眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

大切な詩

2016-07-29 | 
おやすみ罪深き者よ
 今夜も見捨ててしまった
  電話線は遮断された
   青い月に泣きたくなる

  奇妙に晴れた正午過ぎだった
   運動場で白線を引きながら空を見上げた
    雨が降り出したのだ
     太陽が陽射しを贈り
      細かい雨粒が僕らの存在に降り注ぐ
       濡れた前髪をかき上げながら
        白線を流し口笛を吹いた
         「アローン・アゲイン」
           僕らは二人きりで独りぼっちだったのだ
            永遠の昼休み
             木陰で陽射しと雨から逃れ
              サンドウィッチを半分こした
               レタスとハムとたっぷりのケチャップ
                
              それから
             取っておきのビー球を君に見せたんだ
            それらは
           僕の宝物の類だった
          お日さまに透かして光の変化に憧れた
         君は鞄から一冊の詩集を取り出した
        宝物なんだ
       僕には全く分からない外国語が羅列されている
      読めないよ。
     いいかい。今から訳すからね。
    君は真剣な面持ちで呟いた
   まるで神父の様な風情で

 「美わしき悦びに満てる
  真の魂は汚れること無し。」

   なんのことなの?
    いつか分かるさ。いつかね。
     
      君は微笑みながら本を大事そうに鞄の隅に隠した

       君にだけこっそり教えるんだから
        忘れちゃ嫌だよ。
        
       どうして僕にだけ教えたの?

      君は何もかもを見透かした笑いでこう答えたんだ

     それは。
    それは君が星座たちと交信できるからさ。

   僕は急に慌てた
  夜中にこっそり寮を抜け出して星の明かりを頼りに
 はっか煙草を吸っていたことを見つかったからだ

寮監先生には内緒だよ。

 君は可笑しそうに微笑んだ
  内緒にしておくよ。
   約束だよ。
    うん。

   それから真面目な瞳でこう云った
   
    君はこの詩を憶えておいで。
     
     「美わしき悦びに満てる
      真の魂は汚れること無し。」

      星空を眺めることも忘れちゃいけないね。

      
        僕は縁側で青い月を眺めながら缶ビールを飲んでいる
        緩やかな時間が流れて
        いつかの君の言葉が残像となって蘇る
        
        いいかい、大切な詩だよ。
 
        どうか失くしちゃ嫌だよ。

        君の言葉

        星たちと交信する術を失った大人の僕は

        アルコールを飲酒して夜空を見上げるのだ

        青い月




      

   
  
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする