11月28日の「いい庭の日」の前後に「秋の東京いい庭キャンペーン」が行われている。そこで、対象の一つになっている新江戸川公園に行ってみた。江戸川橋で下車して江戸川公園を通り、芭蕉庵に寄ってから、新江戸川公園に行く。公園の塀を改修したらしく南門が新設されているが、今回は正門から入ることにした。
正門の左手に細川家の学問所であった松聲閣があり、修復工事を終えて今年から公開されている。集会室は有料で要予約だが2階の展望所は無料ということなので、改修後はじめて中に入った。途中の廊下から見た裏庭も日本庭園らしく整えられていた。
階段を上がり展望所に行く。山茶花という二間続きの和室で、廊下に出ると公園全体が展望できるようになっている。庭園の景観は明治時代の細川家本邸だった頃とほぼ同じらしい。
松聲閣を出て、団体が通り過ぎるのを待って、中門から庭園に入る。庭園の改修も行われていたらしく、以前より眺めが良くなっているような気がする。
大池の畔から土橋の方向を見る。紅葉は今が盛りといったところ。この池にはコサギが生息していた筈だが、今日はその姿を見ない。どこか別の場所に移ったらしい。
池の向こうに石造の十三重塔が見える。本来の十三重塔は供養塔だと思うが、江戸時代以降は庭園の添景物として使われてきたらしい。池には小さな島も見えるが、中島だろうか。
松聲閣の周りは芝生が張られ、樹木の刈込や伐採も行われたらしく、開放的になっている。園路のそばには鹿威しが新設され、軽やかな音を響かせている。
松聲閣の東側、庭園に面する区画は垣で囲まれた表庭になっている。視界の邪魔になるものを排除した小庭で、部屋からは庭園全体が良く見通せるだろう。
表庭には水琴窟も新設されていた。水琴窟は幕末から明治にかけて流行したが、維持管理が難しいせいか造られなくなった。それでも最近は、公園などでも見かけるようになった。
この庭園には、北西側の湧水を利用して池に流れる水路、遣り水が造られていた。しかし今は湧水も僅かになっているので、湧水だけで池の水位を保つことは難しいようである。
池には滝が付きもので、この庭園にも小さい滝がある。もともとは湧水から引いて落としていたと思われる。
この日は、新江戸川公園から永青文庫への道が開放されているという事なので、林の中の道を上がってみた。円形にくり抜かれた門を抜けると永青文庫の建物があり仙厓の展覧会が開催中であったが、今回の目的は庭園なので建物の外観だけ見て公園に戻る。
永青文庫から池に下って、中池と小池を仕切っている石橋を渡る。今回は南門には出ずに、中池の南側を進む。土橋の向こうには松聲閣が見えている。
土橋を過ぎて大池の南側を進むと築山があるが、低いので展望が開けるという程ではない。築山の下は岬のように池に突き出ていて、雪見燈籠と松と雪吊の対比が面白い。
雪見燈籠のある場所の左側は州浜になっている。池の向こう側には、やや見えにくいが、十三重塔がある。
冬の庭園の景物は雪吊である。新江戸川公園の雪吊の競演をしばし眺め、それから帰途に就く。公園北西側の児童遊園があった辺りは、新たに庭園を造るため工事中で、改修が終わる来年の3月頃には、新江戸川公園は改称された公園名でリニューアルオープンする事になりそうである。