『他人の見た夢の話ほどつまらないものはない』という。
脈略のない、漠然とした光景の断片を継ぎ合わせながらする、他人の見た夢の話など。
しかし、私は誰かを退屈させずにはいられない。
私は.....
白昼、とても不思議な夢を見た。
そう。
台風の去った天気の良い午後。
私は不思議な夢を見たのだ。
それは....その夢は。
真夏の空の下。
私とゴンザが巨大な企業の敷地に入ってゆくところから始まる。
私はゴンザにその直前に買ってもらった、ゆったりとした木綿のワンピースを着て、その敷地の中にある、巨大な建物の中を回り始める。
二人の傍らには、50代と思しき男性がなぜか一緒にいて.....
彼は建物内の各部署を見て、自分がこれからどこの部署で働くべきか考え決めなければならないらしく、私たちと共に、各部屋へと歩みを進めてゆく。
一生懸命バタバタと体を動かして働く人々のいるフロア。
無言で働く人々のいるフロア。
と、次には、小さな個室で、ゴチャゴチャと書類など並べた中、余裕の笑みで働く定年間近と思われる紳士を見つける。
なぜか、部屋を覗き込む黒人の少年を傍らに、自分の椅子を自慢げに指し示し語る紳士。
それがアンティークであること。
つやつやと光る背もたれを撫でながら、それに腰かけ、彼がそこで過ごした歳月のこと.....。
私たちと、共にいる男性は熱心にその説明に聞き入ったのち、先へ進む。
と。
お次の部屋は、左右に無機質なコンビニのようなショーウインドウ。
中にきっちりと、一種類の商品につき、一個ずつ陳列されたガラス扉。
その前には、なぜかガードマンのように、体のうしろできっちり手を組み、無表情のまま、シワ一つないダークスーツを着た男女が秩序よく、等間隔に立っていて.....
私たちと同行している男性は、不安そうにその光景を見回す。
そして。
ついに部屋の出口にさしかかったとき。
ふいに現れた一人の白髪の男性に彼は呼び止められるのだが.....
その白髪の男性は自分の履いた古い茶の革靴を指し示し、彼にこう言うのだ。
「自分はこの靴を父から受け継ぎ、ずっとずっと大切にしてきた。この靴の艶は、自分の誇りだ」
と。
茶色く、しかし、ところどころ黄色っぽく退色してしまっている上等な革靴。
小さな傷がいくつもあるけれど、それがあるためにかえって味わいを増して、長年に渡って丁寧に手入れされてきたのがよくわかる、つややかな靴。
我々と同行する男性は、黙ってそれを見つめ続ける.....。
そして。
再び三人が歩きだしたとき。
急に視界が明るく開け、私たちはその部屋の出口をくぐり、カフェテリアのような場所に出る。
カフェテリアの奥にはガラスの扉。
と。
我々と同行した男性はその扉を凝視し、立ちすくんだあと、そこに誰かの姿を認めて、顔を歪めて泣き出す。
なぜならそれは.....。
そこに映ったのは、彼の父の姿だったから。
そして.....。
それは実は彼の父の姿ではなく、歳を重ね、父といつしかそっくりになっていた、彼自身の姿と気づいたから。
私とゴンザは、敷地をあとにする。
自分の中に、本当に大事なものを見つけたらしい、同行の男性をその場に残して.....
夕暮れの中、
「このワンピースを買って正解だったね」
と、和やかに笑いながら、その敷地のゲートをくぐる。
『他人の見た夢の話ほどつまらないものはない』という。
しかし、私は誰かを退屈させずにはいられない。
なぜなら.....
いや。
答えは見つからないけれど。
この夢に不思議なものを感じたのは.....
今夜が満月だからだろうか。
脈略のない、漠然とした光景の断片を継ぎ合わせながらする、他人の見た夢の話など。
しかし、私は誰かを退屈させずにはいられない。
私は.....
白昼、とても不思議な夢を見た。
そう。
台風の去った天気の良い午後。
私は不思議な夢を見たのだ。
それは....その夢は。
真夏の空の下。
私とゴンザが巨大な企業の敷地に入ってゆくところから始まる。
私はゴンザにその直前に買ってもらった、ゆったりとした木綿のワンピースを着て、その敷地の中にある、巨大な建物の中を回り始める。
二人の傍らには、50代と思しき男性がなぜか一緒にいて.....
彼は建物内の各部署を見て、自分がこれからどこの部署で働くべきか考え決めなければならないらしく、私たちと共に、各部屋へと歩みを進めてゆく。
一生懸命バタバタと体を動かして働く人々のいるフロア。
無言で働く人々のいるフロア。
と、次には、小さな個室で、ゴチャゴチャと書類など並べた中、余裕の笑みで働く定年間近と思われる紳士を見つける。
なぜか、部屋を覗き込む黒人の少年を傍らに、自分の椅子を自慢げに指し示し語る紳士。
それがアンティークであること。
つやつやと光る背もたれを撫でながら、それに腰かけ、彼がそこで過ごした歳月のこと.....。
私たちと、共にいる男性は熱心にその説明に聞き入ったのち、先へ進む。
と。
お次の部屋は、左右に無機質なコンビニのようなショーウインドウ。
中にきっちりと、一種類の商品につき、一個ずつ陳列されたガラス扉。
その前には、なぜかガードマンのように、体のうしろできっちり手を組み、無表情のまま、シワ一つないダークスーツを着た男女が秩序よく、等間隔に立っていて.....
私たちと同行している男性は、不安そうにその光景を見回す。
そして。
ついに部屋の出口にさしかかったとき。
ふいに現れた一人の白髪の男性に彼は呼び止められるのだが.....
その白髪の男性は自分の履いた古い茶の革靴を指し示し、彼にこう言うのだ。
「自分はこの靴を父から受け継ぎ、ずっとずっと大切にしてきた。この靴の艶は、自分の誇りだ」
と。
茶色く、しかし、ところどころ黄色っぽく退色してしまっている上等な革靴。
小さな傷がいくつもあるけれど、それがあるためにかえって味わいを増して、長年に渡って丁寧に手入れされてきたのがよくわかる、つややかな靴。
我々と同行する男性は、黙ってそれを見つめ続ける.....。
そして。
再び三人が歩きだしたとき。
急に視界が明るく開け、私たちはその部屋の出口をくぐり、カフェテリアのような場所に出る。
カフェテリアの奥にはガラスの扉。
と。
我々と同行した男性はその扉を凝視し、立ちすくんだあと、そこに誰かの姿を認めて、顔を歪めて泣き出す。
なぜならそれは.....。
そこに映ったのは、彼の父の姿だったから。
そして.....。
それは実は彼の父の姿ではなく、歳を重ね、父といつしかそっくりになっていた、彼自身の姿と気づいたから。
私とゴンザは、敷地をあとにする。
自分の中に、本当に大事なものを見つけたらしい、同行の男性をその場に残して.....
夕暮れの中、
「このワンピースを買って正解だったね」
と、和やかに笑いながら、その敷地のゲートをくぐる。
『他人の見た夢の話ほどつまらないものはない』という。
しかし、私は誰かを退屈させずにはいられない。
なぜなら.....
いや。
答えは見つからないけれど。
この夢に不思議なものを感じたのは.....
今夜が満月だからだろうか。