眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

選択的な想い出

2007-08-30 | 
   選択的な思い出は
   常に幸せだったはずの夢を見る
   忘れてしまうのだ多分
   隠された哀しみの引力が
   今日も僕らを地面に叩きつけようとする
   3日続いた雨の慣わし

     鉛筆を一本引き出すように
     或いはたくさんのレコードの中から
     一枚を慎重に選び出すように
     僕は何かを望む
     青臭い少年の根拠の無い強がりのよう
     アスファルトの地面は
     雨が降り止み
     いつしか太陽の熱を放射しようとする
     蒸気を感じながら
     祈り歩くのだ

                前衛的ナ行動ハ
                常ニ アジテートサル
                モシクハ
                飛ブ事ヲ夢見タハズナノニ
                雑多ナ群集ニ網羅サレ
                宙カラ引キズリ落トサレ
                現実トイウ名ノ元ニ
                今日ヲヒレフサス

   金子光春が呟く
   「インク壺の中からの抗議」
   去り行く何かは
   いつも去り際がとても甘美だ
   甘い林檎の果汁の味がする
   早くてもいけない
   むろん
   遅すぎるのは絶対に野暮だ
   去り際というものはいつだって

   お願いだ
   黙って去るのは反則だ
   名残惜しげに残さるる者たちは
   その後の美しき想い出に留めようと
   泣きつきじゃれあう
   
                白鍵と黒鍵ノ位置ガ違ウ時代
                ピアノ乃精神ハ密ヤカデ在り
                ヤガテ一人去り
                二人去ッテ
                ピアニストダケガ憂イヲ残スダロウ
                誰モイナイ世界ノ果テ
                饗宴ハ最後ノ晩餐トナル

   最後の晩餐
   残された記憶
   そうしてスコッチに酩酊する
   意識の空き地
   選択的な想い出







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2007-08-27 | 
静謐な空間に宿る精霊達の止まり木に
 つかの間 羽を休める
  呼吸をすること
   甘美な気だるさを味わい
    一人酒と言葉に戯れる

    言葉がようやく身体に馴染んできた頃
     僕は生まれたての赤子の様に
      そっと呟く

      朝だ

     夜明けを待つ時間は海の時間
    汽笛が鳴り響き
   何処かの誰かが旅に出る
  僕は黙って煙草に火を点けた
 あれは
いつかの自分
 影が街灯の青い灯りに伸び
  僕は旅立ったんだ

   深海の底に眠る幾千の記憶
    静寂な酔いの中
     貴方に会える日を想う
      そう遠くではないさ
       そのときには
        夢を肴に一杯

      繰り返される日常はまた押し寄せるだろう
       忘れないで
        どんなに同じように見えたとしても
         それは繰り返しの効かない一瞬だから
          耳を澄ませて
           星の記憶を耳にする

        校舎の裏
       病室の白いシーツ
      青の三日月
     蛇口から零れる一滴の水
    
   記憶が受戒する
  暗礁に乗り上げた船は
 静かに時間をかけて深海へと沈む
生き残ったものにはなにか意味があるのさ

   君は何を夢見るだろう?
    出来るなら
     その世界を離さないで
      磨耗する日常の有象無象に
       真実が宿されるのだから

        新しい瞬間

         朝だ


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眠りたい

2007-08-12 | 音楽
雨が降りそそぎ
ただ
滴と柔らかな風の音が沈黙を
包み込む

ゴルゴダの丘はその日雨だったらしい

涅槃を願う菩提樹の根っこは
雨の滴を
優しく吸い込んでくれるのだろうか?

誰かが
誰かを祝福し
何かが哀しみを
与えてくれた

苦しみぬくことは
今 そこに 「在る」と 伝えてくれる

パルスは正常で
血圧が少し低めの朝

僕は夢想し
自分が蝶の夢を観ているのか
蝶が自分の夢を観ているのか
不思議におそわれた話を ふと思い出す

まだ すこし夢をみたいから
今日が
思い出させる雨の日だから


眠りたい




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夏休み

2007-08-08 | 
ドラマテックに模倣されるミュージカルを見て
 友人が苦笑する
  どうしてさ、哀しい場面で歌うのさ?
   哀しければ酒を飲むべきさ
    一理ある

