ゆるい感じで。

「スレイヤーズ」のガウリナメインの二次創作ブログサイトです。原作者様、関係者様には一切関係ございません。

アトラスでひと騒ぎ【7】(子世代)

2014-09-14 20:35:06 | 子世代妄想
前回の続きですー♪

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マジックショップは酷い有り様になっていた。無惨に壊れ散らばった商品、憔悴しきった店主。
「金だけでなく、金目の商品も根こそぎ持ってかれちまった......オレぁこれからどう生活してけば良いんだ」
青い顔をした店主のおっさんを気の毒に思いながらも、オレたちは店の中を調べ始めた。

普通マジックショップには安い物から、とんでもなく高価な物まで置いてある。それを高価な物ばかり素早く選別して持って行くというのは、魔道に詳しい者でなければ出来ない芸当だ。ただのならず者には出来ない。それに......。
「雇ってた用心棒もやられちまった......死んでなかったのが救いだが、ありゃ重傷だ」
そうため息をつく店主も、マジックショップを営むくらいだから魔道には長けている筈なのだ。だから、普通はマジックショップに強盗を働こうとする輩は少ない。すぐに叩き出されるのがオチだ。
──それが、こんな風になるなんて......。
本当に、店には安物の防具や武器しか残っていなかった。高価なドラゴン皮のローブや、宝珠のついた剣など、普段店で良く目にする物がほとんど消えている。

「あの、強盗に遭った時の事を詳しく聞かせて頂けませんか?」
遠慮がちに尋ねたルシウスに、店主はゆるゆると頷いた。
「ああ。今朝方、店を開けた途端、明らかに賊らしい男たちが数人入って来てよ......こちらも警戒してたんだが、急に暴れ出して、慌てて用心棒のジャックを呼んだんだが、後から入って来た女魔道士にやられちまって......それからはもうオレも『影縛り(シャドウ・スナップ)』で動けなくされてる間に、金も何も全部持ってかれたよ」
「その、女魔道士と言うのは一体......?」
「やけに派手な格好した若い女だったな。仲間からは『リナ』と呼ばれてたよ」
「リナ......か」
──ありえない。そう言いたくなるのをぐっと飲み込んだ。
「その女自身の外見は?髪の色とか、目の色とか」
「そうだな......栗色の長い髪、赤みがかった茶色い目だ......それに」
「それに......?」
ごくり、と唾を飲み込む。
「凄い胸がでかかったな……スタイル抜群の女だった」

顔を見合わせたオレとレオナは、小さく息を吐いた。
「偽物だな......」
「そうね......」
「え!?なんでですっ!?」
確信するオレたちに、ルシウスが驚いた顔をする。そんなルシウスに、オレは顔を近づけた。
「良いかルシウス、良く聞けよ......リナ=インバースはチビな上にペチャパイだ!!だからそいつは偽物だ!」
何の迷いもなく断言する。ルシウスと、店主も一緒にぽかんとした顔をした。

「兄さん......聞かれてたら殺されるわよ」
レオナにジト目で言われて、オレは腰に手を当てて胸を張った。
「今はいないから大丈夫だ!......たぶん」
言いつつ、冷や汗が止まらないが、それは無視する事にする。
「と、とにかくその女魔道士がリナ=インバースの偽物だとはっきりした。そいつの足取りを追うぞ!」
「どうやって?」
「とりあえず、他の店にも行ってみようぜ。どうだ、ルシウス?」
「......そ、そうですね、分かりました!」

一つ頷いて、ルシウスは店主に向き直った。
「調査にご協力ありがとうございました。......その腕の怪我、治療しても?」
「えっ」
店主が驚いた顔をする。同時にオレも驚いた。
「隠していたみたいですが、ずっと腕を気にしてましたし、右と左で腕の太さが微妙に違いましたし」
「良くわかったな......」
店主が右腕のシャツを捲り上げると、一部包帯で不器用にぐるぐる巻きにされていた。ルシウスが包帯を解くと、酷い切り傷がある。
「女が行った後、残った賊にやられてな......不甲斐ねぇ」
「そうなんですか......」
オレとレオナが見守る中、ルシウスが呪文を唱え始める。てっきり『治癒(リカバリィ)』の呪文かと思ったが、それよりもより強い術だと気がついた。
「これは『復活(リザレクション)』......!」
周囲に存在する生命から少しずつ気を分けて貰い、それをエネルギー源に怪我を治療する術。瀕死の怪我を負った時など、リカバリィではどうにもならない時にも有用な呪文。白魔法でも上級の呪文だ。オレもレオナもまだ使うことが出来ない。
「これでも神官見習いですからね」
微笑み、長い詠唱呪文を呟きながら、徐々に店主の腕の傷を塞いでいく。
「......ありがとうよ」
「僕たちが、必ず犯人を捕まえてみせます......!」
その少年の決意に、オレもレオナも気合いを入れ直したのだった。


