電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高田郁『美雪晴れ~みをつくし料理帖(9)』を読む

2014年03月04日 06時04分55秒 | 読書
角川のハルキ文庫の人気シリーズ「みをつくし料理帖」の新刊で、高田郁著『美雪晴れ』を読みました。このシリーズを第1巻からおもしろく読んで第9巻。佳境に入っております。

第1話:「神帰月~味わい焼き蒲鉾」。前巻で、超一流の料亭「一柳」の旦那の柳吾から求婚されているご寮さんこと芳は、まだ返事をしていませんでした。その理由は、息子の佐兵衛夫婦がどう受け止めるか、だったのでしょう。親子の対面も、息子の命を救った嫁の深い事情も、互いに苦労を分かり合うことができました。柳吾のプレゼント攻勢も、大粒の珊瑚の一つ玉と、ハートの真ん中に的中した模様です。あとは、芳の後釜をどうするか、澪の蒲鉾つくりの課題がどうなるかですが、前者は一柳が、後の課題は坂村堂の知識と源斎先生の観察力と記憶力が助けになりました。

第2話:表題作「美雪晴れ~立春大吉もち」。芳が柳吾と結ばれる前に、澪と芳は大晦日の一柳に招かれます。一柳ならではの様々な技術と器の見事さに驚きますが、末は一柳にという柳吾の誘いを澪は謝絶。あさひ太夫に執心の摂津屋助五郎は、野江の悲劇を調べて澪の前に現れ、若い女料理人の悲願の中身を知ります。

第3話:「華燭~宝づくし」。芳が去り、澪が抜けた後につる家を支える助っ人として柳吾が推薦したのは、お臼と政吉の夫婦でした。芳のために、つる家でも一柳でも祝いの席が設けられます。それぞれに料理を工夫する澪ですが、ここでは芳の息子の佐兵衛が料理の道に戻るかもしれないという可能性がしめされます。むむ、それは多分、やがて来る登龍楼との対決にとって重要な布石となるのでは。華燭の灯の影に、そんな将来図が浮かぶようです。

第4話:「ひと筋の道~昔ながら」。芳は一柳で名女将と認められるようになりますが、伊勢屋は火事の責任を取って所払いになり、美緒は生まれた赤子のために強く生きる決意のようです。吉原で鼈甲珠を売ろうと澪も試みますが、なにせ店がない。そこで知恵を授けてくれたのは、摂津屋でした。たしかに、楼に上がり高い料理を食べるのもよいが、うららかな春陽にファストフードを手にしてそぞろ歩きをするのも楽しいはず。料理人としての道に悩む澪に、道は一つだと教えてくれたのは、源斎先生でした。この人、地味ですが実に良い役回りですね~。

どうやら、物語の舞台は大きく転換しそうです。ますます楽しみなシリーズになってきました。



ところで、蒲鉾といえば、当方は仙台の笹蒲鉾が実は大好物。あれを軽く焼いて、わさび醤油でいただくのは、シンプルですが実に美味しい。お酒の味も引き立つようです。

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