眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

硝子のモザイク

2006-05-28 | 
教会に入ると
 ステンドグラスから
  美しい光が
   優しく降り注いだ

   静けさは祈りに必要不可欠なのかも知れない

  何処かのしなびた街の
   安い旅館
    何故か温泉だけが立派だった
     窓の外の切ない風景
    二度と見ることは無いだろう
   或る人と二人ぼっちで旅の途中
  下車したのは君のほうで
 僕はこの汽車から
どうやら降りれそうも無い
 窓硝子は曇っていて
  景色は夢見心地の感触で優しく歪んでいる

    降り場所が分からない

   僕は刹那の記憶を途中下車しようと試みる
  そうして
 煙草の灯に気を使った時間に
いつも取り残される
 残るのは
  記憶の形をした
    窓から眺めた硝子のモザイク

   片鱗は幸せを暗示し
     つかの間の酔いが
      僕がまだ旅の途中だということに
       キズカセル

     高潔に純粋に擦り切れてゆく精神
    旅の途中の
   硝子窓からあの世の楽園が垣間見えた
  瞬間
 僕等は
怒り 泣き 笑い 絶望し
 奇跡を信じ
  現世のこの生に存在す
   滑稽な話かも知れないね

    教えておくれ友よ

     乗った汽車は明らかに町が間違えだった

     だれも乗っちゃいないのさ

    缶ビール片手に

   風景の
  硝子のモザイクに見とれている

   硝子越しに世界が綺麗なのさ


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欠落

2006-05-21 | 
廃墟と化した
 と、誰かが呟く街並みに
  入り口を探す午前二時

 グラスのワインが歪み
  夜景の下で
   今日は一日誰とも会話しなかった事に
    気付く

  いや
 確かに
僕は誰かと話していた筈だ
 ただ
  それが何なのか忘れてしまった
   一時間前か
    一週間前か
   不連続の記憶
  どちらにしても
 こころに残らなかったんだ

 記憶しているのは
  美術館のひんやりとした静けさ
   J・Sバッハばかりを流す
    喫茶店の珈琲の黒
   シャコンヌを聴いていた

  電話は繫がらない
 五度目の発信音を聴いて消した
  自身と他の誰かさん

  我と汝の対話

 後悔は無難だね
  傷口を舐める光景
   絶え間なく僕等は
    世界を吟味した 

  突然
   君が現れて笑ってくれたなら

    それが
   哀しい蔑みでも
  僕はしあわせな気持ちに浸れるのだろうか?

    それが
    渇いた
   哀しい笑いでも

  欠落した午前二時





      
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おはよう

2006-05-19 | 
夜の街はネオンが綺麗だけれど
 やがて朝がやって来る
  凛とした空気
   観察日記の朝顔の
    つたに朝露がまるで綺麗だ

  街が夜だけだと
   そんな気持ちが垣間見える瞬間
    僕らは
   永遠を求め
  終わらない時間を探しあぐねる

疲れ擦り切れ
 僕等は終わらない夢を見ようと
  朝陽の昇らない夜の静けさを愛す
   まるで
    疲れ果てた野良犬の如く
     泥のような眠りを心から望む
      永遠の静けさ
       清潔な眠り