続く
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次回につづきます!

アトラスでひと騒ぎ【6】(子世代)

2014-09-14 12:43:52 | 子世代妄想
お待たせしてすみません(>_<)子世代小説続きです!

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事件の解決は、何事もまず情報収集から始まる。これはオレの持論だ。
仕事として「リナ=インバース(仮)」の討伐の任を請け負ったからには、なんとしても捕まえねばなるまい。
ちなみに、今回の仕事はなかなか好条件で、良い稼ぎになりそうだった。街の金持ちが報酬を出してくれるらしい。期待大だ。

「ところでルシウス、お前リナ=インバースをよく知ってるのか?」
被害を受けたというマジック・ショップに向かう道すがら、ルシウスに尋ねると彼は表情を明るくした。
「直接会った事はありません。でも、母からよく彼女の話を寝物語に聞かせてもらったんです」
「お母さんから......?」
ずい、と後ろからレオナが顔を出してくる。
「え、ええ。昔、母はリナ=インバースと共に旅をした事があると言ってました。確かに破天荒な人だったらしいですが、決して悪人ではなかったと......。母の昔話は本当に面白くて、わくわくしながら聞いていたのを覚えています」
「へええ」
興味津々で相槌を打つレオナに、ルシウスは顔を赤くした。
──確かに、この少年の母親くらいの年齢なら、母さんと一緒に旅した事があってもおかしくないかもしれない。まだ本当かどうかは分からないが......。

「あ、あの。お二人はどうなんですか?」
「まあ、オレたちも似たようなもんだ。だから、ルシウスの意見に同意するよ」
敢えて言葉を濁した。とりあえず、オレたちがリナ=インバースの子供だという事は、黙っていた方が良さそうである。
「ありがとうございます......!」
嬉しそうにはにかむルシウスの笑顔には幼さが垣間見えた。こいつは、見た目よりもっと若いのかもしれない。神官見習いで、出身はサイラーグと聞いた。アトラスにはどんな理由で来ているのだろうか......。

しばらく考えていると、ルシウスがオレの肩をちょんちょんとつついた。
「ん?」
「あの......」
後ろのレオナに聞こえないような、囁くような声で話し掛けてくる。
真剣な表情に、思わず姿勢を正した。
「ええっと、その、お二人は......どういった関係なんですか?」
「はぁ?」
拍子抜けして、ずっこけそうになる。
「お二人で旅してるんですから、やっぱり恋人......?」
「い、いやいや、オレたち兄妹だから!兄妹!」
慌てて否定すると、ルシウスは目を見開いた。
「御兄妹ですかっ!......あんまり似てないんですね」
──ほっとけ。
「でも、なんでそんな事を?」
「い、いえ、少し気になって......すみません」
突っ込むと赤くなって俯くルシウスに、オレはにやにやしてしまう。

──分かりやすい奴め。

ちらりとレオナを見れば、妹は街を眺めて歩きながら、鼻歌を歌っていた。いつもながら呑気な事だ。
「......あいつはたぶん一筋縄じゃあ行かないと思うぜ」
肩を竦めて言えば、ルシウスはびっくりしたように顔を上げた。
「え......っ」
──気付いてないとでも思っていたのだろうか。バレバレだっつうの。
「まあ、頑張ってみてくれ。簡単には行かないと思うが」
レオナの外見に釣られて、後に撃沈した数多くの男たちを思い出しながら言えば、少年は目を輝かせた。
「ラウディさん......!」
「ん?」
ガシィッと両手を取られる。
「お義兄様とお呼びしても?」
「ヤメテクダサイ」


続く
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次回に続きます~!