不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Francesco libera l'eretico Pietro di Alife

2010-12-07 13:00:43 | アート・文化

アッシジのサン・フランチェスコ教会に描かれた
GIOTTO(ジョット)のフレスコ画。
あまりに壮大で、数も多いので、
鑑賞していても
実はいつも途中で飽きてしまい、
気づくと何も覚えていないってことになりかねません。

Francesco libera l'eretico Pietro di Alife
「異端者アリフェのピエトロの解放」は
このサン・フランチェスコの生涯を描いた
一連のフレスコ画の28枚目にして最後のシーン。
1290年から1295年に描かれたものですが
このシーンの大半は弟子が手がけていることもあり、
他のシーンに比べて人物がなんとなく薄っぺらかったり、
仕草が不自然だったり、
建物の描き込みが稚拙だったりもします。

Giotto_colonna

このエピソードは柱の付いた不思議な建物に
異端者として幽閉されているピエトロを
空から聖フランチェスコが現れて救出するというシーン。

先月研究者により発表された新しい解説で
このアッシジのサン・フランチェスコ教会の
ジョットのフレスコ画のあちこちに
新たな解釈が付け加えられています。
そのうちのひとつにこの作品も含まれています。

中世の時代には右側の柱付きの建物は
トライアヌス帝の柱だと考えられていましたが、
新しい説によれば、
あの不思議な柱はただの柱ではなく
Familia Colonna(コロンナ家)を暗示しているものだ
といわれています。
画面の中央に跪き、解放の瞬間を目撃している司祭は
Giacomo Colonna(ジャコモ・コロンナ)で、
コロンナ家は当時、
初めてフランチェスコ会から教皇の座に上りつめた
Niccolo IV(ニッコロ4世)の庇護を熱く受けていた家柄です。

アッシジのサン・フランチェスコ教会は非常に大きく
上層部と下層部に分かれていますが、
上層部は司教たちのために、
そして下層部は信者のために利用され
それぞれに合った題材のフレスコ画が描かれています。

「異端者アリフェのピエトロの解放」が描かれているのは
聖職者が利用する上層部で、
一般信者向けのエピソードとは異なり、
聖フランチェスコの行いを讃え
フランチェスコ会の歩みを記し
フランチェスコ会と教皇庁の繁栄を称えているのです。
そういわれると
あの柱(colonna)は教皇の庇護の厚かった
コロンナ家の暗示だといわれても納得できるというものです。