不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Maltrattamenti dei cavalli ?

2004-08-18 18:30:35 | 日記・エッセイ・コラム
毎年夏になると熱くなるシエナ。

シエナの人にとってパリオは
サッカー・セリエAのスクデットよりも
重要な意味をもつと比喩されるほど
彼等にとっては大事な伝統行事。
シエナ人の中には「あの馬が勝った年に結婚した」とか
「この地区が優勝した年に初孫が生まれた」なんていうふうに
個人年表の指標にしている人もいるくらい
彼らの生活に根付いているのです。

そんなわけで、シエナ市は
このパリオに参加する馬の調教をするために
開催場所であるカンポ広場(Piazza del Campo)と
同じ条件(同じ大きさ、同じカーブ、同じ斜度、同じ土)の
馬場を200000ユーロかけて特別に用意。
この専用馬場が提供されるまでは
各出場馬はシエナ郊外の自然の中で
それぞれ調教していたというのですから
設備の整った馬場ができたのは
調教師にとっても調教される馬にとっても
幸せなことなのかもしれません。

カンポ広場の斜面に砂を入れて
狭いコースを猛烈な勢いで馬が走り抜けるパリオの祭では
きついカーブ(特に危険といわれているのは
Curva San Martino:サン・マルティーノコーナー)を
回り切れなくて転倒する馬も多く、
それによって怪我人、怪我馬が出る年もあるほど。
そうした事故を軽減するためにも
若いうちから本番会場と似たような条件で
馬を調教するというのは
ある意味非常に正しいのですが、
そこまでして、という意見がないわけでもないのです。

そんな専用馬場を作ることは
税金の無駄使いだというのにくわえ
伝統行事という名のもとで、動物の虐待に繋がることが
毎年繰り返されているのはおかしくないかという意見もあり
毎年、パリオの時期になると
伝統行事を誇りに思う人々と動物愛護団体との間で
熱い論争が繰り広げられたりするわけです。

競走馬として生まれてくる馬もいるわけですから
個人的には動物愛護の点でどうこうというのは
そんなに説得力のあるものではないと思うのですが。
そんなこといったら
食肉になるために生まれて飼育されている動物も
動物愛護の面から存在してはいけないということになり、
それはまたちょっと変な話だよねってことになるわけだし。

パリオ用の砂はパリオ前夜に
一晩で広場全体に均等に敷き詰められます。
こうすることで湿気による土の硬化に
ムラが出るのを防ぐのだそうです。
馬が走りやすいように、そこまで念入りにしているのです。
レース当日には万が一怪我をした馬を運ぶための
特別救急車が広場の片隅に待機しています。
それに出場馬は「専用のクリニック」を利用することができ
レースを闘いぬいて引退が決まった馬には
きちんと「年金制度」や「老後施設」が準備され
その生涯を閉じるときには「名誉を称えるお墓」なども
人間並みにちゃんと用意されています。

パリオではジョッキーよりも馬が主役。
ジョッキーが振り落とされたって
馬がゴールすればそれが優勝馬。
決して虐待されたりしているわけではないと思います。
むしろ大事にされていると思うけれど、
レースが過酷なだけに、動物愛護の面からは
許せないこともあるのでしょうね。

パリオに命(もしくは人生)を
かけている人もきっといるんです。
伝統行事、これからも末永く問題なく続きますように。

人生で初めてパリオを見物した
「ponnoかずちゃんのイタリア・フィレンツェ日記」
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