              だけどね

         眠りについたら
         起きなくてはならない

        朝ごはんを食べ
       歯を磨き
      トイレに入って
     それから髭も剃らなくっちゃならない
    
    おきなくっちゃならない
   それはね
  義務なんだ
 生きてっからね

  おはよう

   誰かが云った

    おきなくっちや

     世界は新しい変化を垣間見せ

      朝陽は
       皆に平等に降り注ぐ

        「おはよう」

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サイン

2006-05-15 | 
不思議なサインを
 見落としてはならない
お財布にこっそりしのばせておいた
 お守りを
  失くさないように

  急にやって来る
   瑣末な日常に
    突然舞い降りる
     サイン

 呆れるほど
  ありふれていて
   何処にでもありそうな
    小さなサイン

   雑多な日常に惑わされず
  気付かなければ
 僕等は
たいがいの事柄に無神経すぎるんだ

  途切れていた筈の電話
   笑いに隠れた不穏
    歯の痛みも
   止まない頭痛も

  気負いすぎた情熱も
 頑張りすぎた彼女も
欲張りな道化も
 でしゃばりな僕も

   サイン

  運命のひとひらは
 この様にして構築される
   見落とさないで

   意味を探し続けるよりも
    今宵は
     梅酒でも舐めながら
      在りもしない夢に踊ろう

      取りとめも無い事象は

       早めに
        ダンボールの隅へ



 
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音楽隊

2006-05-14 | 
石畳の夜に
 月明かりに照らされた
  夢の名残が息をしている

 街灯りの街灯は
  まことしやかに
   在りもしない幻想を写実してしまう
    早く列に加わらなければ
     
 白い水仙に
  雫が垂れる
   青い月の灯り
    街灯の仄かさが奇妙に切ない

   音楽隊がやって来る
    そんな噂が人伝えに聴こえ
     僕はあくびをかんで
      夜の街を漂流した

    音楽隊は
     なるべく怪しげで
      あまり演奏が上手くないが良いね
       高価な楽器より
   壊れかけたヴァイオリンと
    太鼓と鈴と
  あるいはバンドネオンなんかがあると良いよね
 道化の青い服装を着て
そうっと月明かりや街灯の青に
 紛れてやって来る
  笛の音がささやかに聴こえてくるんだ
   

   アドルフ・ヒトラーなら確実に
    退廃芸術だなんて烙印を押すだろう


     音楽隊がやって来る
    
       もう

      すぐそこに



   
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ビー玉

2006-05-13 | 
  それは
  まがいものです
  ビー玉のようにキラキラして
  とても
  綺麗だけれど
  それは
  まがいものです

  街が
  哀しく
  とてもうつろいやすいのは
  それが
  まがいものだからです
  ポケットに
  そっとしのばせた
  青い飴玉のように
  それは
  とても純粋です

  では
  真実は
  何処にあるのでしょう
  胸焦がす
  この
  絶望的な郷愁
  それすらも
  真実なのではないのでしょうか?

  助けて
  と云っていた
  昨日の
  闇の
  奇妙な静けさ

  それすらも
  まがいものです
  ビー玉のように
  キラキラしているけれど
  それさえも
  皆 うそつきです

  全てが
  道りすぎるなかで
  たしかなものなんて
  なにもなかった

  ただ 君と
  すごす時間が
  好きだった

  だから
  心配しないで
  君に
  手紙を
  送ります




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陽飛

2006-05-08 | 
君の写真を眺めてるんだ
 真新しい写真
  セピア色の写真も良いけれど
   君のはじめての写真には
    遠く及ばない

  僕は
  君のお母さんを良く知っているよ
  昔は泣き虫でね
  よく僕の後をついてきた
  夕暮れ時
  長く伸びた僕の影に遅れないよう
  一生懸命だったよ

   いつかね
   君が大きくなって
   いろんな話が出来るようになったら
   お話しよう

    ここはそんなに悪い所じゃないさ
    哀しみと優しさが
    微妙な加減で調律されている楽器のようさ
    世界はいい具合に
    調弦がずれてるんだ

  ワインを飲みながら
  詩を書くのがすきなんだ
  へんな叔父さんだね

  よろしくね

  多少世間からずれてるけど
   君に会える日を楽しみにしているよ
    そうしたら
     いつか
      君のおじいちゃんのお話をしてあげようね

    よく来たね

    嬉しいよ

    本当に




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祈り

2006-05-04 | 
不思議だ
 自分の為に祈ることなんて
  本当は無いような気がする

  幾ら気分が悪くたって
   煙草を吹かし
    ちょっとだけ、と
     言い訳しながら
      酒を飲む

    病に伏せる時刻もね

   けれども
  今晩
 母の咳き込みがひどくって
気になってしょうがない

 貴方は大丈夫
  と心配をかけないようにする
   僕は
    何事も無い日々が続くように
     祈るんだ

    マザーテレサの映画を見た
     
     壊れやすい水
      祈りを捧ぐ

      大切な人達が
       今夜
      苦しまないように

      
              祈り

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piano

2006-05-03 | 
真夏の昼下がり
街角の二階の喫茶店は
遠い景色のような静けさで

部屋の中は薄暗く
珈琲の黒の中
瓶のランプの灯がゆらめいている

ふせる長い睫
ガラス細工みたいな唇を
憧れと
恐れの濃い影に染め上げ
ただ黙って みつめている

   一体いつからこうしているのだろう?
   月も日もなかった

少女は
金の縁の黒い表紙を開く様に
不思議な不安を
笑いもせず
淡々と話し
何処かで木々のざわめきが聞こえる
ここは草原だったろうか

この瞬間が
もしも夢ならば
壁の絵の中で
魚の影が動き出したりはしないか
鈴の音色が
深い記憶を呼び覚ましはしないか

   乾いた視線は
   ふと窓の外をただよい
   ひかえめな音でピアノが流れている




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