ゆるい感じで。

「スレイヤーズ」のガウリナメインの二次創作ブログサイトです。原作者様、関係者様には一切関係ございません。

貴方の青は(ガウリナ)

2016-03-06 21:21:18 | スレイヤーズ二次創作
ワンライ作品より再掲。
短いガウリナです~。※アメリア視点!

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「――あのさ、青は青でも色々あるわよね」
 ふと、まるで何でもない事のように。たった今思いだした、とでも言うように。リナは今までの会話と関係の無い話題を、ぽろりとわたしに投げかけた。
 宿屋のおばさんが淹れてくれた紅茶にミルクを注いでいたわたしは、その突拍子の無いリナの発言に思わず首を傾げた。
「はあ?」
 夜、宿屋の食堂で寝る前に一杯、という時間である。一杯と言ってもお酒ではなく、わたしは紅茶でリナはココア。
 さっきまで明日以降の旅の予定を話し合っていたはずなのに。――それがどうして急に色の話?

 しかし、わたしの疑問に答えるような説明はなく、リナは話を続ける。
「いや、だから。海の青とか、空の青とか。海の青も碧がかってるのとか色々あるし」
 わたしはエメラルドブルーに輝く南の海を想像した。対して、北の海はさめざめと蒼い。
「そうねえ。……でも、赤だってそうじゃない? 夕焼けの赤とか、ルビーの赤とかあるし」
 そう指摘すれば、リナは考え込むように口元に手を当てた。
「んん、確かにそうね」
 ――一体どうしたと言うのだろう。

「……で、どうしていきなりそんな話?」
 尋ねれば、リナはココアに口を付けながら小さく笑った。
「いやあね、今日朝から暇だったからぼんやり考えてたんだけど」
「うん」
「ガウリイの瞳の色って、何の青かなーって……」
 明るいブルーだけど、単純に空色とも言えないわよね、なんて。ごく普通のトーンで問われて、わたしは目を丸くした。
 それから、声を上げて笑ってしまいそうになるのを必死で堪えた。
「……ふうーん」
「……なによ、その顔は」
「いいええ、別に? 暇だからって朝から一日ガウリイさんの事考えてるなんて、なんて愛情の深さかしら~、なんて思ってないわよ?」
 言って、にやりと笑ってみせれば、リナは目に見えて赤くなった。
「なっ…! べ、べつに深い意味はないのであって、なんとなく気になって……っ!」
 慌てて否定しようとするのがなんとも分かりやすくて、おかしい。――まったく、リナってばこういう所はお子様なのよね。
「はいはい分かってます分かってます」
「絶対わかってないでしょアメリアーっ!」
 わたしはムキになって騒ぐリナを宥めながら、わたしの瞳だって青なのに、なんて子供じみた事は言わないでおこうと決めたのだった。


1128(ガウリナ/現代パロ)

2016-03-06 21:18:19 | スレイヤーズ二次創作
ぷらいべったーより再掲。
「良いニーハイの日」ということで、現代パロで大学生ガウリナ。

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 落ち着いた雰囲気のオシャレなカフェ。暖房の程良く効いた、暖かい空気の中で人々の密やかな談笑の声と食器の音が響く。
 そんな中、唐突に少女の素っ頓狂な声が響き渡った。

「うっそお、リナそれほんとなの!?」

 ばんと音を立ててテーブルに手をついて、大声を上げた張本人、アメリアはずいとこちらに身を乗り出してくる。
「ちょ、ちょっと、アメリア声が大きいっ」
 あたしは慌てて唇に人差し指を押しあてて、『静かに』のポーズをとってみせた。辺りをきょろきょろと見回して、何事かとこちらを向いた人達に向かって小さく愛想笑いをする。
 そんなあたしに、アメリアは肩を竦めて椅子に座り直した。
「――ああ、ごめんなさい。ちょっと驚いたものだから……」
 ちろりと舌を出して見せてから、彼女は目の前のホットミルクを一口啜る。私立の女子大に通う白いワンピース姿のお嬢様は、そんな姿が悔しいけれど凄くお上品に見える。あたし以上に肉体派なくせに。

