夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『心と体と』

2018年05月24日 | 映画(か行)
『心と体と』(原題:Testről és Lélekről)
監督:イルディコー・エニェディ
出演:アレクサンドラ・ボルベーイ,ゲーザ・モルチャーニ,レーカ・テンキ,エルヴィン・ナジ他

先週半ばにダンナ、海外出張へ。
その間にまたTOHOシネマズの1ヶ月フリーパスポートをつくろうと、
すでに6,000マイル貯めたのですが、飲み会だらけで映画を観るひまがない。
出張後すぐにフリーパスをつくるのは止めて、週末に。
ほんとは週末にナゴヤドームまで行こうかとも思ったけれど、
阪神ふがいなさすぎて、名古屋まで行くモチベーション保てず。
今年の球団スローガン、「執念」が泣いている。
テレビ中継を観るのもおそろしく、映画に逃げました。
フリーパスをつくる前に、シネ・リーブル梅田で2本ハシゴ。

ハンガリー作品。
第90回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた5作品中、4作品が日本で公開済み。
『ナチュラルウーマン』『ラブレス』『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
好きかどうかは別として、どれも強烈な印象を残す作品でした。
本作は第67回ベルリン国際映画祭でも金熊賞を受賞しています。

ブダペスト郊外の食肉処理場
財務部長のエンドレは、代理職員として雇われた若い美人女性マリアのことが気になる。
彼女はコミュニケーションを取るのが苦手で、人を寄せつけない。
品質検査を担当し、片っ端からB級ランク付けしたものだから、社員みんなドッチラケ。
そんな彼女にエンドレが声をかけるが、続かない会話。

ある日、社内で牛の交尾薬が盗まれるという事件が起きる。
全従業員がお色気ムンムンの精神分析医と面談することに。
性的な質問ばかりが並び、エンドレは不愉快になるが、どんな夢を見たかとも問われる。
すると、エンドレとマリアがまったく同じ鹿の夢を見ていたことがわかり……。

オスカーの他の外国語映画賞ノミネート作品と甲乙つけがたいほど本作も鮮烈、
そしてこれは鮮烈のみならず、私は大好きな作品でした。
ただし、食肉処理のシーンもあるし、不思議な空気感漂う作品なので、
ハリウッド作品慣れしている人にはお薦めしづらい。

マリアは人並み外れた記憶力を持ち、ものすごく頭がいい。
だけど、人とのコミュニケーションに関してはそうは行かず、失敗してばかり。
失敗するのが怖いから、人を遠ざけているところもあるようです。
帰宅して、その日の人とのやりとりを再現して自己嫌悪に陥るところなど、
人間らしくない彼女の人間らしい一面に好感が持てます。
彼女は自分に何かが欠落していることをちゃんとわかっていて、
なんとかしたいと思っているけれど、なんともできないんですねぇ。

それが、およそ恋愛の対象とは言いがたい、くたびれた中年男と出会って変わる。
エンドレは左手が不自由で、人生の何もかもをあきらめている。
そんな彼も、マリアと出会って毎日ウキウキわくわくする。
私の苦手な「オッサンの妄想」ではあるのですが、なんだか許せてしまう。

心を開きはじめた彼女の、周囲の人との会話シーンがすごく好き。
会社の清掃員のおばちゃんとの会話なんてピカイチ。
彼女を幼い頃から担当する精神科医のカウンセリングも良いし、
CDショップの女性店員との会話にはムフフと笑ってしまいました。
「会いたくてたまらない」という歌詞を聴いたときのマリアの表情は、雷に打たれたかのようです。

魂を揺るがすほどヘヴィーな作品ではありません。
でも、人の痛みだとか優しさだとかを、それこそ心と体で感じたい。

ネタバレになるけれど、マリアが手首を切るシーンでは、え〜っ!
想定外の悲しすぎるラストになっちゃうの!?と呆然としかけてホッ。
左手の不自由なエンドレ、左手を切ったマリア、向かい合えば補えている。

鑑賞後に、エンドレ役の俳優がほぼズブの素人だと聞きました。
道理でぎごちなさがあったはずだわ。
思い返すとなるほどなシーンがたくさんあり、下手といえば下手だけど、
愛想のないオッサン、でも実直という印象で、よかったのでは。

恋したときに聴きたい曲って何ですか。

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