不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

L'Annunciazione Ranieri

2012-12-19 23:13:12 | アート・文化

2004年のペルジーノ展で初めて観た作品
「L'Annunciazione Ranieri」
ラニエリ家の受胎告知と呼ばれる、
ペルジーノの小さな作品です。
ペルージャに今も続くラニエリ家が所有する作品で
これまで1907年と2004年の2回しか
一般公開されたことがない
正真正銘のプライベートコレクション。
この作品が12月6日より5年の期限付きで
ペルージャのウンブリア国立美術館に展示されています。
国立美術館とラニエリ家との間に交わされた契約は、
とりあえず、5年の展示ですが、
問題がなければさらに5年延長の予定。

Ranieri

55,5センチx42センチの小さな作品ですが、
ペルジーノの晩年の作品(1487年から1489年頃の製作)で
建築物の遠近感、人物の表情、画面全体の光の調和など、
どれをとっても申し分ない美しい作品です。
同じくウンブリア国立美術館に収蔵されている
ペルジーノとその工房による
8枚のサン・ベルナルディーノの生涯(1473年)から
さらに成熟した感じが漂っています。
いずれもウンブリアのルネッサンスを代表する作品といえます。

受胎告知というテーマは非常に好まれたので、
数々の作品が残っています。
閉ざされた空間で読書(もしくは針仕事)をしていたマリアの元に
大天使ガブリエレが神の子を宿った知らせをもってやってくるシーン。
この作品も柱廊で囲まれた明るい中庭の右手にマリア、
その左側に大天使ガブリエレが跪いています。
マリアは大天使の訪れとお告げに驚き
今まさに手に持っていた本を足元に落とした感じ。
大天使ガブリエレは純潔の標しである
白いユリの花をマリアへの贈り物としてもっています。
均整の取れた中庭の向こうには
柱の間に開かれた空間から、奥に広がる
ペルジーノらしい柔らかな丘陵の景色が描かれています。
作品全体が非常に柔らかい光に包まれ、
落ち着いた空間に吸い込まれそうな錯覚を覚えます。

マリアの右上、建物の一部の鎧戸が一枚開けられています。
今でもこういう下から開けて支えるタイプの窓は
イタリアに多くありますが、
1400年代からずっと同じなのですね。

Galleria Nazionale dell'Umbria
Corso Vannucci 19, Perugia
開館時間:8:30-19:30
休館日:毎週月曜日、12月25日、1月1日、5月1日
入場料:6,5ユーロ