眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

薄紫の花びら

2023-02-21 | 
重力に反比例した朝は
 気だるく薄紫色の意識を開花させる
  花の色彩領域と匂いの気高さに
   泣きたくなる午後のミツバチ
    コケットな仕草の要因で
     三日月が白夜の逃避行を告げる
      朝七時に口にするワインは決して上等ではない
       重力に反比例した朝
        宇宙飛行士の朝ご飯

        駆け出しの新聞記者
       赤いタイプライターで映し出す
      あの二十面相にまつわる奇異なゴシップ
     笑えない活動写真の
    擬似された模倣
   あれは何時か見た貴方の後姿
  ほら
 額に罪びとの印が刻印されている
ごらんよ
 葡萄の木にまつわる午後十二時
  エピソードが始まる
   あの薄明かりの太陽は
    まるで消えかけた懐中電灯の如く
     
     神話が始まる夕暮れ時
      運動場に伸びた長い影の刹那
       永遠に届かない君の影に手のひらを伸ばすのだ
        もう帰れない
         森の深緑に足を踏み入れたのだ
          猫があくびする
           やがて夜が訪れる
            人気の無い街並みはまるで廃墟の様相を呈す

            図書館で調べた議事録に
           君の証言は記載されなかった
          僕は永遠に君を見失う
         運命線の切れ端は
        電波の届かない哀しみ
       だって声が途切れ途切れで
      君の泣き声が聴こえない
     貸し出しカードに誰かの名前が記載されていた
    思い出せない名前の数々
   僕は馬鹿だ
  電波が届かない

薄紫色の花が花瓶に活けられている
僕はその鼻の匂いに記憶をリピートさせ
 届かない夢の末路を想像する
  君の声
   宇宙食の朝ご飯
    ワイン一杯で始まる一日の幻想組曲
     酔いどれた視界の風景の中で
      夢を見る
   
      当惑された意識の境界線

      薄紫色の花びらを眺め

      繰り返す日々に懺悔する

      仏壇の線香の煙が揺れる


       永遠



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宿題

2023-02-14 | 
その日生きていた呼吸たち
 或るはずの意識
  無音の優しさ
   そうして
  お昼寝の時間
 
   黙って封印した筈の空想は
    みんながおいしいごはんを食べれますように と
     可笑しいね
      そんな夢を見たんだ

      あなたを最近よく思い出すんだ
       愛用の鞄や
        嬉しそうに見せる
         論文の初稿や
          そういえば
         一緒に寝そべって
        懐メロを唄ったのは
      柔らかな記憶のお昼寝の時間
     愛用のルーペは何処にしまったのだろう?

      写真を眺めている
       ねえ
        僕にはいささか荷が重すぎやしないか?
         でもねたぶんね
          優しい笑顔を浮かべて
           大丈夫、と云ってくれるんだろうね
            いつもの様に

           冬の空気がきりっとしたので
          僕は珈琲を飲んだ
         暖かなものに触れたくて
    
        どうしてあなたのことばかり
       奇妙に考えるのだろう?
      お休みの昼寝の時間
     ワインを一本空ける時間
    仏壇のあなたのほうを垣間見る

   その日生きてた呼吸たちが泳ぎ出し

  僕は切なくてただ
 虚ろな微笑みで毎日をやり過ごす
あなたなら
 きっと解き明かした問題だ
  
    「宿題」

    弟がビール片手に呟いたのは
     やはりいつかのお昼寝の時間

      宿題なんだ



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エドガー・エンデ

2023-02-09 | Weblog
エドガー・エンデは、ナチス政権下のドイツの画家だ。
ミィヒャエル・エンデの父親といえばご存知の方も多いかも知れない。ミィハャエルは、「モモ」や「はてしない物語」を描いた世界的な児童文学作家だ。
父、エドガーの絵はナチスによって「退廃芸術」の烙印を押され長い間、闇の芸術とされ作品も散在していた。息子ミヒャエルの世界的な成功もあり、ミヒャエルはその幾つかを収集した。そして、父エドガーの作品展を僕の知る限り1度だけこの日本で行なった。
当時、ミヒャエル・エンデに傾倒していた僕は、長崎の美術館に五回足を運んだ。
なぜか、いつも雨の日だった。
路面電車に揺られて、僕は寮からエドガーの絵を観に出かけた。開催期間は限られている。しかし、寮の寮則で外出には外出届けが必要だったし時間も制限されていたので、美術館に行く為に脱寮するのはなかなか危ない橋をわたるようだった。
雨に濡れた学生服のまま、美術館に入った僕はエドガーの作品に釘ずけになった。
この親子の作品の背景には、必ずルドルフ・シュタイナーという人の神秘主義、思想が大きな影響を及ぼしている。高校生の僕にはいささか難解すぎるきらいがあって、シュタイナーについてはあまりよくわからなかった、もちろんいまだに難解だ。
沢山の本がでているようだ。日本でいち早く彼を紹介した子安みち子先生の娘はシュタイナー教育を受け、いまではエレキべーシストとして有名だ。
話がそれた。
ミヒャエルが亡くなったあと、エドガーの作品展を当時の規模で行なうのは素人の僕でもムツカシイと思える。いいもの見たな~とつくずくそう思う。
お金のない高校生の僕は、なけなしのお金をはたいてエドガー・エンデの画集を手にいれたのだった。いまでも、宝物のひとつだ。
画集を開くたびに、雨の石畳をとぼとぼ歩いた高校時代をおもいだす・・・。


