国際的に、ガザに対するイスラエル軍の人道に反する攻撃に非難の声が高まっています。
そして、南アフリカの提訴を受けて、先月26日、国連の国際司法裁判所(ICJ)は、イスラエルに「ジェノサイド」防止の暫定命令を発しました。
さらに、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシが、ハマスに連帯するかたちで、イスラエルを攻撃する姿勢を見せており、パレスチナの外でも、イスラエルに対する本格的な戦争の気配が高まっています。
だから私は、追い詰められてきたイスラエルやアメリカが、こうした状況を脱するために仕組んだのが、”国連パレスチナ難民救済支援機関(UNRWA)の複数の職員が、昨年10月7日のハマスによるイスラエルへの奇襲に関与した疑いがある”という事実のでっち上げではないかと疑っています。
アメリカを中心とする西側諸国は、そういう事実のでっち上げによって、自らに有利な状況をつくって戦争をしてきた過去があるからです。
アメリカ政府は、イスラエルの発表に即座に反応し、疑惑の事実関係と国連側の対応を見極める間、UNRWAへの資金拠出を一時停止したと発表しました。いろいろなニュース・サイトが、ドイツ、イギリス、オーストラリア、イタリア、カナダ、日本その他,西側諸国の国々がそれに同調し、拠出の一時停止を明らかにしたことも伝えています。
資金拠出の停止によって人道支援が滞り、パレスチナ人が死に追いやられることを考慮しない決定であり、イスラエルの「ジェノサイド」に同調するものだ、と私は思います。
だから、グテーレス事務総長も対応せざるを得なかったのではないかと思います。報道によれば、グテーレス事務総長は、一部職員を解雇し、2人について身元の確認を進めているといいます。
でも私は、第三者を主体とする独立した機関や組織の調査が行なわれていないことを見逃してはならないと思います。
先だって、グテーレス氏は、声明で「ハマスによる攻撃は他と無関係で起こったのではないことを認識することも重要だ」と指摘、「パレスチナの人々は56年間、息の詰まるような占領下に置かれてきた。入植によって土地がどんどん奪われ、暴力に悩まされ、経済は抑圧され、人々は家を追われ、そして家屋は取り壊されてきた」とこれまでの経緯に言及し、パレスチナ擁護の姿勢を見せていました。でも、イスラエルのエルダン国連大使に辞任を要求されたことをはじめとして、イスラエルやアメリカを中心とする西側諸国からさまざまな圧力を受け、さらに、組織の存続が危うくなるような資金拠出の停止という事態に追い込まれて、一部職員を解雇せざるを得なかったのではないかと想像するのです。
もし、本当にUNRWAの一部職員が、10月7日のハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃に関与したのであれば、それはそれで、きちんと議論すべき問題を含んでいるのであって、資金拠出の停止に踏み込むことは筋違いだと思います。
UNRWAはパレスチナ難民の救済を目的として設置され、教育や保健などの分野で活動している組織です。その組織の人間が、ハマスの奇襲攻撃に関与したのであれば、その理由や関与の内容が明らかにされなければならないと思います。
現時点では、何もわかりません。でも日本を含む西側諸国の多くが、資金拠出の停止に踏み込んでしまったのです。
過去のでっち上げ事件同様、事実が判明した時にはすでに手遅れで、事態を元に戻すことができないことを看過してはならないと思います。
アメリカのベトナム軍事介入がでっち上げの事実によってはじまったことを暴露することになった「ペンタゴンペーパーズ」やイラク戦争において、大量破壊兵器存在の証拠とされた「捏造文書」が、そのことを示しています。
下記は、「君はパレスチナをしっているか」奈良本英佑(ほるぷ出版)に取り上げられていた「国連総会決議181号」の抜萃です。
”遅くとも1948年10月1日までに、独立したアラブ国家とユダヤ国家、およびエルサレム市特別国際管理地区が……パレスチナに出現するものとする。”
と決議されていることがわかります。でも出現したのは、ユダヤ国家「イスラエル」だけです。そのイスラエルには、もともとアラブ人が住んでいたのです。
先日、「エレクトリック・インティファアーダ(THE ELECTRONIC INTIFADA── https://electronicintifada.net )は、ICJの判決後、イスラエルは数百人のパレスチナ人を殺した”Israel kills hundreds of Palestinians in Gaza after ICJ ruling”と伝えました。
ネタニヤフ首相は、”ハマス側が仕掛けてきた攻撃は、極めて残虐なものだった”と強調し、”ガザへの侵攻や包囲は国家が自国を防衛する正当で固有の権利だ”と主張しました。でも私は、イスラエルによるガザのパレスチナ人攻撃は、それにもまして残虐なものだと思います。ICJが暫定的な措置を命じたのも、毎日多くの子どもや女性が犠牲になっており、ハマスによるイスラエル人の犠牲者をはるかに超える死者がでていることを踏まえたからだと思います。にもかかわらずイスラエルは、パレスチナ人による自衛の攻撃は認めないのです。
だから私は、イスラエルを含む西側諸国は、パレスチナ人に対し、自分たちと同じ権利を認めてはいないと思います。西側諸国による世界の植民地的支配は、いまだに完全には終わっていないということだと思うのです。
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国連総会決議181号
(前文略)
第一部 A、委任統治の終了、分割、独立
一、パレスチナの委任統治は、できる限り速やかに、遅くとも1948年8月1日までに終了するものとする。
二、委任当局の武装兵力は段階的にパレスチナから撤退する。撤退ができる限り速やかに、遅くとも1948年8月1日までに完了するものとする。……
三、委任統治当局の武装兵力撤退完了より二ヶ月後、遅くとも1948年10月1日までに、独立したアラブ国家とユダヤ国家、およびエルサレム市特別国際管理地区が……パレスチナに出現するものとする。……(中略)
C、宣言……第三条の一、市民権 エルサレム市域外のパレスチナに住む市民は、アラブ人であれ、ユダヤ人であれ……独立の承認と共に、かれらが住む(それぞれ)の国家の市民となり、完全な市民的政治的権利を持。……(後略)
国連総会決議181号
(「前文 略)
第一部