from the departments they oversee.
7. Ask Congress to establish an independent auditing system to continually monitor our intelligence agencies.
8. Continue the effort launched by the Trump administration to move parts of the federal bureaucracy to new locations outside the “Washington Swamp.”
9. Work to ban federal bureaucrats from taking jobs at the companies they deal with and regulate.
10. Push a constitutional amendment to appose term limits on members of Congress.
ポストを翻訳というところをタップしたら、下記の日本語になりました。
1. 2020年の大統領令を直ちに再発行し、不正な官僚を排除する大統領の権限を回復し、その権力を「非常に積極的に」行使する。
2. 国家安全保障および諜報機関に潜む腐敗した関係者を一掃する。
3. FISA裁判所を全面的に改革する。
4. 「真実と和解委員会」を設立し、ディープステートのスパイ活動、検閲、汚職に関するすべての文書を機密解除して公開する。
5. 「フェイクニュースと共謀して故意に虚偽の物語を作り上げ、政府と民主主義を転覆させる」政府の情報漏洩者に対する大規模な取り締まりを開始する。
6. 各監察官の事務所を独立させ、監督する部署から物理的に分離する。
7. 諜報機関を継続的に監視するための独立した監査システムを確立するよう議会に要請する。
8. トランプ政権が開始した、連邦政府官僚機構の一部を「ワシントン・スワンプ」外の新しい場所に移転する取り組みを継続する。
9. 連邦政府の官僚が、自らが取引し、規制する企業に就職することを禁止するよう取り組む。
10. 国会議員の任期制限を定める憲法改正を推進する。
また、2016年の大統領選挙では民主党全国委員会の副議長を辞し、バーニー・サンダースの支持を表明した、トゥルシー・ギャバード(Tulsi Gabbard)も、”私は、20年以上民主党員であったが、今日、大統領としてトランプ候補を支持する(I was a Democrat for over 20 years. Today, I endorsed Donald Trump for President.)” と、演説をしてます。(https://twitter.com/i/status/1828165678844850456)彼女は、ワシントン・ポスト紙等複数メディアが、2020年大統領選挙の有力女性候補11名の1人として紹介した人物だといいます。
このように、国際社会でもよく知られた民主党の政治家が、トランプ氏を支持する演説をしたことは、重大なことであり、メディアは、その賛否に拘わらず、理由を報道する責任があると思います。
なぜ、ウクライナ戦争が続くのか、なぜ、ハマスの兵士だけではなく、パレスチナの民間人が殺され続けるのか、なぜ、国連車両がイスラエル軍に銃撃されるのか、歴史を遡ることによって、真実が見えてくることがあると考え、再び「イラン 世界の火薬庫」宮田律(光文社新書303) から、「第四章 イランとアメリカ」の「2 対テロ戦争の標的」から、「アメリカの矛盾」「二重基準」「核戦略の正当化」「莫大な予算」を抜萃しました。武力行使に至る源がわかるような気がするのです。
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第四章 イランとアメリカ
2 対テロ戦争の標的
アメリカの矛盾
アメリカはイランの核開発を懸念し「テロ支援国家」イランによる核兵器の保有は容認できないという考え方を再三明らかにしている。アメリカの軍産複合体にとって、反米スタンスを頑なに崩さないイランの動静は、「イラクの次の脅威」として国民を説得できるものであるにちがいない。
しかし、アメリカがイランの核エネルギーを問題にすることは、イランはじめとしてイスラム世界で説得力を持たない。イランはウラン濃縮活動停止止を2006年8月29日に拒否したが、ハメネイ最高指導者やアフマディネジャド大統領など保守強硬派の影響力が強まったイランは核問題で米欧諸国と容易に妥協しないだろう。
アメリカとの対決姿勢を鮮明にするイランは核問題で国際政治において当面焦点となり続けるだろう。9.11の同時多発テロからアメリカは「対テロ戦争」を展開したが、これまでも触れてきたように、イランはアメリカやイスラエルがテロ組織と形容するヒズボラを支援している。そうしたイランとヒズボラの関係は疎遠になることはなく、イランもまたアメリカの対テロ戦争の標的になる可能性は高い。