「……何もそんなに驚かなくてもいいぢゃない」
 むっとした顔をしたあたしに、アメリアは笑って声を潜める。
「だってあなた達、付き合ってもう一年近いじゃない? なのにまだキスまでって……中学生じゃないんだから」
 呆れたように言われて、あたしは真っ赤になって反論する。
「うううるさいわよっ、いいじゃない別に!」
「だめよっ!」
 即座に否定されて、あたしは目を丸くした。
「なんでよ!?」
「だって、聞いてて面白くないじゃないっ!」
 まるで、何を当たり前のことを、とでも言わんばかりに自信たっぷりにそう言い放ったアメリアに、あたしはしばしその場で固まった。
「………………」
 ぷちり。

 ――……そして、あたしの脳内でなにやら切れる音が聞こえた後の事は、敢えて今は語るまい。

***

 アメリアを泣くまで卍固めの刑に処してから数時間後、あたしはガウリイの家に居た。元々、今日はガウリイの家にお泊りの予定だったのだ。
 いつも通りまったりおしゃべりをして、たまにはゲームに興じて。ご飯を作ってあげて、それから。
 彼はいつもあたしにベッドを譲って、自分はその隣に寝袋を敷いて寝る。それがいつものお泊り。だから今日もそのつもりだったのに。
 アメリアが余計な事を言うものだから、あたしは複雑な気持ちだった。
 ――それって、まだ子供扱いされてるってことじゃないの?
 違う、とすぐに反論出来ないのが少し悔しい。勿論ガウリイと恋人同士であることに疑問はないのだけれど。確かに、彼はいつもあたしの『保護者』だと自称する。その度に少しだけもやもやするのだ。嬉しい気持ちと、何かが物足りないような、不安な気持ちと。

 そんなあたしの気持ちなど露知らず、ガウリイはのんびりとあたしを部屋へと迎え入れた。まったくいつもと同じように能天気な笑顔を見せる彼に、ほっとするような、ちょっとがっかりするような。
「今日ばあちゃんからみかんが送られて来てなあ。一緒に食べようぜ」
「……うん。食べる」
 きっと。
 今日はちょっと気合いを入れて、あたしがショートパンツに二ーハイソックスなんて、いつもより女っぽい格好をして来た意味にも気付いていないのだろう。
「その『絶対領域』でガウリイさんもイチコロよ!」なんてアメリアの言葉は、信用には値しなかったというわけだ。

 ――……ま、別に良いけどね。だってガウリイだし。
 小さく苦笑して、あたしは彼と並んでみかんを食べ始めたのだった。



「リナ。おい、リナ。そのまま寝ると風邪引くぞ」
「……うん?」
 どうやら少し眠ってしまったらしい。
 夕食を終えて、お風呂を借りて。ベッドに寄りかかってテレビを観ていたら、睡魔に負けてすっかりうとうとしてしまった。暖房の効いた部屋は暖かくて心地が良い。

 あたしを起こしたガウリイは、風呂上がりらしく濡れた長い金髪を一つにくくって、さっきよりも少し薄着になっていた。濡れた金髪はいつもより少し色が濃くなっていて、首筋に一筋垂れる水滴に内心どきりとする。
 眠かったのに、目が覚めてしまった。
 彼はあたしをひょいと抱きかかえて、そのままベッドの上に乗せた。
「わ……」
 驚いて小さく声を上げたあたしに構わず、ガウリイは呆れたようにこちらを見下ろした。
「もー、リナ。寝るなら靴下は脱がなきゃだめだろ。逆に冷えちまうって聞いた事あるぞ?」
 まるでお母さんみたいな事を言いながら、彼はあたしの二ーハイソックスを躊躇なくするすると脱がしていく。
 その予想外な行動に、あたしはすぐに反応出来なかった。

