ゆるい感じで。

「スレイヤーズ」のガウリナメインの二次創作ブログサイトです。原作者様、関係者様には一切関係ございません。

キミを待つ間。(ガウ+アメ/現パロ)

2016-08-07 18:03:17 | スレイヤーズ二次創作
ぷらいべったーより再掲。
三つのお題で小話、ということで。お題は「雨上がり」「待ちあわせ」「落し物」

ガウリナ、ゼルアメ前提の二人です。

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 くああ。
 小さく声をあげて、アメリアが手で口元を隠した。それでも隠しきれていない、大きな欠伸。隣に座るオレは、そんな彼女をまじまじと見つめる。
「アメリア、眠いのか?」
「ふぁい。ちょっと昨日夜更かししちゃって……」
 ちろりと舌を出して、恥ずかしそうに笑ったアメリアは確かに少し眠そうに見えた。きちんとした生活習慣のアメリアにしては、夜更かしというのは珍しい。
「宿題でもやってたのか?」
「いえ、最近推理小説にハマってるんです」
「小説?」
「ゼルガディスさんにオススメして貰って……。凄く面白いんですよこれが!」
 ひどく嬉しそうにそう言うアメリアに、オレは笑って頷いた。夜更かしの理由にすとんと納得がいったのだ。
 眠い目をこすりつつ、ゼルの好きな本を頑張って読む昨夜のアメリアの姿が想像出来て、なんだか微笑ましい。

「――それにしても、リナさん達遅いですよねー」
 話題を変えるように、アメリアはそう呟いた。彼女の視線がオレから窓の外へと移動する。しとしとと降り続ける雨は、止みそうでまだ止まない。窓にぶつかる滴が滴り落ちるのを眺める。
 オレとアメリアは、二人してリナとゼルガディスの生徒会二人組を待っていた。他に誰もいない教室で、二人の荷物の番をしながら。
「……そうだなあ。会議って、いつも何話してるんだろうな?」
「そうですねえ。もうすぐ文化祭ですから、それについて、とか?」
 生徒会の事なんて二人して全然良く分からないので、それきり会話はストップする。それでも、別に空気は重くならなかった。
 オレにとっては、アメリアはなんだか妹みたいな存在だ。――歳は同じだけど。
 リナと友達で、ゼルと仲が良くて。そんなアメリアと、それなりに親しくなるのは自然な流れだった。

「……」
「……」
「……それで」
 個人的には心地の良かった沈黙を、破ったのはアメリアで。
「ガウリイさんは、リナさんとどうやって知りあったんです?」
「……唐突だなあ」
「だって、気になったんですもん」
 えへへ、と口に出して言いながらアメリアは悪戯っぽい目でオレを見上げる。
 その目に浮かぶ好奇心。
「二人は幼馴染じゃないんでしょう? クラスも違うし。なのに、『保護者』だなんて言われたら、ね?」
 彼氏彼女でもなく、そんな関係になったのはいつからなのか。どんなきっかけなのか、知りたい。アメリアはそう言って目をきらきらさせた。
 オレはその目に弱かったりする。
「良いじゃないですか、教えてくれたって」
 他の誰にも言いませんから。ね?
 いつになく食い下がるアメリアに、オレは思わず苦笑した。
「……うーん、オレ自身いつから『保護者』なんて言いだしたのか、覚えてないんだがなあ」
 ――嘘だけど。……だって、なんだか気恥ずかしいじゃないか。
「ええー?」
 疑わしげな目で睨まれて、オレは肩を竦めてみせた。
「でも、知り合ったきっかけなら、覚えてるぞ」