アメリカは、イランのウラン濃縮活動の停止期限とした2006年8月31日の前日である8月30日にネバダ州の核実験場で臨海前核実験を行なった。イランの核エネルギー開発を非難するアメリカが核実験を行うことは、自らの矛盾した姿勢を明白に露呈した。
米欧諸国には理性があるから核兵器を保有しても問題ないが、イランなど「テロ支援国家」の核兵器保有は断固阻止するというアメリカの姿勢は、少なからぬムスリムたちの憤りを招くことになっている。パキスタンは2000年に核実験に成功した時、アメリカやイスラエルに対抗する「イスラムの核」として、イスラム世界の民族性を越えてこれを歓迎するムードがイスラム世界にはあった。
二重基準
現在アメリカが保有する核弾頭の数は9960発で、そのうちの5735発はすぐにも使用できると見られている。1050発は大陸間弾道弾で、また1955発は爆撃機に搭載され、さらに2016発は潜水艦に搭載されるのだ。200から300発はベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トルコ、イギリスというヨーロッパのNATO加盟六カ国に配備されている。NPT(核不拡散条約)ではアメリカは核兵器を保有してもよい五カ国に数えられているが、こうしたNPTの在り方もイランなどイスラム諸国からは不信をもって見られる原因だ。
1998年にインドとパキスタンが核実験を行うと、クリントン政権はこれら二国に対して経済制裁を加えたが、インドに対する経済制裁は翌1999年に停止されている。
これに対してイスラム国であるパキスタンは、非民主的な方法で政権を奪取したとして経済制裁が停止されることはなかった。アメリカがパキスタンへの経済制裁の撤回に踏み切るのは、パキスタンのムシャラフ政権が2001年のアフガニスタンにおける対テロ戦争に協力してからである。さらに、2006年になって、アメリカのブッシュ政権はNPTに加盟していないインドとの核協力を行っていくことを約束した。
イスラム世界を訪ねると、日本はアメリカによってヒロシマ、ナガサキに原爆をとされた国であるとの同情がある。「対テロ戦争」によるアメリカの攻撃によってアフガニスタンやイラクで一般市民が犠牲になることは、多くのムスリムたちの反発を招いている。アメリカやヨーロッパ諸国はイランの核兵器開発を問題にし、またエジプトやサウジアラビアなど、イスラム諸国にNPT加盟を強く促すことは、米欧諸国がイスラエルにNPTに加盟することに圧力を加えないことと相まって、核問題に関する米欧の「二重基準」としてムスリムの憤りを煽る結果になっている。
結局、米欧諸国に「隗より始める」姿勢がないことが、核に関する「文明の衝突」構造を強めることになった。イギリスもまた2006年2月にアメリカとともに臨界前核実験を行った。フランスは、ムルロワ環礁で核実験を繰り返し、深刻な環境破壊を招き、国際社会の批判を浴びると、アルジェリアの砂漠などアフリカで核実験を行うようになった。
核戦略の正当化
クリントン政権の初代国防長官であったレス・アスピン氏は、核戦略において熟練した人物であったが、彼は冷戦後の世界における核抑止の考えに疑問を抱いていた。
彼は「核のない世界のほうがよい。核兵器は偉大な平衡装置(イコライザー)だが、アメリカは世界の核兵器保有を平衡する役割を果たしていない。アメリカは平衡されるべき存在なのだ」と語った。
アスピン国防長官は冷戦時代の「相互確証破壊」という考えを改めて、「相互確証安全」や「協力的非核化」を提唱したが、国防総省からの強い反対を招き、辞任を余儀なくされた。アスピン国防長官は、アメリカの核戦略の危険性を強く意識していた人物だった。クリントン政権時代、国防総省はアメリカの核戦略に変更が加えられることに激しく抵抗した。空軍は地上に配備されたICBM(大陸間弾道弾)の削減に猛烈に反対した。
アシュトン・カーター国防次官は、アスピン国防長官の提案を検討する六つのワーキング・グループを立ち上げた。これらのワーキング・グループは、軍の中堅や若手の将校、またキャリア官僚達によって構成され、10ヶ月間の活動を行った結果、アメリカの核戦略に関するいかなる変更にも反対するという結論を出した。
このワーキング・グループの出した結論の背景には軍産複合体の意向があった。ワーキング・グループは、アメリカの既存の核戦略を支持する考えを明らかにし、アスピンやカーターの目標に背く提言を行った。それは国防総省など軍産複合体の「勝利」を意味していた。
軍産複合体はロシアが再び全体主義的な軍国主義国家となることを防ぐという口実の下に、従来の核戦略を継続することを正当化し、ICBMの1数を倍にし、また戦術核(ICBMや戦略爆撃機によって運搬されない核兵器で、短距離のミサイル、巡航ミサイル、また航続距離の短い爆撃機に搭載されるもの)の保有数には何の制限も加えられないことになった。こうしてアメリカは冷静後も核軍拡の道を進むことになる。
