電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第239回定期演奏会でハイドン「太鼓連打」とシューベルト「ザ・グレイト」を聴く

2014年09月01日 06時04分21秒 | -オーケストラ
桃の収穫作業はすでに終了し、果樹園の草刈り作業に精を出した日曜の午後、よく働いたご褒美に、演奏会に出かけました。
8月には二回目のオーケストラ演奏会となる山形交響楽団第239回定期演奏会は、鈴木秀美さんの指揮で、ハイドンの交響曲第103番「太鼓連打」とシューベルトの交響曲第8番「ザ・グレイト」です。



恒例の指揮者プレ・コンサート・トークでは、鈴木秀美さんが登場、ハイドンをプログラムに入れるとお客さんが集まらないのは、日本だけの現象ではなく、ヨーロッパでも同じだそうです。ロンドンの一般大衆のために書かれた交響曲は、当時、大歓迎されたそうな。ハイドンの来英が遅れたとき、オックスフォードでは暴動が起こったのだそうで、当時の大衆の教養が格別高かったわけではなく、作曲の報酬がハイドンはモーツァルトの六倍だったといいますから、ハイドンの人気のほどがうかがえます。
今回の交響曲第103番の愛称「太鼓連打」、英語で "Drum Roll" は、作曲者自身がつけたのではなく聴衆が付けた愛称で、一連のロンドンの演奏会では、「ザロモンセット」のどの曲でも緩徐楽章がアンコールに要求されたそうです。今回の103番とシューベルトの8番にも、ふと歌曲が聞こえてくるような味わいがあるとのことでした。

さて、ハイドンの交響曲第103番、変ホ長調「太鼓連打」、楽器編成は次のとおり。
ステージ左から、第1ヴァイオリン(8)、ヴィオラ(5)、チェロ(5)、右端に第2ヴァイオリン(7)、その右手奥にコントラバス(3)という対向配置の弦楽セクションです。正面奥には。フルート(2)とオーボエ(2)が並び、その奥にクラリネット(2)とファゴット(2)の木管楽器が位置します。その左右には、左側にホルン(2)、右側にトランペット(2)といずれもナチュラルタイプの金管楽器が配置され、正面最奥部にバロック・ティンパニが二台、デンと構えます。コンサートマスター席に座るのは、楽団のお姉さん、犬伏亜里さんです。今回の「太鼓連打」では、けっこう長いソロがありますので、大注目です。

第1楽章:アダージョ~アレグロ・コン・スピリト~アダージョ~テンポプリモ。タイトル通り、ティンパニの連打で始まります。今回は、バロック・ティンパニを使っていますので、おどろおどろしい始まりではなくて、いかにもこれから登場する人に華を持たせ、期待を持たせるような性格のものと言ってよいでしょう。アレグロの主題が提示されると雰囲気はがらりと変わり、これらが展開され、再びティンパニのロールと低音の序奏部が再現されると、アレグロのコーダで結尾となります。
第2楽章:アンダンテ~ピウ・トスト・アレグレット。切れの良いリズムで進みます。調が違うからでしょうか、トランペットは赤に持ち替え。途中のコンサートマスターによるヴァイオリン・ソロも、軽やかで澄んだ音で、ハイドンらしいチャーミングな清潔感があります。それが一転して合奏に転じたときのダイナミックな力感! ティンパニも遠慮せずに叩いている感じで、平下和生さん大活躍! 力強い終結です。
第3楽章:メヌエット~トリオ。いかにも大広間で皆が踊っていそうな、軽やかなメヌエット。山響の弦楽セクションの柔軟さ、透明感を感じます。また、クラリネットの音色がよく似合う音楽ですね~。
第4楽章:フィナーレ、アレグロ・コン・スピリート。ほぼ休みなしに、すぐにホルンによるフィナーレの導入が始まります。緊張感が持続され、生き生きと展開される間に、しだいに高揚感へと変わっていきます。棒なしで指揮する鈴木秀美さんのハイドンは毎回(*1~*2)素晴らしいのですが、今回もまた、活力と生命感にあふれた素晴らしい演奏でした。

