When I Dream

~気侭な戯言日記~

The HERMIT:remix

2009-05-31 23:00:00 | ボクシリーズ(物語風/エッセイ風)
座間の駅に着いたのは12時を少し回った頃だった。駅の高架上にある改札口を出ると迷う事なく東側の階段を下り、googleで見た地図を思い出しながら、ボクは、初めて降りた街並をマーキングするかのようにキョロキョロと見渡して、目的地の鈴鹿神社へ向かってゆっくりと歩いた。地図上では、駅の南側を横切る道路が緩いカーブを描いて北へ伸びていたが、その緩いカーブは小田急線に沿うように縦に走っている道路との交差点から少し先で、少しキツい下り坂になっていた。もしも、昨日のような雨が降っていたら、どんなに気をつけて歩いても、靴はずぶ濡れて、Gパンの裾やくるぶしもびしょ濡れになっていたに違いない。坂道を覆うように茂っていた深い緑を抜けると、白い雲の隙間からこぼれる暖かい日差しをボクは受け、少し身体は熱を帯び始めていた。 . . . 本文を読む
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誕生

2009-03-09 22:30:30 | ボクシリーズ(物語風/エッセイ風)
ブラインドから差し込む白い光に起こされ、クシャクシャの髪のままで顔も洗わずにダイニングのドアをそっと開けると、そこには、システムキッチンの前を溜息まじりで行ったり来たりする母、椅子に座ってTVニュースを見ながら、時折広げた新聞に目を落とす父がいた。それはいつもと何ら変わらない光景ではあった。いつもなら、ビングに入る前から独り言のように言葉を並べ合っている声が聞こえてくるのに、今日は二人ともやけに無口で静かだった。いつもと違わないのは、TVの音と新聞をめくる紙の擦れる音、焼けたパンの香り、トントンとまな板を包丁が叩く音くらいだ。いつもなら、ドアを開けた途端に、言葉を発しないまでも、ダイニングに入ろうとするボクの顔をホンの一瞬でも見るの両親なのに、なぜだか今朝はそれすらなく、二人とも、どこか遠くを眺めて気にしているようでもあって、明らかにいつもとは違っている。 . . . 本文を読む
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セピアの記憶

2008-08-14 23:15:35 | ボクシリーズ(物語風/エッセイ風)
父が運転する車で、母の生家へ、祖父母のお墓参りに向かおうとしていた午後1時過ぎ、身支度をして外に出ると、ボクの頭上の空は、ちょうど東西に線を引いたように、北の空はほとんど真っ黒い雲に覆われ、南の空の半分は、白い雲とグレーの雲が混在して広がっていて、その隙間から青い空が顔を覗かせていた。ボクは、いっそう強くなっていた、夏の暑い日差しから逃れるように後部座席に乗り込んだ。こんな風に、父と母と妹と・・・母の生家へ車で出かけるなんて、何年振りの事だろう。記憶をいくら辿ってみても全く思い出せない。 . . . 本文を読む
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ボクの担当医

2008-06-23 23:50:50 | ボクシリーズ(物語風/エッセイ風)
今から3週間前、ボクは意を決したかのように、地元の駅の改札口を出ると、自宅とはちょうど反対側のあたりに位置する、まだ開業して間もない歯科口腔外科医院へ足を運んだ。仕事帰りのPM20:30の事だった。地元の駅から徒歩で5分ほどの至近距離には、どういうわけか歯医者が4軒もあったが、口腔外科を掲げる歯医者は他にはなく、ボクは、犬歯と奥歯に挟まれて埋没している歯が、虫歯の危機に晒されるか、虫歯になった時にはここへ来てみようと思っていたのだが、こんなに早くに来る事になろうとは全く予期していなかった。っと言うよりも、犬歯が蝕んで来ている事は随分前から目に見えて明らかな事だったのだが、最近流行りの歯磨き粉で歯を磨きさえしていれば、歯医者に行かずとも、なんとかなるかもしれないと思っていた。だがそれは、やはり間違いだった。 . . . 本文を読む
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levie父入院記-remix

2008-01-29 23:00:00 | ボクシリーズ(物語風/エッセイ風)
かつてボクが働いていた大学病院に、前立腺癌の放射線治療で、12月の中旬頃から週3回の放射線の照射に通っていた父が入院したのは、1/27の土曜の午前中だった。 ボクは1度も受診には付き添わなかったが、 時々一緒に行って、DRから父の放射線治療についての流れや経過を聞いているはずの母であったが、入院治療の日取りが決まり、週に3回の放射線の照射が開始されると、母の不安は父が入院して行う・・・“針を刺す”・・・オペと言うか治療についてに向けられたが、ほとんど理解していないに等しかった。さらには、“針を刺す”・・・およそ理解の及ばないところで、母は“どんな検査なんだろう?”“何をされるんだろう?”と、考えても想像出来ない、不毛な想像を必至に膨らませていた。 . . . 本文を読む
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Dream