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銀の首輪

2023-02-04 | 
黒猫のハルシオンが
 気だるそうに銀のネックレスを悪戯している
  僕は風に吹かれてぼんやりと煙草を吸った
   煙が白線の様に清潔な青い空に流れていった

   こういうのってさ、嫌いなんだよね、おいら。
  
    ハルシオンが不服そうにネックレスを指さした
      なんだかさ、
      縛られているっていう状態がさ、おいららしくないっていうかさ。
       大体、猫って自由さの中にその存在意義が定義されているのにさ、
        甚だ不愉快だよね。

         そう云って黒猫は銀の首輪を外し
          気楽そうに煙草に灯を点けた

           存在意義って?

            少年だった僕に黒猫はしたり顔で話し始めた

             あんたにだってあるだろう?
              薄れゆく記憶の中でどうしても失いたくない大切なものがさ。
               そういうの存在意義って云うのさ。
              
                大切なもの?

                 そう。
                  追い求めて探しあぐねた誰かの影や
                   街角の歌
                    街灯の下の不穏な夢の名残たち
                     サーカスのテント
                      決して訪れはしなかったあのパレード

                      それらはね、銀のネックレスでは到底辿り着けない領域の出来事なのさ
                       
                       ねえ、
                        風の丘への道順は何処へ消えたの?
 
                         僕の問いには答えず黒猫はビールの缶を開けた
                          僕等は風に吹かれ
                           ただ黙ってビールを飲んだ
                            大きな木の下で
                             ただ酔っぱらった
                              それはまるで遠い記憶の様だった

                              あんたの大切なものはなんだい?

                             急に想い出したようにハルシオンが呟いた

                            大切なもの

                           壊れ物

                          僕等の精神の危うい均衡
                         物憂げな物語
                        怠惰で怪訝な日常の羅列たち

                       おいでよ

                      記憶の君がくすくす微笑んだ

                     風の丘
 
                    熱気球に乗って旅立った彼女彼等の物語

                   わずか数秒の中に永遠を夢見たあの日

                  僕等は夜の子供たちだったのだ

                 おいでよ

                他愛の無い造形で

               描写した世界の模倣

              銀の首輪を見つけたのは君だった

             そうしてその鍵は永遠に見つからない

            黒猫が楽しそうに微笑んだ

           行くかい?
          おいらと一緒に
         永遠の旅に

        ワインのボトルと煙草を持って

       我々は旅に出たんだ、きっと

      白い煙がたなびく向こう

     あの永遠の領域に於いて

    旅に出たのだ

   きっと

  繋いだ手を離さないで

 どうか

お願いだから



































                         
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オルゴール

2023-02-02 | 
乱雑するケーブルの線の多さに
 うんざりとした希望
  まるで運命の意図もこの様にこんがらがっているのだろうか?
   あくせくとした中間地点で
    世界を写実した僕は
     ゆっくりと坂道を歩き出した
      青は青のままで
       赤は赤のまんまだった
        良かれと想い
         かけた言葉は全て間違いだらけの答案用紙の様だった
          深夜の信号機が機械的に点滅する

          事象はかけ離れた面持ちで
           意識の分流を介し
          まるで喫煙室の多彩な煙たちの如く
         換気扇に一列になって吸い込まれてしまう
        石畳のこの坂道をてくてくと歩こう
       手を繋ぎ大きく腕を振りながら
      時折の写真撮影にも余念がない
     上りきった石畳の階段の上には
    あまり人気の無いオルゴール店があった
   眼鏡をかけた女性が品の良い笑みを浮かべる
  店の中は沢山のオルゴールが並べられている
 陳列されたそのぜんまい式の機関に
いつまでも飽きることは無かった
 
 オルゴールの音色は素敵だ
  まるで失くした記憶を想い出させる
   君の事を思い浮かべていた
    自転車に乗り
     レモネードを飲んだあの夏の日の君
      僕はビールの空き缶を作りながら
       ぼんやりと縁側で空を眺める
        お土産に手にしたオルゴールのぜんまいを丹念に巻く
         酔いのまどろみの中
          君の声が聴こえたような気がした
        
           僕が好きなもの

          時代遅れのオルゴール

         深夜三時に飲むウィスキー

         エドガー・エンデの画集

          はっか煙草の煙                                     
         
          こわれやすいもの

          君のこころ


          君の声




          


       
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