電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

諸田玲子『幽霊の涙~お鳥見女房(6)』を読む

2015年11月13日 06時01分06秒 | 読書
新潮社刊の単行本で、諸田玲子著『幽霊の涙』を読みました。だいぶ前に文庫本でおもしろく読んだ、矢島家の出来杉な女房・珠世さん(^o^)を主人公とする「お鳥見女房」シリーズの第6巻。2011年9月に初版が刊行されているようです。お鳥見役というのは、鷹狩場の管理と将軍などが鷹狩をする際の準備にあたるというのが表のお役目ですが、実は旗本や大名の内情を探る密偵の役目も持っているのだそうです。今回は、鷹姫を嫁にもらって姑となった珠世さんはじめ、家族の皆が長男の久太郎の諜報任務を心配する話です。

第1話:「幽霊の涙」
第2話:「春いちばん」
第3話:「ボタモチと恋」
第4話:「鷹は知っている」
第5話:「福寿草」
第6話:「白暁」
第7話:「海辺の朝」

第1話:「幽霊の涙」。珠世の父・久右衛門の初盆を前に、背格好も良く似た男が幽霊のように周辺で目撃されます。それは、久右衛門の若き日の朋輩、安木市兵衛でした。安木は矢島家で三日間居候し、初盆を過ごします。一方で、長男の久太郎は、厄介な任務を命じられます。

第2話:「春いちばん」。老中首座をめぐる青山下野守と阿部伊勢守の不和を背景に、密偵の任務を命じられた久太郎は、相模へ出立します。伊勢守の下屋敷の火事で、なにやらいわくありげな娘を保護したので預かってほしいと、源太郎がやって来ます。波智というその娘は、武家出身の立ち居振る舞いでしたが、どうやら悲劇的な最期を遂げたらしい。

第3話:「ボタモチと恋」。源太夫の娘・里と工藤三十郎の縁談がまとまるまでのてんやわんやのお話。末尾に、相模国で久太郎が危難に遭遇する場面がさりげなく描かれます。

第4話:「鷹は知っている」。大名家の鷹が逃げた事件で、夫の伴之助が責任を取ることになりますが、どうやら、生意気な若者にお灸をすえた上司の、温情あるはからいのおかげで、なんとか元通りになったようです。

第5話:「福寿草」。相模国で、信頼していた道案内人の治助にだまされて、崖から転落した久太郎は、幸運にも漁師に救われていました。孫娘の波矢から思いを寄せられても、妻の恵以がおり、密偵の任務を放棄することはできません。一方、江戸では妻の恵以が今にも捜索に出ようかと心が逸るばかりで、そんな混乱の中での少女の危機(^o^)/

第6話:「白暁」。源太夫の次男・源之助が相模国の地図を写していたと知った珠世さんは、久太郎の無事を祈ります。一方で、源之助が自分を探していることを知った久太郎は、治助によって源之助も消されてしまうと恐れます。恵以もまた辰吉親分とともに相模国に向かっていました。

第7話:「海辺の朝」。源之助の危機と久太郎の帰還、そしてその後日談です。悲劇的な結末は決して後味の良いものではありませんが、物語は主人公一家の「小さな幸せ」だけを描いて終わるものではありませんでした。



やっぱり出来杉とか都合良杉とかの杉林がチラチラ見える面はありますが、なかなかおもしろく読みました。いつの間にかお姑さんになり、孫も生まれてくると、さて作者は珠世さん夫婦の老いをどのように描いていくのだろうと、興味は外野席視点からも盛り上がります(^o^)/

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