「……は? え、ちょっと」
「ん?」
 いつもの調子で。『保護者』の顔をしてあたしを見るガウリイの手が、指が、あたしの脚の上を滑る。
「……っ!!!」
 瞬間的に、あたしは頭が沸騰しそうになった。顔が熱い。きっと真っ赤になっている。
 そんなあたしに構わず、ガウリイはあたしの二ーハイソックスをずるりと脱がせてしまった。その普通よりも長い靴下を綺麗に折りたたんで、棚の上にひょいと乗せてしまう。
「ほら、もう片方も」
「……!」

 口をぱくぱくさせるあたしに、ガウリイは首を傾げた。
「どうした?」
 そのきょとんとした顔。普段通りの声。
「……な、なにすんのよガウリイ! このすけべっ」
「すけべって……」
「すけべったらすけべなのよ! この馬鹿っ!」
 思わず両腕で自分を抱きしめて彼から飛び退いた。恥ずかしさと同時に、少し哀しくなる。あんな風に靴下を脱がされるなんて。色っぽさなんて欠片も何も無い。
 ……また、子供扱い。
 複雑な思いが胸のうちに広がって、あたしは俯いてベッドの縁を睨んだ。
 ――こんな事を期待したわけじゃなかったのに。……って、期待って何よ!?
 頭の中で色んな気持ちがぐるぐる回る。我ながら馬鹿みたいだ。アメリアが変な事を言うから……うん、全部アメリアのせいにしよう。

 最終的に、友人に全部責任転嫁して心の平静を保つことにする。
 そんなあたしの頭の上に、温かい掌が乗せられた。いつものように、くしゃりと頭を撫でられる。そして、同時に言葉も降ってくる。暖かい声。

「はは、悪い悪い……だってリナが、あんな脱がせたくなるような靴下履いてるから……」

「……は?」
 その降ってきた言葉の予想外な内容に、あたしは思わず思考をストップして顔を上げた。
 ――今、なんて言った?
 彼とばちりと目が合うと、ガウリイは苦笑いをして見せる。
「ばれちまったなあ。オレ、ほんとはすけべなの」
 ちらりと舌を出して笑う彼の、その目が悪戯っぽく光った。今の彼の顔は、『保護者』のそれではなくて。
「なっ……!」
 また、固まってしまって何も言えないあたしを、彼は笑って自分のそばに引き寄せた。濡れた前髪の奥で、碧い瞳があたしを捉える。瞬間かっと顔が熱くなる。
「それでな、リナ」
「な、なによ……」
「ほんとはちゃんと一年待とうと思ってたんだが……。――靴下以外も、脱がせていいか?」
 そっと、冗談めかして囁かれた質問の意味。
 それに対して、あたしは何も言わずに彼に口づける事で、返事をしたのだった。
 

 ざっつおーる!

深紅に染まる(ルクミリ)

2016-03-06 21:16:38 | スレイヤーズ二次創作
こちらもワンライ作品から。
お題「鏡」 原作14巻以前のルクミリ、シリアス風味で。

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 嫌な夢を見た。
「……はっ、はっ……はあ」
 俺は荒くなってしまっている息を、意識して整える。気が付けば酷く汗をかいていた。寝まきのシャツが濡れて冷たくなってしまっている。
 内容はほとんど覚えてはいないが、どうせいつもと同じ夢だ。
 ――俺が、人殺しで金を稼いでいた頃の、夢。
 血にまみれて、表情一つ変えずに誰かの命を狩っていた、あの時の断片的な場面がいくつも浮かんでは消えていく。そういう夢だ。

「くそっ、最悪な寝ざめだな」
 宿屋の硬いベッドから起き上がり、窓から差し込む明るい日差しに目を細めた。もう、朝だ。小鳥のさえずりが聞こえて来る。ここは今、平和だ。
 隣の部屋ではミリーナがまだ眠っているだろう。いや、起きているかもしれない。……そんな事はどうでも良い。彼女が生きていてくれているというだけで、俺にとっては充分に幸せなのだ。
 部屋から出てすぐの洗面所で水を汲み、顔を洗った。柔らかいタオルで顔を拭き、顔を上げる。寝ぐせの確認に、取りつけられた小さな鏡を覗き込む。

