電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

私の好きな作曲家と作品(7)〜メンデルスゾーン

2022年08月27日 06時00分52秒 | クラシック音楽
古希を迎えた私が若い頃、「メンデルスゾーンが好き」などというと「苦労を知らないお坊っちゃん」で「人生の深淵とは無縁」な作曲家のファン、などと見下されかねないところがありました。おそらくこのような偏見の背後には、第二次大戦の頃にナチスドイツが推進したユダヤ人迫害の一環として、メンデルスゾーンとその作品群を価値の低い作曲家と音楽として排撃した影響が残っていた面があったのでしょう。カラヤン&ベルリン・フィルがメンデルスゾーンの交響曲全集を録音したときの批評の中には、「あのカラヤンがメンデルスゾーンを」という感想がありましたが、言外に「ナチス党員だったカラヤンがユダヤ人のメンデルスゾーンを」という皮相な見方があった(*1)ためだろうと思います。

しかしながら、メンデルスゾーンの音楽には、ときどき「英才教育を受けた裕福な銀行家の息子」にしては意外なほどの暗さや激情が感じられ、その背後には当時のユダヤ人が市民権を獲得するための苦悩があったことなど、たんに裕福な資産家に生まれただけでは乗り越えられない壁があった(*2)ようです。おそらくは、そうした深刻な悩みを抱えながらも、美しさやロマンティックな香気と心情を感じさせるところが、魅力的なのだろうと思います。

そんなメンデルスゾーンの作品の中で、お気に入りのものを挙げるとすれば、

  • 交響曲第4番「イタリア」
  • ヴァイオリン協奏曲
  • チェロ・ソナタ第2番
  • 弦楽四重奏曲第2番
  • ピアノ三重奏曲第1番
  • 無言歌集

あたりでしょうか。オラトリオ「エリア」や交響曲第3番「スコットランド」、あるいは「八重奏曲」などが次点になるかと思いますが、「歌の翼に」などの有名歌曲も魅力的です。



私の小規模な LP/CD等のライブラリから、メンデルスゾーンの録音を探してみました。LPはセルの「イタリア」とコルボの「エリア」(3枚組)です。この快速「イタリア」は実によく聴きました。

CDの時代になってからは、ルッジェーロ・リッチによるヴァイオリン協奏曲など、通勤の音楽としてよく聴きました。最近は室内楽や器楽曲が中心になっていますが、セルの「フィンガルの洞窟」など、どこへまぎれたのか見当たらないものもあり、レーベル別にときどき整理しておく必要がありそうです。とりあえず、YouTube から。

Mendelssohn: The Hebrides (Fingal's Cave), Szell & ClevelandO (1957) メンデルスゾーン フィンガルの洞窟 セル


(*1): 凹み気分にメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」〜「電網郊外散歩道」2021年8月
(*2): メンデルスゾーンの悩みの根源〜「電網郊外散歩道」2010年10月

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