眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

外国

2014-03-24 | 
憂える魂は天上の隙間に
 枯葉の寝床で
  明日を予言するだろう
   遠い記憶
    遠い外国の港で
     僕等は自堕落にワインを舐めた
      君の昔はいつまでも苦い味がして
       だけれど少しだけ甘い成分に酔いしれる

       戸惑いながら音を紡ぐ指先で
        かすれそうなノクターンを愛でる
         指先に残る微かな痛みをともない
          グラスのウイスキーを飲み干した
           刹那の享楽
            だがしかし
             それらは必要な条件だったのだ
              港から船が出る
               客船の汽笛が厳かに別れを告げるのだ

               後悔はしないのかい?

              黒猫のハルシオンが告げる

             あんたの希望なんて
            彼等の絶望の百万分の一さ
           
          天上界にて
         憂鬱な天使があくびをかみころす

        愚かだね
       君らのお話なんて

      そう
     僕たちの物語
    世界の様相は
   けっして相容れぬ不満と不穏と欺瞞に満ちた
 おいでよ
此処は綺麗だよ

 君のサッカリンに似た甘い言葉が耳朶をくすぐる
  全て夢の類なんだよ
   全てが
    あの窓の向こう
     緑色の草原が見えたら
      風の音を聴いてご覧
       あんたが忘れた物語の始まりと終わりが陳列されている
        お伽の国のお伽の戯言
         群れた群衆から逃げ出した
          青いビー玉は左のポケットの中
           もう
            遠い外国の話なんだよ

             君が去った世界を切望し
              最果ての国で待つという
               全てが虚構の産物なら
                祈りの言葉はゴシップだね
                 大衆紙の一面を飾る

                 明日を予言するだろう
                我儘な奇跡に於いて
               境界線は白い糸で分別され
              やがて狂った時計の針が
             眠れないだけ刻まれる

            上手く眠れない君と僕は
           準備に手惑い
          あの箱舟に乗り遅れたのだ
         
         雨だ

        眠れない夜

       バーボンで飲み干した

      自堕落な希望と絶望の余韻は

     一人きりのパントマイムの道化師

    赤い鼻が

   可笑しいね

  くすくす

 哀しすぎるね


くすくす


 小人達が笑い始めた頃合

  やっと酔いつぶれ
  
   眠るのだ

    くすくす

     永遠の夜の子供達

     
      遠い外国の港町で



       毛布に包まり

  
        ただ夢を見た


     


















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映画館

2014-03-17 | 
壁に描かれた落書きを愛した
 憂鬱な長すぎる前髪と
  寒さをやり過ごそうとして煙草を口にした深夜零時
   在りもしない音を模索して
    本当に必要だったのは君の話し声だった事に気がついた
     優しく切ない声が哀しい歌を歌う
      もう君の声をすっかり忘れてしまったのに
       失ったことに気付けない
        いつまでも僕は僕だった
         
        地下室に向かう螺旋階段を降りて
         受付のショートカットの女性に手で合図して
          僕は重い扉を開けた
           試写会が行なわれるのだ
            手近な座席に座り
             目を閉じてじっとしていた
              様々な人生と物語が
               今にも消え入りそうな意識の隙間に羅列した
                僕は早く消え去りたかった
                 あの街から逃げ出した寒い冬の夜のように
                  数名の客の足音がした以外は
                   静寂が館内を浸した

                   こぽこぽこぽ

                  理科の実験室で試験管にビーカーから
                 液体を注ぐ音がした
                不可思議な匂いが遠い記憶を表出させた
               目を開けると
              スクリーンに白黒フイルムが映写された
             まるで
            まるで美化された懐かしい記憶の様に
           僕等がやり過ごそうとした現実の界隈
          あの世界の境界線上に於いて
         物語は始まるのだ

        ご覧これが世界さ

       青い色のピエロが皮肉に微笑む
      堕落し嘲笑された音楽
     灰色の遊園地で観覧車は止まったままだ
    色の落ちた木馬の瞳が黙示録的に何かを予感させた
   僕は動けずにベンチに座りワインを煽った
  誰かが訪れるのをただひたすら待ち続けた
 それが誰の事なのかすら忘れてしまったのに
まるで古いアルバムを見ている様だ
 確かに僕等は其処にいた
  けれども古い写真に写る仲間が
   誰だったのかはけっして想い出せない
   
    
    どうして此処に戻ってきたの?

     振り向くと緑色のセーターを着た少女が立っていた
      
      今日はひどく寒い夜だったから。
       ただそれだけだよ。

        そう答えた僕に少女は静かにうなずいた

         僕等はベンチに座り
          一緒にワインを飲み煙草に灯を点けた
           灰色の世界に灰色の記憶の層が積み上げられた
            世界
             と誰かが云った

             あなたはどうして街から逃げ出したの?
              古い友人達に挨拶も告げず。

              そうだね。
               正直今でもよく分からないんだ。
                でもね時々想い出すんだ。
                 絶望的な郷愁でね。

                 少女はじっと僕の目を覗き込んでいる
                  
                  ただ、
                   今夜がひどく寒い夜だからなのね。

                   壁の落書きを憶えている?

                  僕は考え込んでから答えた

                 もうすっかり忘れてしまったんだ。
                哀しいけれど壁の文字を想い出せないんだ。

               少女は憐れむように僕に告げた

              あなたの音が其処にあったの。
             あなたが忘れ去ってしまった言葉。



           少女がそうっとささやいた




         「美わしき悦びに満てる真の魂は穢れることなし」



        ウイリアム・ブレイクの詩だ



      
      寒い夜





    地下室の映画館の暗闇で





  僕はそっと泣いた





もう戻らない者を想って





















   
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