     梅酒
      母が漬けていた梅酒をオンザ・ロックで
       美味いのさ

        記憶された
         祖母の家の縁側には井戸があって
          縁側で植物観察をした夏休み
           朝顔の葉に朝露が舞い降りる

            やがてスペースシャトルの初めての飛行
             テレビにかじりついた夏
              胸がどきどき脈打つ記憶の残像
               夏休みの空間に世界を凝視して
                魚汁を作ってくれた祖母に感謝した

                遠い記憶
                改ざんされた臆病な記憶は
               美しい夏の日差しに包まれ
              チャールズ・ラトゥジ・ドジソンが
             湖のボートで少女アリスに
            お話をする
           夏の思い出
          ギャツビーがパーティーを開き
         笑いと喧騒を離れウィスキーを片手につきを眺めているのだ
        僕は梅酒を舐めて
       19世紀のサロンの絵を眺めた
      
      ドアで挟んだ指先の爪が剥がれ落ちた

     おれんじが好きでね
    アリスにあげるんだ
   夏の物置の屋根裏部屋は違う世界に繋がっていた
  時計を気にするせっかちなウサギを見逃さないように
 お茶会が始まり
のんびりと紅茶をすすりチェスをした
 勝てないはずの勝負
  永遠に留めておきたくて
   アリス・リデルの写真を撮ったチャールズ
    世界は夏休みの青の中
      夢は手のひらの中
       朝顔の露をコウロギが飲んでいる
        

         それでチェスの勝敗は永遠につかない

          そんな夏休みは忘却の果て


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約束された地平

2007-08-07 | 音楽
約束された地平は
 ついに見つからなかった
  それでも表層の記憶をなぞり
   幻惑する様相を呈した精神構造を
    少しだけ研磨し論理立て手説明しようと
     試みるスコールのお昼時
      お日さまの中
       雨が降り注ぎアスファルトを冷却する
        ビールを飲みながら
         怪しげな夢想に浸る酔いどれの呟き

          ピアノが泣いている
           黒猫がしきりに窓際であくびする
            ステンドグラスの光線が
             柔らかく赤子を包んだ

           「虹だ。」

         誰かが呟き
        僕らはすぐに連絡網を回した
       この夏初めての虹だ
      何かいいことがあるのだろうか?
     何故か嬉しくって車を止めたのだ
    アスファルトの蒸発した水分は
   湿気となって暑い空気を天上に上昇させる

  三日後、スカイダイビングをするのさ

弟が十二本目のバドワイザーを空ける
 僕が十三本目のバドワイザーの空き缶をひねり潰した
  世界は奇妙な人間関係で構築された
   奇妙で怪しげな建築基準法を無視したまるでビルの様
    疲れているのだろうか?
     普段甘い物なんて食べやしないのに
      チェリーパイの一切れが美味しかった
       
       十四本目のビールを開けた

        世界の扉が開く瞬間
         住職が三回忌の終了を告げた
          念仏は天上に昇華された気もする
           あの夏も

            あの夏もひどく暑い日だった

             繰り返される日常
            麻痺してゆくのは
           いいことなのか悪いことなのか
          分からないけれど
         僕らはこの世界に残された
        生きている
       存在の証は空いた缶ビールの空き缶の数
      十五本目を弟が空ける
     それにしても暑い
    どんなに飲んでも酔わない
   僕は仏壇にビールを捧げて
  酔っ払いの馬鹿弟が煙草に灯をつけ
 仏壇に捧げた

そんな日
 お天気だよ お父さん
  一緒に酔いつぶれ
   キューバ産の葉巻でも嗜もうじゃないか
    それよりも
     大好きだったマイルドセブンがいいかい?
      フィリップモーリスに灯をつける
       時は流れる
        記憶は美化されあるいは磨耗され行く
         少女は大人になり   
          世界は安穏としたあくびを許さない

           ニュースキャスターが今日の事件を
            矢継ぎ早に繰り返す
             懲りもせず犯罪が世界を覆いつくす

             僕は子供のままだ
              その方法を知っている

              少女が尋ねた

            どうすれば大人にならなくてすむの?

           簡単なことさ

         虹をごらん

       混沌とした世界を

      緩やかな魂の輪廻が見つめているのさ

     甥っ子が誰も居るはずの無い
庭の木の根元を見つめている
   お父さん

  ボクニモミエタ様な気ガシタ真夏の出来事

 君に伝えたい

それでも世界は美しいんだよ

  ありきたりの懺悔なんて明日にしてしまえばいい

   アルコールが前頭葉を麻痺させ

    僕らは生きている

     それが考察の回答だ

      約束された地平


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