電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高田郁『天の梯~みをつくし料理帖(10)』を読む

2014年09月06日 06時03分34秒 | 読書
角川ハルキ文庫の人気シリーズ、高田郁『みをつくし料理帖』シリーズの最終巻、『天の梯』を読みました。幼なじみの野江が運命の転変で吉原のあさひ太夫となり、その身請けの費用が四千両だと言います。澪はなんとか野江を身請けしたいのですが、算段がつかないままに第10巻まで引っ張ってきたシリーズも、ついに完結となりました。

第1話:「結び草~葛尽し」。澪と名前が同じ読みの伊勢屋の美緒を、葛尽しの料理で励ます話です。源斎先生の健康不安は、どうやら澪が考えてあげなければ、どうにもならないようですね(^o^)/

第2話:「張出大関~親父泣かせ」。吉原に鼈甲珠を高値で納めながら、貸家を借りて始めた商いが、鼈甲珠の床を利用した粕漬け作りでした。もう一つ、お城の徒組の侍たちから、一月の間、毎日10個の弁当をまとめて注文を受けることになります。徒組は、御膳奉行の詰所も近くにあるとのことで、澪は少しだけ胸が痛みます。一方、澪の料理の才能に自信を失いかけた政吉の得意料理は、見た目は悪いが味の良さは驚嘆すべきものでした。おかげで「つる家」は大繁盛ですが、お城で評判の徒組の弁当を求めて、源斎先生の母親が訪ねて来ます。ところが、酢の物を食べた途端に、母堂は倒れてしまいます。

第3話:「明日香風~心許り」。料亭「一柳」に忘れ物があり、自身番に届けたら、酪の密造の容疑で一柳の旦那の柳吾が番屋に連行されてしまいます。源斎先生に教えてもらった情報をもとに澪が推測した登龍楼の采女宗馬との関わりは、零落した富三が告白した文により裏付けられますが、それは芳を佐兵衛と柳吾との板ばさみに追いやることでした。

第4話:「天の梯~恋し栗おこし」。物語の最終の結末は、伏せておいた方が良かろうと思い、省略いたしますが、なんとも心憎い、粋な解決でした。物語の終わりに、たいそう穏やかな心持ちになりました、とだけ書いておきましょう(^o^)/
おかげで、たいそうおもしろく読みました。



物語の筋立てとは別に、料理の方向性の違いに興味を持ちました。美食を追求するという方向や、安く早く簡単というお手軽さの追求の方向のほかに、「食は人の天なり」という言葉に表されるような、健康の元になる方向性もある。なるほど、です。

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