 そこに映っていた自分は、血のような紅に染まっていた。

「――……あ?」
 前日に染め直したばかりのはずの黒髪が、紅い。セピア色のはずの瞳の色が、紅い。
 どくり、と心臓がひとつ大きく鼓動を打った。視界すらも、紅く染まって行くような気がする。
 なんだ、これは。
 一歩、俺は後ろに後ずさっていた。足元がぐらぐら揺れる。頭ががんがんする。
 ――それなのに、鏡の中の自分から目が離せない。
「……あ、う」
 呻き声ともつかない声を上げてしまった俺を見て。鏡の中のもう一人の俺が、にやりと唇の端を吊り上げた。
「よう、元気か?」

「ルーク?」
 背後から、声。その澄んだ声で、俺を包む空気が変わった。釘付けにされていた鏡から、視線を引き剥がす。愛しい彼女の元へと目を向ける。

「こんな所で固まって、どうしたの?」
 珍しく、きょとんとしたような顔をして、ミリーナが俺を見つめていた。
 ――ああ、やっぱり彼女は俺の女神だ。
 起きたばかりなのか、少し眠たげに緩んだ瞳。普段は一つに纏められている長い銀髪が、下ろされてふわりと広がっている。
「ミリーナ! いや、なんでも……って、そうだ俺今ちょっと髪が……!」
 俺は慌てて両腕で頭を隠した。赤毛が嫌いな彼女の目に、自分の赤毛を触れさせたくは無い。
 しかし。
「髪……? いつもと別に変わりはないように見えるけれど」
「へ…?」
 もう一度、鏡へと目をやった。そこに映る自分は、いつもの自分だった。
 黒い髪、セピア色の瞳。少し疲れたような自分の顔。
「……」
「本当に、どうしたのルーク?」
 少し、俺に呼びかける彼女の声に心配の色が混じる。

「……いや、なんでもないぜ。ちょっと夢見が悪くてな」
 頭を掻いて、俺は笑ってみせた。こんなことで、彼女を心配させるわけにはいかない。じわりと広がる、嫌な予感から無理矢理目を逸らす。
「ミリーナが笑ってくれればすぐに元気になるぜ!」
 大げさに両手を広げて見せれば、ミリーナは眉間に手をあてて小さく溜め息をついた。それから、腰に手をあてて小さく微笑む。その瞬間、俺の目には彼女は女神様に見える。本当だ。
「……もう。あなたって人は」 
 その笑顔で。その、呆れたような優しい声で。
 俺の中の嫌な予感も、薄暗い過去も。全部、忘れてしまえるのだった。

おわり

彼だけの記憶(ダルフィン)

2016-03-06 21:13:03 | スレイヤーズ二次創作
ワンライ参加作品から再掲。お題「海王ダルフィン」
ダルフィンさん初めて書きました。※オリジナル一般人視点。

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 その日、彼は一人森を足早に歩いていた。
 前日に隣町で仕入れた品物を故郷へと運ばなくてはならなかったからだ。細々と商売を続ける彼の家の店はお世辞にも大きいとは言えず、護衛を雇うような余裕も無い。『治癒』や『明かり』の呪文くらいしか覚えていない彼にとって、明るいうちとはいえ森を一人で歩くのは不安だった。
 しかし、生きるためにはこうして稼がねばならない。学も無く、力も無い彼にとってはこうして今一人森を歩く他ないのだ。そう自分に言い聞かせながら、前日の雨で少しぬかるんだ地面を踏みしめていく。