 ……あの日も、確かこんな雨の日だった。いや、雨は既に上がっていたかもしれない。脳裏に浮かぶ西日を反射する水溜り。そうだ、やっぱり雨上がりの午後だった。
「リナの、落し物拾ったんだ」
「落し物?」
「ああ。くらげのキーホルダーが付いてた、自転車の鍵だよ」
「……ああ! わたし、それ見た事あります。ゆるキャラみたいなくらげで、凄く可愛いの」
 リナが普段通学に使っている、自転車の鍵。学校の廊下に落ちていたそれを、オレは拾った。名前も書いていなかったそれを、だけど失くした人は困っているだろうと思って。
 事務室にでも持っていこうと歩き出した所で、あいつが焦った顔でやってきた。
「『隣のクラスのインバース』って、色々有名だろ? 科学の先生論破して泣かせたとか、他校の不良締めたとか。顔は知らなかったから、一体どんな女子かと思ってたんだけど」 
 ――まさか、あんな可愛らしいキーホルダーを鍵に使うような女子だったなんて。そして、それをオレに見られて顔を赤くして恥ずかしがるような、中学生みたいに小さい女の子だったなんて。
「まあ、なんか意外でびっくりしたよなあ」
 それはとても意外で。なんだか凄く印象的で。だから、オレはリナの事をもっと知りたくなった。それからは見かける度に声を掛けるようになって……――。
「へええ、そんな出会いだったんですね……」
「まあ、ありがちだろ?」
「そうですかー?」
 ロマンチックで素敵ですよ、なんて。乙女チックな事を口にするアメリアは、本当にそう思っているんだろうか。相槌がカルいと思うのはオレだけか。 
「……じゃあ、今度はそっちの番な」
 そんなわけで、ちょっとだけ意地悪な事を思い付いた。
「え?」
「ゼルの事好きになったの、いつなんだ?」
 さらり、となるべくさりげなく聞いてみたのだが。
「…………え、え、ええええ!?」
 どうやら効果はばつぐんだった。

「え、ちょっ……ガウリイさん!? いつからそれを…!?」
 慌てたようにオレの肩を掴んで揺さぶって来るアメリアの、目を回しそうな程くるくる変わる表情が面白くて、思わず吹き出した。
「ちょっとーガウリイさんってば…!」
 何笑ってるんですか! と憤るアメリアの顔は真っ赤だ。
「だって、なあ…?」
 むしろ、なんで気付かれていないと思っていたのだろうか。気付いていないのは、きっとゼルだけだろうと思うのだけれど。
「だってってなんですか……あ」 
 ふと、オレの肩をがっちり掴んだまま、アメリアが廊下の方を向いて固まった。
「ん?」
 その体勢のまま、オレも視線をそちらへと向ける。
「……あー」
 ――これは。言い訳が面倒臭そうだなあ。

「ちょっとアンタたち、一体何してんのよ!?」
 そこには、少しだけ顔を赤くしてオレ達を指差すリナと。呆れたように額に手をあてるゼルガディスその人が、立っていたのだった。


おしまい。


今、君が隣にいるから。(ルクミリ)

2016-08-07 18:01:07 | スレイヤーズ二次創作
ぷらいべったーより再掲。
ワンライ参加作品です。お題「ルーク」


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「ミリーナ!」
 聞き慣れた声で呼ばれる名前。そちらを見なくても、今彼がどんな顔をしているか分かる。
 きっと、満面の笑み。


 のんびりと街道を歩いていれば、賊に絡まれている老人が一人。
 面倒な事になったとか、じいさん一人でこんな所を歩いているなとか。そんな文句を垂れつつも、彼は既に剣を抜いていた。
 助けない、なんて選択肢は初めからないのだろう。勿論、私だってそう。
 ――だったら、何も言わずに助けてあげればよいのに。
 それが出来ないのがルークのルークたる所以なのかもしれない。

「本当にありがとうございます! なんと礼を言ったら良いのか……」
「礼は良いから、さっさと行けよ。俺たちはこいつら役人に突き出しとくからよ」
 面倒くさそうに手をひらひらさせる彼は、心から人に感謝されるのが照れくさいからなのだろう。
「はあ、でも……」
「そんなに言うなら、金貨十枚くらい……」
「ルーク」
 わざとらしく人の悪い笑みを浮かべた彼に、思わず名前を呼べばルークは慌てたように両手を振った。
「冗談だよミリーナ~」
「……まったく、もう」
 ――それくらい、分かっているのだけれど。

「それでさ」
 老人を見送ってから、ルークは倒した盗賊達の持ち物を漁っていた。役人に付きだす前に、金品をいくらか彼らから取りあげる。あまり良い事とは思えないが、まあ、積極的に止める理由もない。
「これなんか、ミリーナに似合いそうじゃないか?」
 彼が手にとって私に見せたのは、輝く石の付いた金のネックレスだった。きっとこれも、賊が誰かから奪ったモノなのだろう。
「賊の持ち物なんて、貰っても嬉しくないわ」
 冷たくそう返せば、彼は分かりやすくがっくりと肩を落とした。 
 ――……まったく、もう。
「……それよりも、早く彼らを片付けて何か食べに行きましょう。お腹がすいたわ」
「! お、おう! そうだなミリーナ」
 途端に嬉しそうな顔をして、彼は賊達を縛り上げ始めた。手を貸すために私も彼に歩み寄る。鼻歌でも歌いだしそうなルークの表情に、思わず隣で苦笑してしまう。

