ぷらいべったーより再掲。
ついったの診断メーカーよりお題「皆に隠れて」
※アメリア視点。……最近アメリア視点で書くことおおいなあ。
短いです。
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「リナ、ほれ。忘れもん」
朝。宿屋の食堂でリナの顔を見るなり、ガウリイさんは何かを彼女に放り投げた。上手にそれをキャッチして、リナはぱっと表情を明るくする。
「……あ、これ! 失くしたかと思ってたわ。ありがとガウリイ」
きらり、と窓から差し込む朝日を受けて光ったそれは。
――リナが普段身につけているイヤリングの片方。
「どーいたしまして」
のんびりといつものように穏やかに笑った彼は、まだ少し眠そうな顔をしながら、リナの向かいの席に座って朝食のパンとスープを注文した。
まるでなんてことのないやりとり。
だけどわたしは。
「……ね、リナ」
「? どしたのアメリア」
思わず呼びかけたわたしに、リナはきょとんとした顔で返事をした。そのあまりの『普通』な表情に、わたしは頭の中が疑問符でいっぱいになる。
ちらり、と斜め前に座るゼルガディスさんに視線を向けるが、彼は涼しい顔でコーヒーを啜っていた。これは何も気付いていないのか、それとも何かを知っているのか。
「……なんでもないわ」
「ふうん? 変なアメリア」
笑って、彼女はポケットからもう一つのイヤリングも取り出して、その場で身に付けた。耳元で揺れる小さな金色の球体。
リナのイヤリング。
それを、わたしは昨夜リナと部屋の前で別れる前に確かに見た。二つとも、リナの両耳にきちんとついていた。
……それを、今朝ガウリイさんが何故持っていた?
忘れ物。彼は確かにそう言った。……導き出される答えは。
そこまで考えたところで、ふとガウリイさんと目が合った。
にこ、と笑った彼の人差し指が、そっと彼自身の唇に触れる。それはまるで、最近知り合った謎の神官のお決まりのポーズにも似て。
「……ガウリイさんのえっち」
「!?」
思わず漏らした感想に、隣のリナが過剰反応するのがおかしくて。
わたしは小さく舌を出したのだった。
おしまい