眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

マーチ

2012-06-17 | 
壊れた玩具たちのマーチが始まる
 僕等は息を呑み
  調子の外れた笛や
   奇妙なリズムの打楽器隊の音を模索する
    青い月の光の下で
     壊れた玩具のパレードを想う
      
      かしゃん
       かしゃん

       とん とん

        ちりん


        とん とん

      
       いびつな者達の奏でる音楽達は
      いつだって不完全で未完成だ
     まるで何時かの少年少女の時間の如く
    僕等はいつだって壊れた玩具だった
   諦めや挫折や混沌とした不安や
  そういった感情のおもむくままに打楽器を叩いた
 呼吸のそろわないスタッカートで息を忘れた
弦楽器のアルコは 
 ぎしぎしした雑音を膨らませ
  肥大した想像力で
   この世界から零れ落ちたのだ
    壊れた僕たちのマーチ
     世界の終わりの演奏会

       
      かしゃん
       かしゃん

       とん とん

        ちりん


        とん とん


      不安定なな旋律だった
       腐りかけた果実の芳香の様に
        音が不完全にリピートする
         永遠の未完
          永遠の夜
           
         ね

          それでも僕等は生きている


          ただその事だけを伝えたい
           壊れた玩具たちのマーチ


         ね

          それが未完で永遠の不完全であっても

           歌い続けてゆこう


           あの祭壇の贖罪と共に


           零れ落ちた


           記憶を従えて



        かしゃん
         かしゃん

         とん とん

          ちりん


          とん とん
          

        

        壊れた夜の

       

        壊れた音楽隊


















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月の歌

2012-06-14 | 音楽
君はいつもお酒を飲んでいるのね?

 髪の長い女性が面白そうに呟いた
  僕は黙ってジャクダニエルを飲み干した
   それから煙草に火を点け
    紫の煙を胸いっぱいに吸い込んだ
     それから彼女の方を向いて
      次に発せられる言葉を待った
       退屈さを紛らわす不穏
        言葉に装飾音を探し
         其の本質を
          蛇行しつつ探し当てる

          君の云いたい事は分かるような気がする
           でも尋ねたいの。
            ねえ、私は何処に行けばいいの?

            僕は酒を喉に放り込み
             彼女の髪の長さを見つめこう云った

             貴女は勘違いしている
              僕はあいにく答えを持ち合わせてはいない
               連中が言う
                僕の予言なんて当たった為しがないんです
                 僕が出来る事は
                  ただお酒を飲み
                   音楽をすることだけです

                   髪の長い女性は不服そうに鼻を鳴らした
                    でもあなたの言葉は面白いわ。
                     君はいつもお酒を飲んでいるのね?
                      どうして?

                      素面で未来を予言するより
                     酔っ払って冗談を云いたいだけなんです
                    あたらしい煙草に灯を点けて
                   僕は彼女にバーボンを勧めた

                  ほら、時間が止まって見えるでしょう?
                 まどろみの遮光カーテンは
                過去も現実も曖昧にさせる
               まるでカフェオレの色合いの様に

              彼女は少しだけ酔いに身を任せた

             僕はピアノのレコードを
            大切に再生機にのせ
           音楽を流した
          静かで切なく綺麗で壊れやすい世界

         この静けさが指し示す方角が
        貴女の歩む道かも知れない
       貴女の前から昔馴染みの誰かが消える
      それは貴女にはどうしようもない事なんだ
     ただ出来る事は
    憶えておくこと

   憶えておくこと?
  それだけでいいいの?

 記憶はやがて磨耗され消えてゆく
その記憶たちを井戸の底に封印すること
 想いの外、厄介な作業です
  ある人は詩に
   ある人は音楽に希望を託す
    ジェリー・ビーンズの空き瓶にそれを詰めて
     知覚の海岸から流すんです
      世界は丸い球体だから
       きっと貴女の言葉は誰かに近ずくはずです
        
        僕らが出来る事は

         たぶん歌い続ける事なんだと想うんです

          夜を越えて

           あの懐かしい清潔な青い月の下で

            世界を愛したように


             ポケットのビー玉をどうか失くさない様に

            
              それは鍵なんだ

             
               知覚の扉をひらく


                鍵なんだ



                ね


                歌い続けて



               貴女が貴女を忘れないように


                 歌っていて


                 青い月の歌



                 清潔な夜の月の歌































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2012-06-11 | 








    凛とした青い空の魂

     ただ安らかに

      永遠を


     凛とした青い空の魂


     ただ安らかに

      久遠を


      そう願っている


      そう祈っている


      たったそれだけだったとしても


     

       祈らずにはいられないんだ





















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複葉機

2012-06-07 | 
僕らを乗せた古びた複葉機が、派手に森の木々に突っ込んだ。
一瞬、訳がわからなくなったのは飲んでいたワインのせいだけじゃあないのは明白だった。ひどい二日酔いのように目がまわった。
  
   だから。
    だから熱気球にすべきだったのよ。

少女がヘルメットを投げ捨てながら僕をにらみつける。僕らの乗った複葉機は、翼の右半分が折れていた。だって、いまどきこんなプロペラ機に乗れる機会なんて滅多にある訳じゃないし。だいいち、君だって、飛んでるときは喜んでいたじゃないか。
   
   飛んでるときはね
    堕ちるなんて考えもしなかったわよ

パイロットが操縦席から這い出してきて、折れた機体を呆然と眺めて悲嘆に暮れている。嬢ちゃん、飛んでるものはいつか堕ちるようにできてるのさ。彼が呟くと、彼女の怒りは沸点に達した。