 こんなにも、はっきりと好意を示して来る人は彼が初めてだった。始めは冗談かと思った。相手にしなければ、勝手に離れていくだろうと思っていたのに。
 いつの間にか、隣にいるのが当たり前みたいになってしまっていて。
 ――それなのに。
 彼はどうして、ただ隣に居るだけでこんなに楽しそうに笑うのだろう。嬉しそうに瞳を輝かせるのだろう。
 それが分からなくて、私はただ黙って彼の隣に立つことしか出来ない。それでも、黙って彼の前から消える事も私には出来ない。

 ……それが出来ないのは。
 彼がたまに、酷く哀しい目をしている事があるから。――彼がその目を私に向ける事は、決してないけれど。

「ミリーナ!」
 不意に名前を呼ばれて、私は物思いから覚めた。
「昼飯、何食べたいんだ? 肉? 魚?」
「……パン、かしら」
 少しだけ意地悪な事を言ってみる。
 ――それでも。
「そっか! それじゃあ、うまいパン屋見つけないとな!」
 くしゃりと笑ったルークは、なんだかとても嬉しそうだった。

おわり

ヒトとして。(ガウリナ)

2016-08-07 17:56:53 | スレイヤーズ二次創作
プライベッターより再掲。
ワンライ参加作品です。お題「NEXTで好きなシーン」

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「お生憎様。ゴールのないゲームには、あたし興味ないの」
 不敵な笑み。不敵な台詞。そして、リナの細い指はグラスをはじいてテーブルに倒した。

***

 リナは強い。勿論、物理的にも強いのだが。……それだけじゃなくて。
「リナ!」
「なによ?」
 オレの呼びかけに、走りつつも答えるリナのきょとんとした表情。それは、さっき魔族に対して見せた不敵な表情とは全く違って。
 小さくて、華奢な体つきも。少女らしい高い声も。なめくじに怯える可愛らしい所も。
 ――オレが、護ってやりたい。
 そう、思わせられるのに。
 ……そんな気持ちは、思い上がりだったろうか。

「リナは強いな」
「え?」
「さっきの話だよ」
 圧倒的に人間よりも力を持った存在による、甘い言葉。『不死の契約』という誘惑。
 それを、リナはあっさりと袖にした。
 ――ゴールのないゲームには興味がない。
 魔族に向かってそんな啖呵を切ったリナの横顔が、脳裏に焼き付いて離れない。
 挑戦的な笑み。意志のこもった瞳。
 リナは強い。……そんな彼女が、少し眩しかった。

「なに言ってんのよ。ガウリイだって、同じ事聞かれたらあたしと同じ返事したでしょ?」
 何を当たり前の事を、とでも言わんばかりのリナの言葉にオレは苦笑した。手放しの信頼がくすぐったい。――もし、オレだったら……。
「分からんぞ? だって、不死の契約なんてなあ……」
 ぞっとすると同時に、惹かれない人間がいるのだろうか。死への恐怖は、万人が持つもので。

「でも、あたしだったら永遠の命なんて嫌よ」
 言って、リナは顔を顰める。
「だって、例えばガウリイがおじさんになって、おじーちゃんになって。それから死んでしまっても、それを傍で見てるあたしは今のままなのよ? そんなの嫌に決まってるじゃない」
 そうでしょう、と憤慨気味にオレの顔を見上げるリナの真剣な顔に、オレは目を瞬かせた。思わず言葉に詰まってしまう。
「……ん。そう、だな」
 でも、そんなオレに構わず、リナは走るペースを速めた。
「ほら、そんな話は良いから。急ぐわよガウリイ!」
 リナのマントが、オレの目の前でひらりと翻る。

 ――例え、そんな悲しい未来の話でも、リナの未来にはオレが居るのか。オレを居させてくれるのか。
 そう考えたら。
 オレは、リナに恥じない保護者でありたい。彼女の強さが、真っ直ぐさが失われてしまわないように、護ってやりたい。

「待てよ、リナっ!」
 先を行くリナの後を追いながら、オレは。
 さっきまでの小さな不安が消えていくのを感じていた。

終わり