 そこで彼は、その「女性(ヒト)」と出会った。

 美しく長い黒髪。黒目がちな瞳。華奢な身体に纏うのは、青を基調としたドレス。森に一人佇む彼女の姿は、とても現実離れして彼の目に映った。彼女の周りだけ、しいんとした静謐な空気が漂っている。
 小さな泉を眺めていた彼女は、彼の気配に気づいたのか顔を上げた。その目が彼の姿を映す。その瞬間、彼の中で電撃のような衝撃が走った。
「……何かしら?」
 立ち止り、黙って彼女の顔を見つめる彼を不審に思ったのか、彼女は首を小さく傾げた。その仕草すらも、彼の目を引き付ける。
 ――……可憐だ。

「あ、あの……っ」
 真っ赤になり、慌てたように口を開いた彼に、彼女は手で口元を覆いくすりと笑う。
「?」
「可愛らしい方ね」
 にっこりと微笑んで、彼女はそのまま彼から背を向けた。
 このままでは行ってしまう。せっかく出会う事が出来たのに。
 慌てた彼は、とっさに声を上げていた。

「あの、貴女のお名前は!? 俺はジョージですっ!」

 彼女は立ちどまり、振り返る。
「……ダルフィン、と申しますわ」
「ダルフィン、さん……素敵なお名前ですねっ」
 そう返した彼に、彼女は一瞬間を置いてから、にっこりと笑った。
「そう思うかしら?」
「ええ、ええ。とても!」
 彼には学が無かった。魔道の心得もほとんど無い。『海王ダルフィン』の名など、聞いた事はあるかもしれないが、記憶に残っていなかった。だからこそ、彼の言葉は本当だった。

 そんな彼に、人間の女性の姿を借りた海王ダルフィンは面白そうに笑う。自分の正体を「高位の純魔族」だと明かせば、目の前の青年はどんな表情を浮かべるだろうか。どんな負の感情を見せるだろうか。彼女の中で、抗いがたい好奇心がむくむくと膨れ上がる。
 その好奇心に、彼女は抗わなかった。
「わたくしが魔族だとしても?」
「……は?」
 彼女の言葉の意味が良く分からない、とばかりに呆けた顔をする彼に、彼女は思い切り邪悪な微笑みを浮かべて見せる。人間の恐怖を煽るように、唇の端をぐいと持ち上げ、にやりと笑う。
「高位の純魔族ならヒトの形を取る事が出来ると、貴方は知っていたかしら?」
「……ほ、本当に? 貴女が魔族?」
 驚きで固まった彼を見て、海王はくすくすと笑う。予定外の獲物。殺さずとも、恐怖と絶望の感情はちょっとした間食になるだろう。

「そんな…」
 青年は衝撃でその場に膝を付く。
 予想通り目の前の青年から流れ込んで来た負の感情に、しかし彼女は驚きで目を見開いた。その感情には、「恐怖」は混じっていなかった。
 流れて来たのは、「絶望」と「悲しみ」のみ。
「貴方が魔族なら……俺は、俺は……貴方と結ばれる事は出来ないのか……っ!」
 悔しそうな声が、その言葉が森の中に響く。

「……」
 彼女はあまりの事に言葉を失っていた。まさか、正体を明かしてなおこんな事を言う人間が居るなどと思わなかったからだ。今までも、彼女の人間の姿に惹かれて寄って来た男は何人も居たものだが、正体を明かせば皆泣きながら命ごいをした。
 それなのに。
「俺は貴女に一目惚れしたんです。最後には殺しても構わない。いっときでも良い、一緒になってくれはしないでしょうか……」
 まさか。真っ直ぐな目を向けてこんな事を言う人間が居るとは。
 ――これだから、人間という者は面白い。とても興味深い。

 海王ダルフィンは堪え切れず、といった様子で笑いだした。くすくす笑いから、口を開け、胸に手を当てて楽しそうに笑う。
「ふふっ、本当に可愛らしい人ですわね」
 二十年程しか生きていない人間の男など、彼女にとっては赤子も同然であった。
「……じゃあっ」
「でも、ごめんなさいね。わたくしには、そういった感情は理解出来ませんの」 
 肩を落とす青年に音も立てずにするすると近づき、彼女は彼の頬にそっと唇を寄せた。その冷たい感触に、彼は目を見開く。
「サービスですわ。……また、どこかでお逢い出来たら良いですわね」
 そう言った途端、彼女は彼の前から姿を消した。
 音も無く森から存在を消してみせた彼女に、ようやく彼は、彼女が『魔族』であると、本質的に理解したのだった。

