眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

映画

2018-09-14 | 
青い月明かりの下
 窓から入り込む街灯に包まれた
  僕は相変わらずウィスキーを舐め
   何時かの光景を想い出しながら空になったグラスに琥珀を注いだ
    グラスはウイスキーに満たされたけれど
     僕の記憶は時間と共に減っていった
      不思議な感覚だった
       彼等彼女らの名前や顔髪型がすっかり想い出せない
        そうして
         いつも誰かの影を探し続けているのだ
          永遠に辿り着けない存在
           古びた扇風機がただ回り続ける
            真夏の深夜三時の日常
             煙草を咥え
              灯を点ける動作だけが15分おきにやけに正確だった

              青い月明かり
               深夜の街角は優しい眠りにつき
                眠れない僕だけが世界に取り残された
                 石畳の坂を上り
                  何かを探して路地裏を徘徊した
                   ポケットの中の青いビー玉だけを握りしめていた
                    やがて公園らしい広場に辿り着いた
                     青い世界の陳列棚
                      僕の存在は摩耗した部品の類そのものだった
                       僕は疲れていたのだ
                        もう昔ほど旅に出る理由も存在しなかった
                         ただあてもなく酒瓶のウイスキーを飲んだ
                          
                         遮光カーテンに於ける暗闇
                          煙草の吸殻   
                           酒の空き瓶
                            僕はどうしようもなく
                             怠惰で自堕落で壊れ物だった

                             風が心地よかった

                            風に吹かれていると
                           なんだか失くした記憶を取り戻せそうだった
                          けれども
                         記憶達はあと一歩のところで手の平から零れ落ちた
                        もう僕は僕自身の名前すら想い出せなかった

                       少し酔いが覚めると
                      僕はアパルトマンに戻り
                     遮光カーテンで窓を覆いワインのボトルを抱えて
                    映画を眺めた
                   真っ暗な部屋で孤独をつまみにワインを飲んだ

                  優しい優しい映画だった
                 ぼんやりとした意識の背景に映像を流し
                失くした記憶を想い涙がぽろぽろ溢れてきた
               暗闇でそれが涙なのか血液なのか判別できなかった
              ただそれは止むことなく流れ続けた
             映画の中に
            探し求めた影があるように感じて

           実態と仮想の入り口と出口が解らない
          避難誘導灯の明かりももちろん存在しなかった
         それが僕の世界だった
        それが辿り着いた街の暮らしだった
       ただ映画だけが世界の在り様を優しく包み込んだ

      入り口も出口もない真夏の深夜の世界
     あふれ出る想いは果たして懺悔だったのだろうか?
    想いはいつだって曖昧だ
   あの僕の記憶の様に
 
  いつか

 いつか辿り着けますように

緑の草原

 永遠の最果ての国へ

  祈っているのだ

   ただあてどなく

    愛している

     打電される電気信号

     

      ぴぴぴ


       ぴぴぴ




















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