電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

中島京子『かたづの!』を読む

2015年11月27日 06時04分49秒 | 読書
2014年に集英社から刊行された単行本で、中島京子著『かたづの!』を読みました。「かたづの」というのは何なのか、漢字をあててみると、どうやら「片角」らしい。一角獣ならぬ一本角の羚羊(カモシカ)が物語の狂言回しの役割を担います。羚羊仲間よりも人間に親しみを感じ、死後に骨になってからも主人公に霊力で肩入れするという想定からして、どこかファンタジーぽい導入部ですが、この主人公というのがなんともすごい運命で、女大名というか、女性領主になってしまいます。

奥州南部藩の孫娘として生まれた祢々は、一つ年下の直政と結婚、二人の娘と息子を得ますが、若くして領主の座についた思慮深い夫・直政は、南部宗家の当主である叔父・利直によって毒殺されてしまいます。さらには、その後を継いだ嫡男の久松もまた、毒殺されてしまうのです。残酷で強大な本家に表面では従いながら、なんとか独立を保とうとするのですが、実在の女領主のお話だけに、すぐに連想しがちな色仕掛けのような場面はありません。むしろ、領地替えや訴訟などにも、諦めずに粘り強く抵抗し交渉しようとする姿勢に、強力なリーダーシップを感じます。なかなかおもしろかった。

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