***

「そうして俺は、彼女を探して毎日森に行くようになったんだ……」
「もー、じーちゃん。またその作り話してー」
 幼い少年が、道具屋の老人に対し呆れたように笑う。その老人は少年が生まれるずっと前からこの店を構えているが、未だに結婚もしていないという。
「作り話じゃないわいっ!」
 怒って杖を振りまわす老人に、彼は肩を竦める。老朽化甚だしいこの店も、この老人が亡くなればきっと取り壊されてしまう事だろう。継ぐ者が居ないのだから仕方が無い。
「……ま、でもそれで毎日森に行くために『烈閃槍(エルメキア・ランス)』まで覚えたってのはすげーと思うけど」
「だろうだろう!」
「でもまだ会えてないわけだろう?」
 ジト目で言えば、老人は痛いところを突かれたとばかりに、胸に手を当てて呻いた。
「うぐっ……」
「もー諦めろよ。そんなのどーせ夢だったんだって」
「うるさいっ! 何も買わんなら出て行けっ!」
「あーもう分かった分かった」

 朝の日課のような老人とのやりとりを終えて、少年は本来の用事である母親から頼まれた買い物を思い出し、道具屋を飛び出した。
 その時。
 どん、と音を立てて、彼は何か柔らかい物にぶつかった。
「あ、わっ、ごめんなさいっ!」
 それが人間の女性だと気が付いて、彼は慌てて頭を下げる。そんな彼の頭の上から、くすくすと笑い声が降って来る。
「ふふ、良いのですわ。こちらこそごめんなさい」
 見上げた女性は、それはそれは美しかった。長く美しい黒髪。黒目がちの瞳。そしてお姫様のような青いドレス。
 少年に微笑みかけた彼女は、そのまま背を向けてどこかへ行ってしまう。
「……あっ、あの。この店に用だったんじゃないの?」
 慌てて尋ねた少年に、彼女は笑って首を横に振った。
「もう、用は済んだから良いんですの。……彼は、やっぱり可愛らしい方のままだったみたいですわね」
 少年には良く分からない言葉を残して、彼女はそのままゆっくりと歩いて行く。
 その後ろ姿をずっと見ていた少年が、どこからともなく吹いた風に気を取られて目を逸らした瞬間、彼女の姿は消えていた。


終わり。

キンコーズ超初心者ざっくりレポ。

2016-03-03 21:29:54 | 日記・雑記
どもです。またまたあきらです。

この記事は、私の超絶ざっくりした雑なキンコーズレポです。
さてさて、まずはじめに『キンコーズ』とは。
チラシや冊子等の印刷を、お店に行ってセルフでも出来るし依頼して製本等をやってもらう事も出来る印刷系の企業さんですね。
そこら辺はググってサイトを見た方が断然早いのでこんな感じの説明で終わります。

んでですね、コピー本同人誌を作るのにめちゃくちゃ適しているのですね!
私も今日初めてお店に行ったので、色々知ってびっくりしました。

まず、一番の衝撃。
同人誌の表紙、本文の原稿を持っていけば(データでも紙原稿でも)、印刷、製本まで全部ここで出来ちゃう!
しかも、『面付け・製本』というコピー本を作る上で一番面倒くさい作業を全部お店のコピー機(複合機)がやってくれるので、色々設定をしてボタンをぽちっとすれば、『本が完成した状態』で機械からぽいっと出て来るのです…!!!

そんなわけで、自分でやる事がなさすぎてもうあんまり書くことないのですが。
空いている日であれば店員さんが結構最初っから面倒見てくれるみたいで、私は原稿を持って行って、「これこれこんな感じで本にして欲しいのですが…」と頼んだだけで、「はいはいはいー」って設定ぽちぽちしてくれて、がががーっと印刷、製本されてコピ本が出来ました。説明雑っ!

