松の向こうは富山湾、そのずっとさきに能登半島が長く延びている。この海は千メートルの深さがあり、深海を抱いていることから来る不思議がいろいろと現れる。景色が伸びたり縮んだりひっくり返ったりする蜃気楼、通常は深海にいるホタルイカ、海底からの湧水による埋没林の存在、ブリの定置網漁などなど。海の表面を見渡すだけからでは見えない深海の不思議が潜んでいる。富山県はこの深海底から立山頂上まで4000メートル以上の高低差がある、不思議なところである。
昼間の立山連峰は、厳然とそこにそびえていて「存在」そのものといった感じです。だれが何と言おうと「ゆるぎなく存在している」のが昼間の立山です。しかし朝方や夕方に立山が見せる表情は、そうではなくなります。ときとしてドラマチックに語りかけてきたり、静かに瞑想していたり、存在しているのかいないのかが妙にあいまいになってしまったりするのです。