今年はベートーベン生誕250年に当たる。そこで、ベートーベンの音楽劇映画のLD(レーザーディスク)があった筈と思い、探してみると、LDは処分されてしまっていたものの、ジャケットはまだ残っていた。そのLD、「人間ベートーヴェン」によると、ベートーベンは気難しく付き合いにくい人物で、その風采、容貌からして女性にもてるというほどではなかったようである。ベートーベンは難聴という音楽家にとって致命的な病を患ってからは特に感情の起伏が激しくなったらしい。
10月のある日、ベートーベン生誕250年を記念して、NHKによる「あなたが選ぶベートーベン・ベスト10」という投票企画があることに気が付いた。名曲として取り上げられているのは30曲。これ以外の曲でも良いが、お気に入りの曲を3曲選んで投票するようになっており、その結果によりベスト10を決めるという事らしい。30曲については試聴も出来るので取りあえず試聴し、そのあと、所有するCD、レコードなどで聴きなおしてから自分なりに10曲を選んでみた。
(1)交響曲第9番「合唱つき」(1824年)
取り上げられている30曲の名曲の中には、交響曲が5曲。3番、5番、6番、7番、9番が入っているが、今回は9番を取り上げたい。ただし、全曲を聴くのは12月に入ってから。フロイデ、・・・と心のうちで歌いながら、この1年を送り出したいので。
【レコード】「合唱・運命・第八」と題するレコードには、第9番、第5番、第8番の交響曲が収められているが、この中から合唱(第9番)を聴く。演奏はイゼルシュテット指揮、ウイーン・フィルハーモニーとウイーン国立歌劇場合唱団及び独唱者による。
(2)レオノーレ序曲第3番(1806年)
ベートーベンの唯一のオペラ「フィデリオ」には4曲の序曲が作曲されたというが、そのうち最も有名な「レオノーレ序曲第3番」を選ぶことにした。
【LD(レーザーディスク)】「メトロポリタン歌劇場百周年記念ガラコンサート」の中には「レオノーレ序曲第3番」も入っている。演奏はレヴァイン指揮、メトロポリタンオペラ管弦楽団。
(注)今はLDの視聴が出来ないが、曲自体はこれまで何度も聴いているので取り上げた。
(3)ロマンス第2番(1798年)
この先には室内楽が続くので、今回はあまり気張らずに聴ける曲として「ロマンス第2番」を選ぶ。この曲はヴァイオリンと管弦楽のためのもので、そのCDも持ってはいるのだが、今回はフルート演奏によるCDの方を聴きたい。
【CD】「黄金のフルート・パトリック・ガロアⅣ」のうち、ガロアのフルートとクリヴィン指揮の南西ドイツ室内管弦楽団の演奏により、ロマンス第2番を聴く。
(4)弦楽四重奏曲第14番(1826年)
私がクラシックを聴いているのを知って、ブッシュ弦楽四重奏団のことを教えてくれた人がいた。しかし、レコードが入手出来ず、そのままになっていた。何十年か経過したある日、古本市で偶然にもブッシュ弦楽四重奏団のCDを見つけた。そして今、暫くぶりで、そのモノラルのCDにより、ベートーベンの弦楽四重奏曲第14番を聴いている。ベートーべンはこの曲について“どの作品にもまして豊かな幻想がみなぎっていることを神に感謝しよう”と語ったという。
【CD】「The Busch Quartet Plays Beethoven」には9番、14番、11番、15番の弦楽四重奏曲が収められている。14番の録音は1936年になっている。
(5)弦楽四重奏曲第15番(1825年)
30曲の名曲のうち、弦楽四重奏曲は7番、9番、14番、15番が取り上げられているが、そのうち15番をレコードで聴く。その第3楽章には“やまいいえたる者の神への聖なる感謝の歌”とある。このレコードを聴いていたのは、かなり前のことで、当時は後期の弦楽四重奏曲に関してはブタペスト弦楽四重奏団の演奏がベストだと思っていた。
【レコード】ブタペスト弦楽四重奏団による「ベートーヴェン後期弦楽四重奏曲集」には12番~16番の弦楽四重奏曲と大フーガが収められており、楽譜付の解説書も付属している。ただし、第14番のレコードについては傷をつけてしまったので、今は聞けない。
(6)ピアノ三重奏曲第7番大公(1811年)
このピアノ三重奏曲が大公と呼ばれているのは、ルドルフ大公に献呈されたことによる。ベートーべンがウイーンでデビューした頃は、作曲家というよりピアニストとして知られていたようで、レオポルド二世皇帝の末っ子ルドルフにピアノを教えるようになった。それが縁で、ルドルフ大公はベートーベンの後援者になったらしい。
【CD】演奏はヤン・パネンカ、ヨセフ・スーク、ヨセフ・フッフロによるスークトリオである。なお、このCDにはシューベルトの「ます」も収められている。
(7)ピアノソナタ第8番「悲愴」(1799年)
ベートーベンのピアノソナタは初期、中期、後期に分類される。そのうち初期は第1番から第15番までとされるので、30曲の名曲の中では第8番と第14番(月光)が該当する。ここでは、初期の傑作とされる第8番「悲愴」を選ぶことにした。この曲については、若きベートーベンが書いたウェルテルの悩みだとする説もある。
【CD】「ベートーヴェン・ソナタ」のCDは、初期のピアノソナタ、第8番、第13番、第14番を収めたもので、演奏はギレリス。この中から第8番を聴く。
(8)ピアノソナタ第17番「テンペスト」(1802年)
中期のピアノソナタは第16番から第26番までとされる。30曲の名曲の中では、第17番(テンペスト)、第21番(ワルトシュタイン)、第23番(熱情)が該当するが、今回は第17番を選んだ。理由は、この曲の第3楽章が昔からの好みだったから。
【CD】ピアノソナタ全集第2巻には、バレンボイムのピアノによる、第16番から最後の第32番までのピアノソナタが収められている。そのうちの第17番を聴く。
(9)ピアノソナタ第31番(1822年)
後期のピアノソナタは27番から最後の32番までとされる。30曲の名曲の中では29番(ハンマークラヴィーア)、30番、31番、32番が該当する。何を選ぶか難しいところだが、今回は、嘆きの歌に始まるが最後には力強く終結する終楽章を持つ第31番を選ぶ。
【レコード】リヒター=ハーザーのピアノ演奏によるレコードで、第31番のピアノソナタを聴く。
(10)エリーゼのために(1810年)
10曲目には、「エリーゼのために」を選ぶ。ピアノ演奏のレコードもあるにはあるのだが、少々草臥れてもきたので、固くなった頭を柔らかにするため、原曲を軽音楽風に編曲したものを聴くことにした。
【レコード】「エリーゼのために」というレコードには、クラシックの小品を編曲したものが10曲入っている。演奏は高見彰一とオルフェアンズである。
ところで、30曲の名曲の中に、歌曲「君を愛す」というのがあり、短い曲なので試聴の範囲に1曲分が収まっていた。高校の頃に歌っていた曲で、あの頃の事をふと思い出してしまった。Ich liebe dich、so wie du mich・・・