……というわけで、初心者目線で思ったこと。

コピー機の設定凄い複雑。めんどい。慣れないとよく分かんない。
 →これです。ほんとに良く分からんかったです。たぶん一人で行って、店員さんが居なかったら途中で心折れてた感じします。とはいえ説明書とか多分あったと思うのですが…それは今回は結局読まないで済んだので。

そこら辺どうやら店員さんも同じらしい(!)
 →最初、設定良く分からなくて新人さんらしき店員さんに聞いたのですが、その人もまだちゃんと把握していなかったらしく、「???」って感じで上手くコピー出来てませんでした(まあ、あれだけ複雑じゃあね……)。でも、店員さんのミスコピー代はきちんと代金から引かれていたので問題なし!
 →そこで、ベテラン店員さん登場。たぶん、同じようなお客さん多いのだと思いますが、要望を伝えたらばばばっと完璧な設定をやってくださいました。早かった…!そっからはコピー機さんが印刷・製本までやってくれるのを待つのみ。

つまりは、空いている日(平日の昼とか)に行くべし…!あと、お店によって設備に違いがあるみたいなので、行く前にホームページ等で要確認。分からない事があったら、一人で悩むよりも店員さんに分からない事ガンガン聞くのが良いっぽい。自分で試行錯誤してミスした分は勿論お金払わないといけないので……。

・今回85冊分(予備含む)も印刷したので、コピー代馬鹿になりませんでした。…が、我々には救いがあった。
 お店に行く前にクーポン会員に登録しておくべし!!!
 →これほんとに助かりました。私は事前にスマホのメールで登録しました。が、そのうえで今日LINEで友達登録したので、白黒で一枚4円?だったか、それくらいの値段にしてくれました。超ありがたし…!


☆あと、これは私が持っていった原稿について。忘れないように個人的にメモ。

・作りたかった本はA5の小説本でした。ちなみに本文は白黒で表紙はカラー。

・セブンのコピー機を利用。セブンイレブンの有能コピー機には面付けしてくれる便利機能がありますが、今回キンコーズで使った原稿はこれは利用してません。でもセブンでデータから出力すると綺麗に出て来るので、これで『本文→片面印刷、A4で2ページ分ずつ印刷』 表紙もセブンのコピー機でA4でカラー出力。

・表紙はそのまま。本文は、キンコーズの裁断機で半分にA4をA5にカット!(ただ真ん中で半分に切るだけ
 →これを普通にページ順に並べて、これが本文原稿。
 
・表紙については、まずそれだけで必要部数分の枚数をカラーコピー!

……さあ、これで準備は完了だぜ野郎ども!そして子猫ちゃんっ!(謎テンション)

・小冊子印刷機能があるので、原稿、完成サイズや閉じる向きなど設定。ついで、用意した表紙を一緒に製本してくれるように設定。(※これらの設定については店員さんにやってもらうのが早い。説明書もあるはず

・用意した表紙をコピー機横の手さしトレイに設置、原稿は普通に上から読みとる所に設置。

……これで終わりです。後は、ぽちっとボタン押せば設定どおりに印刷、製本までやってくれました。
ほんとに早かったです。びっくりでした。裁断機もコピー機すぐ近くにあったので、気軽に使えましたよ~。

だらだらと長く書いてしまいましたが、こんな感じで超初心者感想レポ、おしまいです。
少しでもキンコーズが気になってる方のお役に立てれば幸いでございます。

……とはいえ、この記事の中には勘違いしてる事とか何か間違ってる情報もあるかもなので、この記事はあんまり信用しないでください(笑)あくまで初心者の日記でございます。
まあつまり、一回自分で行ってみた方が早いっちゅーことですね!以上! 


初めてのコピ本制作、思った以上に簡単で本当にびっくりでした。機会を作ってぜひまた利用したいなと思います。
表紙の紙だけ替えたりとかも可能みたいなので(お店で買える)、やってみたい…!