ここで、15分の休憩です。ホワイエでは、飲み物を求める人の長い列ができており、いつもの様子とは違いました。コーヒーでも飲もうかと並んだのですが、時間切れになりそうでしたので、急遽オレンジジュースに変更、ごくごくと飲んであわてて席に戻り、なんとかすべりこんで間に合いました(^o^;)>poripori

後半は、シューベルトの「ザ・グレイト」。休憩の間に、楽器配置が若干変わります。弦楽セクションのうち、対向配置の第1・第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロは変わりませんが、コントラバスが後方左手に移動し、正面奥にフルート(2)とオーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)とファゴット(2)と木管楽器が並び、左にホルン(2)、右にトランペット(2)、正面最奥部のコントラバスの右にトロンボーン(3)、うち一本はバス・トロンボーンにしては小ぶりで、でも少し大きめの楽器と見ましたが、さてどうでしょう。バロック・ティンパニはチェロの右手後方に。

第1楽章:アンダンテ~アレグロ・マ・ノン・トロッポ。指揮の鈴木秀美さん、ここでは指揮棒を用いて指揮をします。二本のホルンが、シューベルトの音楽を導き、活力ある力強い開始です。テンポはやや速めなのでしょうか、でも速すぎることはありません。木管も全体に埋もれることなく、リズミカルに音楽を支え、ナチュラルタイプの金管楽器も、ここぞというときにはバリバリ存在をアピールします。
第2楽章:アンダンテ・コン・モート。リズミカルな弦の刻みにのせて、オーボエにクラリネットが加わるあたり、いいなあ。指揮者も、この楽章は棒なしです。ティンパニは切れの良いリズムを聴かせ、ホルンが憧れを吹き、ダイナミクスの対照も明瞭に、前進する音楽です。
第3楽章:スケルツォ、アレグロ・ヴィヴァーチェ。鈴木秀美さんが再び指揮棒を取り、はずむようなリズムでスケルツォ楽章が始まります。トランペットは青で。後半、ホルンの後に曲想が変わりますが、各部分の和ではなくて、オーケストラは全体として音楽を作っているのだなあとあらためて感じます。再び明るい曲想に転じて、輝かしい印象です。
第4楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ。鈴木秀美さんの指揮棒のもと、見事な爆発でフィナーレが始まります。速めのテンポで、力感にあふれ、アンサンブルは快活で生命力を感じさせるものです。そして、これでもか、これでもかと畳み掛けるような面も見せながら、再現部を経て最後のフィナーレへ。演奏する側も大変そうなこの前進力、推進力は、歌曲王シューベルトの意外な一面、パワフルな活力と生命力を見せてくれます。

客席の聴衆からは圧倒的な拍手で、アンコールが演奏されました。曲は、シューベルトの「ロザムンデ」間奏曲。ティーリリラーラ、ティラリリラーラ、弦が本当に美しい。柔軟で、透明で。木管の音色も素晴らしい。金管の皆さんは今回のアンコールはお休みでしたが、きっとほっとされていたことでしょう。



終演後のファン交流会では、山響のメンバーがしだいに自分の語法に慣れてきているので、やりやすいと語っていました。こんどは庄内の響ホールで、ヨハン・シュトラウスを振る予定だとのこと。それは面白そうですね~(^o^)/



ところで、現代では、マーラーだとかブルックナーだとか、一時間を超えるような大曲も珍しくなくなっていますが、当時としてはきっと破天荒な長さだったのでしょう。ウィーン楽友協会がシューベルトの交響曲を「演奏不可能」として拒否したのは、当時としてはしかたがなかったのかもしれません。今ならば、シューベルトの名曲を拒否した不明を恥じなければいけないわけですが、当時としては「演奏が大変だからやめておこう」となったのかもしれず。なかなか難しいものです。

(*1):鈴木秀美指揮の山響第214回定期でボッケリーニ、シューベルト、ハイドンを聴く~「電網郊外散歩道」2011年7月
(*2):山形交響楽団第228回定期演奏会でハイドン、ベートーヴェンを聴く~「電網郊外散歩道」2013年4月


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