眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

空き地のノラ

2010-11-30 | 
混沌とした意識の濁流の中
 グラスの
  表面張力に依存するワインの一滴の如く
   この世界は憂いに満ちている
    重く垂れ込めた空
     湿度を十分に吸い込んだ空気
      それらが戯言を云う
       壁越しに聴こえた物語を音楽と名付けた深夜
        徘徊する野良猫が歌を歌う
         まるでこんな歌詞だ

         さあ
          パレードだあの街の向こう
           其処で又始まる
            始まりはいつものあの場所
             野良猫たちが空き地に集い
              パレードを祝って
               すっとんきょうな声で云う

               野良猫のボス
              彼が云っていた冬の夜の幻
             幻想
            幻惑
           魔法を使える時間は限られている
          そうさ
         君もやがて大人になる
        そうして忘れてゆくんだよ
       あの夕日や月夜や
      物語や僕の存在を
     泣きたい夜にはそっと想いだしてごらん
    僕の呟いた詩を
   架空の請求書のアリバイ
  密猟者の不穏
 散弾銃の空砲が合図だ
世界は物語を廃棄処分した

  ぎ・ぎ・ぎ

   扉が閉ざされたのだ
    あまねく空気の浸透圧が変わる
     万物は流転し
      逆光は写真を駄目にした
       暗室の静けさ
        余韻は全て記憶の化石達
         封印された自律神経
          扉が閉ざされる

          ねえ
         見て
        星が綺麗なはずだよ
       少年はくすくす微笑み
      少女がフェンダーのペグに
     はっか煙草をはさみ込む
    紫の煙が室内を漂った
   ねえ
  聴いてる?
 その歌は野良猫たちの歌だ
誰のためでもなく
 誰にも束縛されない
  野良猫たちの魔法の呪文
   
   波動が困惑する
    君の音楽
     君の詩
      君の存在の重厚な軽さ
       安易に世界を理解したつもりになってさ
        猫が皮肉に微笑む存在の孤独

         ねえ
          ハルシオン
           あの街角ではまだ誰かが待っているの?

           野良猫が目を細める

          もちろん

         待っているよ

        パレードが来るのを

       いつまでも生まれること無い姿で

      待っているよ

     

     ねえ

    ハルシオン。

   
   聴こえるかい?



   僕等の歌。












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深夜

2010-11-21 | 
明日がやってくるよ
 夜のしじまにこっそりと熊の人形が囁いた
  ベットから起き上がった僕は
   カーテンを少しだけ開けて
    青い月明かりを尋ねた
     青い三カ月の夜
      街灯に束ねられた夢の残骸に
       僕はいつか火をくべなければならないのだろうか?
        大切な記憶ほど燃やせない
         そうして記憶はらせん状の断層になるのだ
          自転車の音がする
           頭をポリポリ掻いて
            しらんぷりした

            赤いトマトが転がり
           路なりに傾斜する街の夜を誘う
          もう食べられないよアイスクリーム以外
         飽食の果て世界の虚構
        指先がやたらと痒くって
       傷口を噛んだら赤い血が流れた
      明日がくるよ
     もう一度熊が呟く
    今日は二度と来ないのだ
   宿命的に懺悔した
  どうして昨日には帰れないのだろう?
 明日がくると今日は消え去るのだ
どんなにそれが苦しくて切ない物であったとしても
 だから眠れない
  今日が終わって欲しくなかった少年の深夜ラジオ
   番組だっていつか終了するのに
    そんなことにだって気ずかない
     夢の名残を言葉に変換する
      明日がやってくるよ

      ナイジェル・ノースのリュートを流した

       バッハの無伴奏チェロ曲が流れ出す
        僕はワインの瓶を空にした
         リュートはとても繊細で美しい楽器だ
          美しい完璧だ
           まるで明日がこない記憶の今日の様に
            この夜が永遠に続くなら
             僕は道化のままで暮らしを風化させる
              夢だけを食べる少年
               100円玉でお菓子を買った

               四角い窓から朝日がさざめきだす頃合

               勝手な都合で昨日が消された

               大型店舗のスーパーができ
              地面のぬかるみの感触を忘れさせる
             コンクリートやアスファルトに覆われた路
            僕は手紙に火をつけた
           想ったよりも手早く
          記憶は抹消された
         と同時に僕の存在意義も
        燃えて白い灰になった

      明日がくるよ

    お腹が空いたので

   お粥と梅干を食した





      
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眠る時間

2010-11-16 | 
切ない記憶の懺悔と
 いまだ咀嚼できぬ苦しみと引き換えに
  この平穏な日常の夜を抱え込んだのだ
   僕はアスファルトの路上の余熱に
    頬をこすりつけるように泥酔してみせた
     鼓動がする
      緑の法則によって
       耳鳴りが止まず孤独に幻滅した

