例えば、「イのQA4」は「公開すべき」の判断ですが、「国際的な問題への対応」「外交上、人権上の問題発生の恐れ」に対して審査会は当該文書を見た上で、「公開によって、外交上、人権教育上の問題が発生する具体的な蓋然性がない。」と判定しています。
・・・・・既にこの文書が、卒業式に向けた2年目の強制に各職場で使われている現状で、「府教委は府情報公開条例の答申尊重義務を守り、直ちに(部分)公開決定を出すこと。」を、文書で申し入れるつもりです。みなさんのご協力もお願いします。
第一 審査会の結論
実施機関は、本件異議申立てに係る部分公開決定において非公開とした部分のうち、別紙において「公開」とした部分を公開すべきである。
実施機関のその余の判断は妥当である。
第二 異議申立ての経過
1 異議申立人は、大阪府情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定により平成24年4月26日、大阪府教育委員会(以下「実施機関」という。)に対して、「卒・入学式に関する2つの文書、『職務命令に関する手続きについて』と『校長・准校長限りQA取扱注意』」の公開請求(以下「本件請求」という。)を行った。
2 同年5月10日、実施機関は、条例第13条第1項の規定により、本件請求に対応する行政文書として、下記(1)の行政文書(以下「本件行政文書」という。)を特定の上、同(2)の部分を除いて公開するとの部分公開決定(以下「本件決定」という。)を行い、同(3)のとおり公開しない理由を付して異議申立人に通知した。
(1)行政文書の名称
ア. 職務命令に関する手続きについて
イ. 校長・准校長限り QA取扱注意
(2)本件決定により公開しないこととされた部分
ア. 「職務命令に関する手続きについて」における校長の事務、指導等に関し、公知の事実
でない部分
イ. 「校長・准校長限りQA取扱注意」における校長の事務、指導等に関する部分
なお、具体的な非公開部分は、別紙の「非公開部分」欄に記載されたとおりである。
(3)公開しない理由
大阪府情報公開条例第8条第1項第4号
府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの
3 異議申立人は、本件決定を不服として、同年5月25日、行政不服審査法第6条の規定により、実施機関に異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)を行った。
第三 異議申立ての趣旨
本件処分を取り消し、全部公開を求める。
第四 異議申立人の主張要旨
異議申立人の主張は概ね以下のとおりである。
1 異議申立書における主張要旨
本件公文書は、2012年3月・4月の府立学校の卒業式・入学式に関するものだが、卒・入学式とそれに関連した教職員処分等の事務執行は全て終わってしまっているので、市民に公開すべきである。
部分公開時の説明で担当者(東・主任指導主事)の公式説明は、「来年の卒・入学式の事務執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるので非公開にした。」というものだが、本件文書は今年の卒・入学式に限定した文書なので、「大阪府情報公開請求」第8条第1項第4号の解釈を間違っている。
2 反論書における主張要旨
(1)「公開しないことと決定した部分が・・・」の部分に対して
「校長・准校長の指導を無視あるいは逆手に取るような行動を行い、・・・」の具体的内容が全くわからない。具体的な例示すらも一切せずに、指導の対象である教職員と、行政説明の責任がある市民を、一方的な偏見や「敵対者」のように決めつける言い方で、非公開の理由にならないだけでなく、この一文は失礼で、撤回すべきである。
また、「公開されることにより、今後、実施機関から校長及び准校長に対し同種の指導及び指示ができなくなる懸念があり」とあるが、今年の文書を公開するとなぜ来年以降のことについて懸念が生じるのか理解できない。今年の文書の内容が、市民に隠さないと実施できない、不正な内容・方法(つまり、バレるとヤバい!)だったというのだろうか。
(2)「非公開の理由」の部分に対して
「かかる適正な手続きの遂行を担保するために、先に示した手続きの詳細、服務管理、懲戒処分に関する部分は非公開とすべきである。」は、理由になっていない。この問題に限らず、「適正な手続きの執行」が求められるのは常に当然で、だから非公開だと言うだけなら、一方的に秘密行政を宣言しているだけで、市民に対して不当だ。
(3)「異議申立人の『本件文書は・・・』という主張について」の部分に対して
「今後、職務命令違反がなくなるまで当分の間は、・・・」「状況の改善には、なおしばらく時間がかかる・・・」とあるのは、不起立の教職員がゼロになりそれが続くまではずっと、数年間は非公開文書にするという意味である。卒・入学式についての行政指導を越えて、不起立教員の根絶宣言を出したことになり、憲法19条(思想・良心の自由)の侵害行為である。それは年度を越えての非公開扱いの理由としては全く不当であり、この一文は撤回すべきである。
