眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

傷口

2009-03-19 | 
傷口にアルコールを染み込ませる深夜
 まるで深海に泳ぐ魚のように
  深く深く意識の深層に沈みこむ
   深く深呼吸をして
    無意識の領域に探査船を解き放つ
     ブリキの太鼓や壊れた自転車
      君の記憶や夢の残渣物
       沈殿した瓦礫の中に真実を模索するのだ
        酸素濃度をオキシメーターで何度も観察しつつ

        惰眠を貪ると
         現実に帰れなくなる
          あながち嘘とは云えない
           だって僕は
            あなたがここにいて欲しい
             眠れぬ夜

             苦しげに呼吸をする
            何も云わず
           ただ沈黙に於いてメセージを発信す
          孤独と絶望の境界線の狭間で
         信じることを放棄した夜もあった
        それでも
       僕は一体何を信じているのだろう?
      虚脱した風景の輪郭を想い出す
     全てが夢になるまでには
    長くて短い時間が必要だったのだ
   もう今はいない君へ
  君の足音すら忘れ忘却にひれ伏した
 
 やがてこの長雨も終わりを告げ
春の訪れと共に桜の花が満開するのだろう
 桜の木の下に隠しておいた僕の記憶は
  掘り起こした瞬間途方に暮れる
   ヴァイオリンの音色に乗せて
    僕は古びた場末のスナックにいた
     
     幸せと不幸せをお酒でかき混ぜなさい
      それが此処での決まり事なの
       薄い明かりの中
        誰かの声がした
         苦しみを麻痺させるの
          弛緩した筋肉が硬直した精神を馬鹿にする
           港に船が帰ってくる
            ぽつり ぽつり と
             仄かな明かりを点灯させて

             僕はやはり青い道化だった
            寒い冬に暖炉の前で
           馬鈴薯を口にする
          外は寒いからね
         無意識のなかに眠ろうね
        あの彼方の風景
       彼方にはニライカナイが或る筈だった
      アルカディアが在り
     世界樹ユグドラシルが或る筈だった
    天体望遠鏡で月を観察した
   宇宙は深海の風景によく似ている
  意識を埋没させるにはもってこいだ
 アンモナイトの化石の中で思案する考える人

傷口にアルコールを染み込ませる夜
 沈殿した瓦礫の中に真実を模索するのだ

  眠りなさい

   誰かがそっと呟く
 
    夢をみていなさいね

     痛みを麻痺させて

      そうして

     たまに旅に出るの

    卵の夢を大切に抱えながら







コメント (4)
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もしも

2009-03-02 | 
歌っている最中
 もっぱら別の事を考えていた
  疑心暗鬼の猜疑心の暗闇で
   会いたい
  と願う君に
 トイレで吐きながら
 メロディーを口ずさむ深夜は
誰かの幸せで僕のほんのりとした夢の末路

 揺れ動く夜景が余りに安っぽく
これから飲みに行くという人物のタクシーを
送り届けたのが午前二時の脈絡の無さ
 おどけて見せるのも
あと五分が限界だ
  僕は下らない瑣末な雑事に四苦八苦して
   坂道を転げ落ちた
    まるで昔の様に

   君は旅に出る
   君は精一杯生きた
   君は僕に柔らかな記憶を残す

   それが余りにも美しくて
   トイレの四角い窓から
   三日月に祈った

   どうか心配のありませんように

   僕の日常は奇妙な陳腐さに埋没す
    君の世界を忘れそうになる
     下らない酒がようやく回り始めた頃合
      僕は君の記憶を
       必死になって繋ぎ止める

     忘れそうだ
    忘れないことを
   静けさの中でしか感触のない
  そんな感情も存在するから
 僕は部屋に戻り
意識を混濁させつつ
繋ぎ止めようと努力した

  公園の静謐なざわめき
   建物の裏側で
     隠れて煙草を吸った遠い記憶
      残像が処理される
       お願いだ

     冷たい筈の風の柔らかさが
      秋の気配を予感させて数世紀
       いや
        太古の生き物が草を食む
         ジュラ紀の頃の良かれと思う
          弱肉強食

      生き延びた我々のなんと下卑たこと
     シーラカンスの様に
    静かに深海に身を潜めれば良いものを
   肥大した前頭葉が自我を拡散させ
  まるで目立ちたがり屋の
 調教された猿の立ち回りの如く
僕の人生は

 あの時
  僕は君と旅立つ運命ではなかったのか?
   どうして
    僕はここにいる
     レンズが僕を容赦なく見つけ出す

      もしも


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