   うるさい。こんなオンボロ。

少女はプロペラを蹴飛ばし、ついでに一言多かったパイロットの頭を思いっきり殴った。森の鳥がびっくりして青い空へ群れをなして飛んでゆく。
僕とパイロットは、これ以上少女の逆鱗に触れないように、そっと煙草に灯を点けた。飛ぶものは堕ちることが自然なんだ、パイロットはまだぶつぶつ云っている。
少女はナップザックからワインの入った水筒を取り出し、まだ折れていない左の翼の上でごくごく飲み干した。気球だったら、ゆっくり着陸したはずよ。
発動機から出ていた白い煙が空に昇っていった。

今日の朝、複葉機が広い草原に降り立った。僕らは興味本位でそれを覗きに急いだ。乗るかい?とパイロットが尋ねた。僕と彼が値段の交渉をしている間、少女はうさんくさ気にこの古い機体を値踏みしていた。本当に飛ぶの、これ?
  当たり前じゃないか、昨日も隣町で三人乗せて飛んだばかりさ。
三人。微妙な人数に彼女は眉をひそめた。
結局、僕らは値切りに値切って、二人の一か月分のこずかいをはたいて、この古びたプロペラ機に乗り込むことに決めた。天気も良かったし、僕らはワインを飲んでいたので少しばかり刺激を求めていた。プロペラ機。青い空にこれほど似合う乗り物なんて、そうざらにあるもんじゃない。僕と少女の意見が一致し、機体が空に向かって飛び立った五分後。僕らはふらふらと森のなかに突っ込んだ。

  どうするのよ。これから。

   どうするって、歩いて帰るしか・・・。

    違うわよ。このおんぼろ飛行機の事よ。
     可愛そうでしょう、一人だけ残して帰るなんて。

とりあえず、僕らは途方に暮れて煙草を吸った。
さて。どうするべきなんだろう?

  パイロットが僕らを諭すように呟く。
   
   飛ぶものはいつか何処かに堕ちる

    少女と僕は黙ってその言葉を聴いていた。

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手紙と切りそろえられた前髪

2012-06-04 | 
少女が口笛を吹いて僕は目をつむった
 風が緑の草原を走り
  僕らは黙ってアルコールを摂取した
   僕は古い友人の面影を想い
    何度もおどけて乾杯の挨拶をする
     長すぎる前髪を悪戯して
      遥か彼方の約束の地平を望んだ

      拒まれた優しさ
       虚像を捏造する工場の煙突の様に  
        想いは地上を徘徊する
         日常の愚鈍さに呆れ
          僕らは酩酊の時間を優雅にすごす
           コークにマイヤーズラムを入れ
            見慣れない評論家を無視し
             ただ永遠を想った

              ただ永遠を想った

              ね、
               歌って。

               少女が口笛を吹いた
                僕はその哀しいメロディーに詩をのせた
                 愚かしい正義の微笑
                  愛すべき地団太の孤独
                   僕らはふしだらなこの世界を愛した
                    何万回も愛した
                     死んで生まれ変わり
                      カルマの螺旋に乗り
                       君と僕は出会ったのだ

                       決して偶然等ではなく

                       近隣の郵便局から
                      一通の手紙が届いた
                     差出人は不明だったが
                    その字体の書き方で
                   すぐに君だと分かった
                  古い友人
                 いつか離れ離れで暮らす日常



            「やあ。元気かい?
           僕は元気にやっている。君もそうだと嬉しい。
          長い時間が経ったね。
         今でも僕は僕を許せないんだ。
        たぶん君と同じ様にね。
       ところで、
      ところでそっちの世界はどうだい?
     相も変わらず愚鈍な輩がトランプを切っているのかい。
    でも君は安心していいよ。
   何故なら
  ジョーカーのカードは僕がこっちに持ってきたからね。
 奴等は永遠に上がれない。
永遠にゲームは続くのさ。」

  くすくす微笑む君の表情を想った
   だとしたら。
    だとしたら僕らのゲームも永遠に終わらないんだね。
     くすくす、と君が微笑む
      僕らは狭い部屋で
       ハルシオンの錠剤をジャクダニエルで飲み干した
        すぐに酩酊した意識の範疇で
         世界の尺度を分析した
          君は物理と天体に詳しかったから
           この世界について永遠に喋り続けた
            僕は黙って君の声を聴いた
             どんな音楽よりも優美な音色を

              君が去った寒い冬が行き去り
               何度も暑い夏の幻想が訪れた
                何度も何度も夏が訪れた
                 僕の時間は永遠に真夏の炎天下の下なのだ

                 僕らはアルコールを飲み続けた
                  現実界隈の人込みに塗れ
                   呆れたゴシップと
                    現実特有の気だるい疲れの中

                    緑の草原
                   少女が語りかける
  
                  あなた
     
                 前髪が長すぎるのよ

               そんなんじゃ前が見えないわ

             前?

            どうして前を見なくちゃならないんだい?

           少女がくすくすと微笑んだ

          約束なのよ。この世界にあなたがいる為の。

         目をつむってお酒でも飲んでて。
        すぐに終わるから。

       僕が目をつむると
      はさみで前髪が切り落とされてゆく

     君さ、
    何で髪切ってんのさ?

   なんだっていいじゃない、切れ味が問題なのよ。

  ちょきちょき

 終わったわ。ジ・エンデ。

  目を開けると青すぎる青さの空が見えた

   眩しすぎる日差し

    駄目だよ、僕にはこの世界は眩しすぎる。

     また前髪を伸ばすことにするよ。

      そうしたら、

       また前髪を切ってあげるわ。

        簡単なことよ。

         少女が優しく語りかける

          くすくす

           緑の草原の中

            少女が口笛を吹く

             哀しき口笛

              僕は酔いのまどろみに

               永遠のまどろみに





 
               手紙と切りそろえられた前髪

















             
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