夜な夜なシネマ

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『女は二度決断する』

2018年05月03日 | 映画(あ行)
『女は二度決断する』(原題:Aus dem Nichts)
監督:ファティ・アキン
出演:ダイアン・クルーガー,デニス・モシット,ヨハネス・クリシュ,
   サミア・シャンクラン,ヌーマン・アチャル,ウルリッヒ・トゥクール他

GW、私は暦どおりに仕事ですが、ダンナは9連休。
その間、あちこちにお出かけになるご様子ですので(笑)、私は私で勝手に映画三昧。
次にダンナが出張する折りには映画をタダで観まくれるようにと、
TOHOシネマズでハシゴすることを考えていましたが、
週間スケジュールを立ててみたら、どうもTOHOシネマズばかりは無理がある。
ならばマイルを貯めるのは後回し、本当に観たい作品を観ることに。
まずはシネマート心斎橋にて3本ハシゴ。

トルコ系ドイツ人であるファティ・アキン監督、かなりお気に入りです。
本作は第90回アカデミー賞外国語映画賞にドイツ代表として出品され、
第70回カンヌ国際映画祭ではダイアン・クルーガーが主演女優賞を受賞しました。

ハンブルク在住の女性カティヤ。夫はトルコ系移民ヌーリ。
ドラッグの売人だった過去を持つが、今は真っ当な職に就く良き父親。
まだ幼い息子ロッコを手放しで可愛がっている。

ある日、親友で妊婦のビルギットと会う約束をしていたカティヤは、
ヌーリの事務所へロッコを送り届けた後、親友と過ごすために出かける。
数時間後、夫と息子を迎えに戻ってみると、なぜか人だかりが。
ヌーリの事務所前で爆発事件が起きたというのだ。

最愛の夫と息子を一瞬にして失ったカティヤ。
警察は、前科者のヌーリが何らかのトラブルに巻き込まれたと見るが、
カティヤは移民を狙ったネオナチによるテロだと訴える。
やがて彼女の主張どおり、ヒトラーを崇拝するネオナチのドイツ人若夫婦が逮捕される。
カティヤが犯人を目撃していることや、犯人の父親の証言から、
裁判で勝つことはまちがいないと思われていたが……。

こうしてあらすじだけ改めて読んでみると、
ドイツ人対移民の構図を思わせますが、そうではありません。
監督がカティヤを生粋のドイツ人女性としたことで、
移民だけの問題ではない、ドイツ国民すべての問題として描かれています。

さまざまな映画でさまざまな裁判の様子を見ることができますが、
ドイツの裁判にも驚きました。
証人がこちらを向いて話すのではなく、裁判官の席に向かって普通に座って話す。
原告被告の弁護人はそれぞれわりと自由に話している印象。
そして、これだけ状況証拠が揃っているにもかかわらず、
疑わしき罰せずなのはどこの国も同じなのか。

ダイアン・クルーガーの演技が素晴らしい。
事件後に止まっていた生理がふたたび始まるシーン。
そのときの呆然とした表情の後の彼女の決意。

世界にのしかかる移民問題。
自身が移民の監督がそんなことを気にせずに映画を撮れる日は来るのでしょうか。

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