(4)全体について
この「弁明書」は象徴的で、府教委の目には統制する相手としての教職員のことだけがあって、前提として教育行政の責任を負っている市民のことは全く見えず、考えていない。今回の卒・入学式に関する行政文書は、当年度が終わったら市民に公開することは、行政責任の前提である。これに対する市民の意見を含めて広聴した上で、次年度の卒・入学式への行政指導に当たるべきである。
本件文書は過去の文書として公開すべきである。
第五 実施機関の主張要旨
実施機関の主張は概ね以下のとおりである。
1 公開しないことと決定した部分が大阪府情報公開条例第8条第1項第4号に該当することについて
本件行政文書は平成24年1月17日に開催された国旗掲揚及び国歌斉唱に関する臨時校長会において、府立学校校長・准校長に対して配布し、説明された文書のうち「職務命令に関する手続き」と、各校校長・准校長あて配布した「校長・准校長限りQA取扱注意」の二つの行政文書である。
本件文書は、校長及び准校長が自校の教職員に対し、職務命令を円滑に発出できるよう、その手順や手続等を校長・准校長に示したものであり、その内容が、公開されることになれば、校長・准校長の指導を無視あるいは逆手に取るような行動を行い、卒業式及全般にわたる運営を滞らせる恐れがあるなどの適正な事務執行ができなくなることが予想される。
こうした点を考慮すれば、当該事由を非公開とすることは、正当な判断に基づくものである。
また、公開されることにより、今後、実施機関から校長及び准校長に対し同種の指導及び指示ができなくなる懸念があり、実施機関から学校への指導事務が困難になる可能性が極めて高い。
2 非公開の理由
これまで、個別の学校で校長が職務命令を発出し、職務命令違反により教職員が処分を受けたことはこれまで2件あるが、教育長が、府立学校のすべての教職員及びすべての校長・准校長に職務命令を発出したのは今回が初めてのことである。校長・准校長にとっても自校のすべての教職員に対し、職務命令を発出するのは初めてのことである。本件文書は、すべてが初めての状況で、校長・准校長が、教育長からの通達を受け、自校の教職員に対し、滞りなく職務命令を発出できるよう、その手順や必要な手続等を示したものである。学校によっては、長年にわたる校長の「粘り強い指導」にもかかわらず、国歌斉唱時に「起立斉唱しない」教職員が依然存在する状況にあって、今回の職務命令の発出を、共通の手順により、すべての学校で混乱なく適正に行うことは、極めて重要なことであった。
また、起立斉唱にかかる職務命令は実施機関の強い姿勢を示すものであり、それだけに適正な手続きの遂行を必要とするものである。かかる適正な手続きの遂行を担保するため、先に示した手続きの詳細、服務管理、懲戒処分に関する部分は非公開とすべきである。
以上の点を考慮しても、今回の部分公開の決定は、きわめて正当な判断に基づくものであると言える。
3 異議申立人の「本件文書は2012年3月、4月の府立学校の卒業式・入学式に関するもので、卒業式・入学式はすでに終了し、それに関係した教職員処分等の事務執行はすべて終わっているので公開すべき」という主張について
入学式や卒業式を担当する教職員の集団がローテーションで順次入れ替わっていく学校の組織体制を考えれば、今後、職務命令違反がなくなるまで当分の間は、本件に係る円滑かつ適正な事務執行に特段の配慮を払い、各学校において、教職員の起立状況が改善されているかどうかを見極めていく責務が実施機関にあるのは当然のことである。実施機関として、校長・准校長の指導を無視あるいは逆手に取るような対抗行動や、卒業式全般にわたる事務執行や運営を滞らせる行動等は、厳に回避せねばならないのである。
なお、平成23年度卒業式においては、職務命令にもかかわらず、21校29名が不起立で戒告処分となっている。また、平成24年度入学式でも2校2名が不起立で戒告処分となっており、状況の改善にはなおしばらく時間がかかると考えるのが相当である。
4 結論
本件行政文書は、条例第8条第1項第4号に基づき、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、これらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるので、部分公開の措置を講じたものである。
そして、条例第8条第1項第4号に該当するとして部分公開とした本件決定には、以上のとおり違法または不当な点は何ら存在しない。
第六 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
行政文書公開についての条例の基本的な理念は、その前文及び第1条にあるように、府民の行政文書の公開を求める権利を明らかにすることにより「知る権利」を保障し、そのことによって府民の府政参加を推進するとともに府政の公正な運営を確保し、府民の生活の保護及び利便の増進を図るとともに、個人の尊厳を確保し、もって府政への信頼を深め、府民福祉の増進に寄与しようとするものである。