        助けて
         そう云えなかった夜の時間
          不意に訪れる君との約束は
           果たされぬまま荒野に野ざらしとなり
            やがて化石の記憶として
             あのアンニュイな貴婦人のコレクションとなる
              夜
             やがて君の記憶は
            古臭いレコード盤と共に
           綺麗に並べられた棚の奥に陳列されるだろう
          歯磨きを忘れた罰さ
         マスクをした歯科医の声
        麻酔を施した筈なのに
       この痛みは生きている現世を列挙した
       
      理由を鑑みよ
     孤独であるべき理由に
    納得がいかなくとも僕らは今日の日を存在とす
   ただ
  助けてと云えない苦しみの果て
 乾いた砂埃の砂丘でおれんじ色の太陽を眺めた
手のひらに降りしきる理由の数々
 全体
  そのどれがより真実に近いのであろうか・
   描写が繊細な背景の写実には
    真実と呼ばれる擬似的な物語が
     あきらかに欠如していた
      みんな不安なのさ
       フクロウが呟いて目をくるくるさせた森の夜
        精霊たちのダンスにおどけた道化師の一人が
         多分二日前の僕のあるべき姿
          カタチを変えようとも
           愚らない雑事の多さが
            僕の存在の軽さを露呈するのだ


            もう眠る時間だ

            やがて夢を見るだろう
           僕は路上に嘔吐し続け
          やりきれない哀しみを飲み込むのだ
         そうして胃液と共に
        想いを吐いた
       雑居ビルの路地の界隈での寒さは
      コートの浸透圧に比例して不可逆的に冷気を浸透させるのだ

     よそう
    酔いの戯れは
   もう寝る時間だ
  良い子ははやく眠らなければ
 街角の記憶もやがて耐えられる類となるだろう

捨てられたのさ

 フクロウが皮肉に微笑した

  そうしてそれは真実にいちばん近い

   やれやれ

    そう

    眠る時間だ

     時間は眠らないのだろうか?

      酔いどれの永遠のテーゼ






     
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寝床

2010-11-02 | 
やはり青い月の夜
 少女は古ぼけた楽譜を丁寧にめくりながら
  時々想い出した様に音を出した
   バーボンを舐めながら聴いていたのだが
    その音が何のテンションを内包しているのか
     僕には皆目検討がつかなかった
      そんなにお酒を飲み過ぎたのだろうか?
       ぼんやりと音を眺めていた

       はっか煙草に灯を点け
        僕は試しに少女に尋ねてみる事にした

        ねえ
         その楽譜、誰の音楽?
          彼女は楽譜から顔も上げずに呟いた
           いまいいとこなのよ、邪魔しないで。
         
         僕はため息をついてまたお酒を飲んだ

        不思議な和音が流れる
       それはけして気持ちの悪い不協和音ではなかった
      なんだか遠い昔を思い出させるそんな音だった
     懐かしい誰かの後姿
    記憶の中の優しい郷愁
   曖昧なアリバイ
  誰かが記述してきた世界の境界線
 やがて消え行く刹那の夕暮れ
おれんじ色の夕映えのグランド
 音楽室から聴こえたチャイムの音
  足音すらも消え去った教室
   僕は黙って窓の外から皆が帰る光景を見送った
    
    帰る?
     一体何処へ?

     夕暮れが迫りやがて星空が建物の屋上に瞬く
      僕らは限りなく孤独だった
       この小惑星に唯の一人きりだった
        そんな記憶の夜
         青い月夜

        名前が無いのよ。

        少女が呟いた

        僕の名前?それとも君の?

       馬鹿ね、この曲の作者の、よ。

      少女はギターを緑色のソファーに置いて
     タンブラーグラスにバーボンを注いだ
    街の古本屋の隅に落ちてたのよ
   古本屋?まだそんなものがあったのかい?
  あるわよ。ちゃあんと探せばね。
 大体のところ、
少女はバーボンを舐めながら話し続ける
 大体のところ、失くした物は在るのよ。ちゃあんと探せばね。
  でもだれも探そうとはしないの。
   
   どうして?
    僕には皆が失くしたものを探して一生懸命に見えるけれど。
     もちろん僕も含めてね。

     在るのよ。

     少女が僕の目を覗き込むように囁いた

     この音楽たちは
      誰かが音にしなければ誰にも気付かれない
       でも
        この世界に存在するの
         
        存在しないものは何もないのよ

       
      僕は少女が拾い集めてきた楽譜の山を見つめた

     それで

    それで君はわざわざ青い月夜に世界を表出させるんだね?

   失ったものを探しているのよ。

  少女は丁寧に僕の言葉を云い直した

 少女がそおっとささやく

「美わしき悦びに満てる
  真の魂は
   穢れることなし」

    ギターを手に取って
  
     少女は世界を現世に表出さす

      彼女が表現者で

       僕が創造物なのだろうか

        青い月の夜


       誰かの憂える魂に

      ただ安かれと願う

     ただ安かれと


    魂の寝床

   

 
      

         
 
  
       
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