眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

タロット

2015-12-18 | 
水晶の玉は遠く霞んでいたけれど
 時折 瑣末な日常が浮かんでは消えた
  建物の二階の喫茶店で
   僕は水晶に見入る女性の姿を凝視した
    ふと
     窓越しに青い空を見つけた
      薄暗い部屋の小さな木枠の窓から
       希望が柔らかに降り注ぐ
        そうっと控えめにピアノの音が流れていた

        アイス珈琲の氷は氷点下の装いで
       誰もが気にしない優しさを仄めかす
      運命に従順であることを拒否した夜
     緊急外来を訪れ
    レントゲンの青い写真を眺めさせられた
   家に戻ってとっておきのワインを空けた
  少女は窓際に座り込んで膝を抱え
 じっと月を眺めていた
僕はギターを手にして昔の映画音楽を弾いていた
 チムチム・チェリーを弾き終えると
  はっか煙草を口にくわえながら少女が呟いた

    その曲、好きよ。映画は見たこと無いけど。
     僕はギターを置いてグラスを持ってきて
      ワインを流し込んだ
       少女はそれを少しの時間眺めて飲んだ

        僕はスコッチの残り少ないボトルを空けた
         静かな夜だ
          静けさの中で
           少女がカヴァテーィナを弾いた
            軽い酔いの中
             僕の意識は音にまみれた
            曲を弾き終えると少女はギターを置いて呟いた
          
           それで。それであなたどっか悪いの?
          頭の回線が混乱してるだけだよ、良くあることさ。
         あたしも頭が混乱しているわ。だから神様に祈ったの。
        忙しいみたいだよ、神様。
       大丈夫。今日読んだ本にお祈りの仕方がかいてたから。簡単よ  キドニーパイの作り方よりはずぅ~とね。
     何の本読んだのさ?
    ソクラテスのプラトンの弁明よ。鏡の国のアリスほど難解じゃないわ。
    
   プラトン、ソクラテス、アリストテレス。
  僕はワインを舐めながら呪文のように繰り返した。

 それで、エオラ叔母さんの水晶は覗いたの?
見たよ。霞んでいてよく見えなかったけど・・・。
 そう云うと少女はタロットのカードを持ってきて
  机の上でシャッフルした
   部屋の灯りを全部消して。
    僕は云われるままに灯りを落とした
     青い月明かりだけが頼りだ

      好きなカードを一枚引いて。
       少女がささやいた
        僕は徳に何も考えずカードを選んだ
         彼女はそのカードをめくって不思議な笑みを浮かべた
          どうしたの?

           少女は嬉しそうに微笑んでワイングラスを口元に運んだ
            
            あなたは永遠を信じるべきよ。
            
         「美しき悦びに満てる
           真の魂は穢れることなし」

        大丈夫。あたしとあなたは腐れ縁みたい、前世からのね。

       そばにいてあげるから。

      少女は奇妙に嬉しそうだった

     四角い窓から流れ込む

    月光


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