電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身IX」を読む

2022年08月24日 06時00分22秒 | -香月美夜
TOブックスの単行本新刊で、香月美夜著『本好きの下剋上』第5部「女神の化身IX」を読みました。この巻では、主人公ローゼマインが救出したフェルディナンドとともに逆襲に転じ、エーレンフェストに侵攻していたアーレンスバッハと旧ベルケシュトック軍と対決するゲルラッハの戦いの決着、それにエーレンフェスト防衛戦の様相などが描かれます。

たしかに、戦いの中で騎士が死亡すると魔石が一つコロンと転がるというのは、ローゼマインならずともトラウマになりかねない状況です。勝利して凱旋したとはいうものの、過酷な戦闘が精神面にもたらす影響は大きなものがあるでしょう。ダンケルフェルガーの姫ハンネローレといい弟ヒルデブラントといい、死者に対する祈りがもたらす心の平安は、人間性の重要な要素なのでしょう。

おおすじのところはすでにWEB版を読了済ですので承知してはいますが、単行本化にあたって周辺人物の視点で書き下ろされた内容が興味深いものです。特に「エーレンフェスト防衛戦(後半)」と題して書き下ろされた内容、妹シャルロッテ視点による後方支援の様子、レクル視点による「西門の戦い」の様子、ユーディット視点で「残された者」、フロレンツィア視点で元凶である姑と静かに対決する「白の塔で」と続きますが、とりわけエーレンフェストの領主ジルヴェスター視点による「礎をめぐる戦い」は、ある意味で凄惨な姉と弟の争いの決着の場面で、サスペンスのような緊迫感のある終わり方でした。

ふーむ、このあとはいよいよ中央に移動し、貴族院における外患誘致との対決になるのでしょうか。王族と外国勢とが入り混じり、ローゼマインとフェルディナンドが無双する結末へ向けて、残るはあと3巻か4巻か。次の発売は12月の予定。期待大、面白いです。いよいよハマっております。

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