電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

眼福、耳福。~山響と山形舞子による「紅藍物語」

2010年07月02日 06時06分35秒 | -オーケストラ
経済同友会東北ブロック会議のイベントで、山形交響楽団と山形舞子とのコラボレーション「紅藍物語」が上演されました。岩崎宏美+日本フィルハーモニー交響楽団というような共演は承知していましたが、日本舞踊と西洋音楽の共演というのは、たしかに初めてです。指揮:飯盛範親、演奏:山形交響楽団、踊り指導:藤間蝶、編曲:木島由美子(*)、というもので、山形テルサホールにて開催されたものです。

ダークスーツのヲジサン軍団の背後に、ハガキで申し込んで当選した一般のお客さんがずらりと並び、ぎっしり満員の状況です。いつもの定期演奏会とはたしかにやや客筋が異なり、どちらかといえば年配の女性が目立ちます。
開演前に、経済同友会の方々からご挨拶がありました。「文化の地域力」というテーマで開催された今回は、山形の人々が、山響や山形舞子などの文化を支えている様子を、新潟を含む東北各県の経済人に認識してもらいたい、ということで企画されたのだそうな。

ステージ上に、山響の団員の皆さんが登場します。本日は略式服というのか、とりどりのネクタイで、蝶ネクタイのイヴニング・スタイルではありません。指揮者の飯森さんが登場し、山響のモーツァルト演奏の特徴について、少しトークをします。

(1)まず楽器配置ですが、コントラバスを正面一番奥に置くのは、18世紀当時のやり方で、第1と第2ヴァイオリンを左右両翼に配した対向配置も、当時のドイツ・スタイルとのこと。
(2)次に、オリジナル楽器の使用です。ナチュラル・ホルンや木製のフルートなどを紹介します。
(3)最後に奏法について。弦楽器はノン・ヴィヴラート奏法と言って、ヴィヴラートを極力抑え、感情を込めたいときだけヴィヴラートを使うようにしています、とのこと。

最初の曲目は、モーツァルトの交響曲第40番。弦楽器セクションは 8-8-6-5-3 で、中央の管楽器セクションは、フルート、オーボエ、ファゴットにホルンという構成。速めのテンポで、高名なるト短調交響曲を演奏します。山形の聴衆には、交響曲全曲演奏企画「アマデウスへの旅」演奏会ですっかりおなじみですし、スクールコンサート等でもリクエストが多いのでしょうか、すっかり自家薬籠中の音楽となっているらしく、いつものように澄んだ響きの音楽が次第に高揚していきました。

15分の休憩の際に、ステージの左右袖のところに、大きな金屏風が出されました。コントラバス3台がステージの左側に移動し、ホルンやトランペットなどが右側に移動します。中央の弦楽器セクションと木管セクションも全体に後方に移動し、二つの金屏風の間に舞子さんたちの舞台となる空間が作られます。



後半、まずは「紅花摘み唄」から。木島さん編曲のオーケストラによる音楽をバックに、「サァーサ、摘ましゃれ摘ましゃれ!」の掛け声にのって、6人の山形舞子さんたちがそれぞれ籠を持って登場すると、ぱっとステージが明るくなったようで、思わず拍手がおこります。紅花を摘むしぐさを模した動きが、音楽に自然に乗っており、全く違和感がありません。トライアングル等の音が、実に効果的、印象的。
続いて「最上川舟唄」です。フルートで「酒田~サ行くさげ~」の旋律が流れると、年配の貫禄で、藤間蝶師匠が踊ります。音楽は迫力があり、力強いものです。手ぬぐい一本で、櫓をあやつる様子を模しているのでしょうか、渋い踊りと音楽とが、やや男性的な哀愁も漂わせておりました。
「きりぎりす」。扇子を手に、4人の舞子さんが踊ります。音楽は、トランペットがやや「おてもやん」風にコミカルに。西洋音楽の音節ですが、動きに違和感はありません。足の運びがマリオネットのようで、おもしろい、おもしろい!
「六段くづし」。弦のピチカートが琴を想起させながら、うちわを持った舞子さん二人の踊りです。ミュートをかけたのでしょうか、笛とラッパが和風に聞こえます。
「さわぎ」。それぞれ扇子を持って、6人の舞子さんが登場。オーケストラの奏でる音楽のリズムと、舞子さんたちがそろって扇子をバッと開く音のタイミングが、ほぼぴたりと合っており、目と耳とで、おもしろい効果を出しておりました。音楽が終結部に入るころ、舞子さん六人が舞台で正座し、おじぎをします。なんともチャーミングな形で音楽も終わります。心憎い演出です。

拍手を受けて、舞子さんたちがステージ上を出入りしますが、聴衆の皆さん微笑んでニコニコです。指揮の飯森さんが舞子さん一人一人にインタビュー。皆さんはっきり答えており、現代的でした。

趣向はこれでは終わりませんで、最後に「花笠音頭」でフィナーレです。花笠を持ち、あでやかな舞子さん6人の踊りに合わせ、陽気でリズミカルな音楽が奏され、聴衆も手拍子を合わせます。ウィーンがラデツキー行進曲なら、山形には花笠音頭があるのだなぁと、妙にうれしくなりました(^o^)/

いやー、楽しかった!山形の経済同友会の皆さん、眼福、耳福、アイデア勝利の好企画でした。藤間師匠と山形舞子の皆さん、それはもうぱっと夢のような綺麗さで、とっても楽しみました。飯森さん、山形交響楽団の皆さん、そして木島由美子さん、すてきな音楽を、ありがとう!

(*):「うにの五線ノートから」~「やまがた舞子」カテゴリー
(*2):こちらは山形新聞の記事~動画もあります
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