2007-12-02 23:50:30 | ボクシリーズ(物語風/エッセイ風)
“う~ん・・・”友人はテーブルに両肘を突き、両手の平に顎を乗せ、一点を凝視したまま黙りこんだ。ついさっきまでボクが見ていた明るい笑顔は陰り、時折眉間にしわを寄せ、自問自答するように小首をかしげている。予想もしていなかった久々の友人の反応に、ボクはただ息を潜めてじっと待つしかなかった。こんな反応を見るのは何年振りだろう。 数分の沈黙が流れた後・・・友人は、ボクの様子を伺うようにチラッと目線を上げ、右手でアイス珈琲のグラスを自分に引き寄せた。ストローを登っていく冷たい珈琲で喉を少し潤すと、友人は再びテーブルの中央に目を向けた。そこには、ボクが鉛筆で文字を書いた無地の紙があって、ボクの対面に座っている友人は、ボクが文字を書きはじめた瞬間から、やや眉間にしわを寄せながら、逆さまに書かれつつある文字をじっと眺めていたのだった。 . . . 本文を読む
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“ちょっといいですか”

2007-11-12 23:30:30 | ボクシリーズ(物語風/エッセイ風)
午後13時半頃に新宿に着いたボクは、改札口を通り抜けると、小銭入れから500円玉を取り出して握りしめ、売店に立ち寄って煙草を買った。ボクの隣では、初老の男がスポーツ新聞を広げて読んでいて、“お客さん・・・それ●●円よっ”と売店のおばちゃんの一人にキッと睨まれていたが、男は気にしている様子がなかった。その場から数M程離れた所で、ボクはなんとなく後を振り返って売店を見ると、男は新聞を丸めて元に戻しているところだった。 売店のおばちゃんは、呆れたような顔をしたままで、立ち去る初老の男を見ていた。 . . . 本文を読む
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愛しい人

2007-07-19 23:15:00 | ボクシリーズ(物語風/エッセイ風)
真っすぐに穏やかに・・・ボクを優しく、包み込むように見つめる目がそこにある。ボクも・・・その気持ちに応えるかのように、穏やかな気持ちで真っすぐに見つめ返した。 目の前にいるその人の・・・ポツリポツリと呟くような短い言葉にボクはうなづき・・・そして短い言葉を重ねて添える。テーブルの向かいに佇むように座るその人の、やわらかで静かな物腰と仕草、あどけなくて屈託のない無防備なほどの笑顔に、ボクは、これまでに感じた事のない、焦がれるような・・・刹那くて愛おしい気持ちを抱いていた。穏やかで優しい目に見つめられるだけで、ボクは穏やかで優しい気持ちで満たされていくのを感じていた。 . . . 本文を読む
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新宿まで70分

2007-07-12 23:55:20 | ボクシリーズ(物語風/エッセイ風)
夕べ電気を消して、タオルケットに身体を委ねたのは、確か午前1時20分頃だった。 少し腫れぼったくなったような目は眠りを欲していたというのに、首や腰は少し怠くなって痛み、大の字に投げ出した両足の脹脛は、血流が悪くなってなんとも気持ちが悪く、眠りたいのに眠りを妨げようとしていた。ボクは横になったまま、ゆっくりと右足を天井へ向かって真っすぐに上げ、必至に右手を伸ばしてつま先を掴んだ。固くなった間接、硬くなった筋肉、脹脛も太股の裏側も、ピクピクと震えてスジを伸ばそうとするボクに抵抗する。 なんとか20秒ほど耐えて、今度は左足を伸ばして上げて、左手でつま先を掴んだ。 それを数回繰り返すと、足腰の怠さは大幅に軽減してだいぶスッキリした。 再び大の字になったボクは・・・いつの間にか浅い眠りに埋もれていった。 . . . 本文を読む
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髪を切るなら・・・

2007-06-16 23:50:50 | ボクシリーズ(物語風/エッセイ風)
「やっぱり無いかぁ・・・」ボクは小さな声で呟いた。淡い期待を抱いて来てみたものの、これでこの街にある3軒の中古屋は全滅だ。この街にはもう行くあては無い。 ボクは、どうしたものかと考えながら、3軒目の中古屋の入口の方へゆっくりと歩いた。 店の中の照明は蛍光灯ではなくオレンジ色の光で、店の一角に並んでいるお香が、静かで落ち着いた不思議な雰囲気を醸し出していたが、一歩外へ出てみると、街の色々な音が複雑に絡んで耳に届き、夏の陽射しの強い光が、ボクの真上から降り注いで眩しかった。 右の手の平をおもわず額にあて、何の気なしに真上を見上げてみると、雑居ビルの背後は水色の空で、薄い白いすじ雲が一層暑い夏の到来を感じさせる。 . . . 本文を読む
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