アメリカが冷戦時代の絶頂期に毎年38億ドルの予算を核兵器の設計、実験、製造に費やしていた。2000年代の現ブッシュ政権になっても、アメリカは50億ドルの予算を毎年核兵器のためにつけている。これが包括的核実験禁止条約(CTBT)、核不拡散条約に違反することは明らかだ。9.11の同時多発テロから1年後の時点で、アメリカは65種類に及ぶ7万302発の核爆弾を製造した。また、1945年から91年までの間、アメリカはセ1030回の核実験を行なった。それはソ連の715回、フランスの210回、中国の45回、イギリスを45回、インドの5回に比べると突出して多いものだった。
莫大な予算
人類を破滅に導きかねない核兵器の製造はアメリカの軍産複合体に大きな利益をもたす。ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、レイセオンなどアメリカの軍事産業は、核兵器の実験や製造で莫大な利益を得ている。毎年、広島や長崎の原爆記念日に核廃絶が唱えられても、アメリカの軍産複合体が核兵器の製造から莫大な経済的利益を得ている限り、核兵器の製造は残念ながら止むことはないだろう。ロッキード・マーティンは、2000年から2002年の間に、471億5600ドエウの予算を国防総省から与えられた。2002年に政府や議会のロビー活動のために626万ドルを費やし、その商業的利益の擁護や拡大を図った同社は、潜水艦発射型のトライデントⅡ弾道ミサイルを開発し、またトライデント潜水艦に搭載する多弾頭ミサイルを製造している。
同社は長距離核ミサイルを製造する唯一の企業である。1999年には、トライデント潜水艦に搭載する5億9800万ドルに相当する12基のD5核ミサイルを受注した。このD5核ミサイルは、1基6000万ドルもする。核兵器を使用するような戦争の可能性はほとんどないにもかかわらず、アメリカの軍産複合体はこのように核兵器製造や売却のために莫大な予算をつぎ込んでいる。
同社はカリフォルニア州にあるサンディア国立実験場で、核弾頭の設計や製造を行っている。ネバダの核実験場では、同社は臨界前核実験を新しい核兵器製造のために繰り返すようになった。
ロッキード・マーティンはまた、ベクテル・ネバダや他の小規模な軍需産業とともに、ネバダの核実験場の管理を行っている。2003年5月、ロッキード・マーティン・ミッション・システムズとノースロップ・グラマン・ミッション・システムズは、核戦争のための装備や、核戦争の際のコミュニケーション手段を製造するための契約を与えられた。
この契約は、8年間に及ぶ2億ドルの国防総省のプログラムで、長期化した核戦争に耐えられるためのコンピューターや通信システムの開発にある。両社はイラク、アフガニスタン、コソボで使用された劣化ウラン弾の製造を行う企業でもある。この劣化ウラン弾が特にイラクで奇形児を生んだり、湾岸戦争に参加した多国籍企業兵士に身体的障害をもたらしたりしたことはよく知られている。
ベクテル・ネバダは、ネバダの核実験場で核兵器の実験や製造を行っている。ベクテル・ネバダとロッキード・マーティンが請け負った契約は19憶ドルと見積もられている。これらの企業が行う臨界前核実験は包括的核実験禁止条約に違反するものであることはいうまでもない。
また、カリフォルニア大学の国家核安全保障局評議員は、アメリカにおける核兵器の管理を行っている。核兵器に関連するカリフォルニア大学の職員達は、ローレンス・リバーモアやロスアラモスの国立研究所に雇用されている。これらの研究所は毎年60億ドルの予算が与えられ、新たな核兵器の開発研究を行っている。これらの研究所で開発される核兵器は、Bー61爆弾、またW80巡航ミサイルの弾頭として用いられている。
アメリカでは冷戦が終わってもなお新しい核兵器の製造が意図されている。テネシ州のオークリッジには、国家安全保障コンプレックスが存在する。このコンプレックスには、アメリカの核兵器の製造工場であるYー12工場がある。また、テネシー峡谷の三つの原子炉であるワッツ・バー・ユニット(テネシー州のスプリング・シティの近くにある)やセクオヤ・ユニット1、2は、アメリカの核兵器製造のために必要なトリチウムを生産している。アメリカの物理学者のロバート・テイラー氏は、「アメリカの政治指導者たちはイラクが民間施設を大量破壊兵器製造のために利用しているというが、アメリカもまた同様な事を行ない、民間の原子炉を核爆弾製造のための施設としている」と語っている。
アメリカの核爆弾は110年間、その威力を持続できるように改良が加えられていると語る核兵器学者もいるほどだ。40億ドルをかけるオークリッジの核兵器製造工場の再建は、現在のアメリカの核兵器製造能力を10倍高めることを目標としている。2004年のブッシュ政権の予算では、核爆弾製造のための予算は70億ドルで、前年よりも9%の伸びを示した。