このように「知る権利」を保障するという理念の下にあっても、一方では公開することにより、個人や法人等の正当な権利・利益を害したり、府民全体の福祉の増進を目的とする行政の公正かつ適切な執行を妨げ、府民全体の利益を著しく害することのないよう配慮する必要がある。
このため、条例においては、府の保有する情報は公開を原則としつつ、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項の規定を設けたものであり、実施機関は、請求された情報が条例第2条第1項に規定する行政文書に記録されている場合には、条例第8条及び第9条に定める適用除外事項に該当する場合を除いて、その情報が記録された行政文書を公開しなければならない。
2 本件決定に係る具体的な判断及びその理由について
(1)条例第8条第1項第4号について
行政が行う事務事業に関する情報の中には、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程で公開することにより、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれがあるものがある。また、反復継続的な事務事業に関する情報の中には、当該事務事業実施後であっても、これを公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものもある。
このような支障を防止するため、これらの情報は公開しないことができるとするのが条例第8条第1項第4号の趣旨である。
同号は、
ア 府の機関又は国等の機関が行う取締り、監督、立入検査、許可、認可、試験、入札、契約、交渉、渉外、争訟、調査研究、人事管理、企業経営等の事務に関する情報であって、
イ 公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるもの
は、公開しないことができる旨を定めている。
(2)条例第8条第1項第4号該当性について
ア 非公開部分(別紙参照)につき、審査会において当該対象文書を見分し、実施機関によって口頭で説明されたところによると、本件の文書は、府立学校における入学式、卒業式等における国歌斉唱時の教職員の起立斉唱の徹底を図るため、実施機関が、所属長である校長・准校長に示した対応マニュアルとして作成された文書であることから、「府の機関又は国等の機関が行う人事管理等の事務に関する情報」として、(1)アの要件に該当する。
イ 次に、本件係争情報が(1)イの要件に該当するかどうかについて、実施機関によって審査会に対し口頭で説明された内容及び審査会において確認した本件係争情報の内容に基づいて検討したところ、以下のとおりである。
(ア)(1)イの要件に該当するか否かは、条例第8条第1項第4号によると、当該事務事業の性質、目的等からみて、執行前あるいは執行過程での公開により、当該事務事業の実施の目的を失い、又はその公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼし、ひいては、府民全体の利益を損なうおそれがあるか否かにつき、判断する必要がある。
また、反復継続的な事務事業に関しては、事務事業の性質、目的等からみて、当該事務事業実施後であっても、これを公開することにより同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又は公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれがあるか否かにつき判断する必要がある。
そして、2(1)で示した条例第8条第1項第4号の趣旨からすると、「おそれがあるもの」に該当して公開しないことができるのは、当該情報を公開することによって、「事務の目的が達成できなくなり」、又は、「事務の公正かつ適正な執行に著しい支障を及ぼすおそれ」について、蓋然性が具体的かつ客観的に認められる場合に限られる。
(イ)以上の基準につき、実施機関によって行われた、別紙「事務執行支障の内容」に係る説明を基に実施機関の主張内容を検討する。
別紙の「公開・非公開の判断」欄において「公開」と記載されている部分は、公開によって対抗行動が発生する具体的な蓋然性が示されていないもの又は一般論に過ぎないものなど、公開されても具体的な支障がないものと判断することができることから、(1)イの要件に該当しない。
一方、別紙の「公開・非公開の判断」欄において「原処分妥当」と記載されている部分は、公開によって、卒業式及び入学式を実施する事務の公正かつ適正な遂行に著しい支障を及ぼすと認められることから、(1)イの要件に該当する。
3 結論
以上のとおりであるから、「第一 審査会の結論」のとおり答申するものである。
(主に調査審議を行った委員の氏名)
大和正史、岩本洋子、野呂充、松本哲治