眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

トマトスープ

2011-11-21 | 
情緒不安定な情報は
 グラスの零れ落ちたラグリマ
  遠き時を想った
   「世界」
    この奇妙な造形には
     十分気をつけなければならない
      フェルナンド・ソルの曲に触れるが如く
       19世紀ギターを細心の注意でなぞる
        少女が小説のページをめくった
         寒い冬の時間

         安手のグラスに注がれるワイン
          プラットホームから電車が走り去る
           黙って遠くを眺めた
            優しい君の行方を探して
             哀しい微笑みで君は何処かへ消えた
              存在は哀しい
               そうっとほほを近ずけた夢
                赤樹の樹の下で
                 約束のキスをした
                  いなくならないでね
                   僕の瞳を覗きこんだ君が
                    意味が先に消えた

          鞄の中身は?
         楽譜です。いつか弾こうと願って。
        それで
       それで、いつの時間に弾くつもりなんだい?
      たぶん、来世で。

    白夜の逃避行
   安穏とした暮らしに飽き飽きとした日々
  暮らした部屋は煙草の煙でグレッチのホワイトファルコンが
 少しずつ黄色くなっていった
ピアノマンの切ない音色で酒を飲んだ

  ポール・コゾフのギターが好きだった
   張り裂けそうな泣き声の様なヴィブラートは
    たぶん僕の声
     狭い部屋で幾度も嗚咽した
      泣き出した君の背中
       僕は憶えている
        空に消えた雲を
         さようなら
          君の幻影を消してゆこうね
           それが多分、始発の電車なのさ
            淡い夢が永遠に続く筈なのに
             我々は永遠に離れ離れになってゆく
              煙草に灯を点ける
        
             少女がつまらなさそうに
            一眼レフのシャッターを切った

           かしゃ。
       
          切り取れた記憶は
         カレンダーの横に並べられる
        冷蔵庫の白の壁に
       切り取られた瞬間は永遠なのだろうか?
      少女が考え込む僕の側で
     「月光」を弾いてくれた
     モノクロームは哀しくないわ。
    カラーの色合いのほうが残酷よ。
   少女がつぶやいたとうりだった
  極彩色の写真は生なまし過ぎる現実
 
             
            己ガ身ヲ放出サセヨ
             物云ワヌ皮ヲ持テ
              表皮カラ発熱サレル微熱
               唯 安ラカニ在レト
                願ウ
                 時計台ノ下
                  時刻ハ午前零時ヲ指シタママ
                   誰モ動ケ無イ

                  仮想ト現実ノ所作二於イテ
                 真実二戸惑ウ
                白夜ノ逃避行
               全体プラットホーム二佇ヌダ時間ハ
              果タシテ何秒ノ誤差デ在ッタノダロウカ?

            あなたお腹すいてない?
           暖かいスープがあるわ。
          少女がはっか煙草をくわえながら尋ねる
       
         トマトがいっぱい入った奴?

        そう
       
       赤いトマトがいっぱい入った奴。

      彼女は煙草に灯を点けた

     何千時間の記憶が燃え落ちた

    グラスをなぞる
  
   零れた涙




               
  
                
   
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予防接種

2011-11-14 | 
予防され阻害され排他され除外される
  沈黙を差し出し
 己の自我を埋没させる

  酒場にて
 
 酔っ払い相手にギタリスト
魔法にかかったその指先から
 旋律は流れ
でも
 いつかうらびれた酒場の隅っこで
  忘れ去られた音楽をやってみたいのだ
     僕は

  街は綺麗になった
 小奇麗な服装と髪型
床屋はまるで装いを変えた

  月のピッチカート
  星のアルコ

チェロの音色が好きだ 最近は
宮沢賢冶の「セロ弾きのゴーシュ」の様に
 チェロが弾きたい

   萩原 朔太郎
  「猫街」
開いたページの一行に
  「これは人間の住む世界ではなくて、
     猫ばかり住んでいる町ではないのか。」


  現実では
 野良猫は駆逐され飼い猫は去勢された
300年前の音楽なんて
一体全体誰が好んで聴くのだろう

  メッセージが白々しく想う
 予防された文脈の中で
芸術や音楽に身を捧げるなんて行為は
 忙しい生活に埋没されるのだ
皆が寝静まった頃に
 小さなヴォリーュムで
  ラヴェルの
   「亡き王女のためのパヴァーヌ」
     を鳴らす
 ウイスキー三杯分なら
   ハウリン・ウルフのだみ声も
    趣が感じられるのだから不思議だ

 それだけが

   それだけが 
    唯一残された時間
      夢

  意見を求められてもね
 混乱するだけさ

          世界は予防接種されているのだからね


          やがて消え行く


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埋葬

2011-11-04 | 
もうどうすることも出来ない君の声
 ゆっくりと浮かんでは消える
  まるで
   水面から浮かび上がる泡の羅列の様に
    僕はベンチにこしかけ
     長い時間を過ごした
      僕は帰らない者たちの為に泣いた
       声にならない嗚咽の時間は
        やがて容赦ない日常にまみれた
         やがて僕は記憶すら失う

         表層を撫でる風の優しさで
          僕は君の哀しみを包む筈だった
           容赦ない現実の界隈を
            自転車で上手く渡っていけるはずだった
             それなのに

             夢を見た
            何処かの病室にたたずむ夢
           味気ないベットの白いシーツ
          真っ白な壁には殴りつけた誰かの痛みがあった
         僕はその染みに自分の孤独を加えた
        独白は意味のない羅列
       因数分解の要領の様には
      決して上手くはゆかない
     あなたがいたことは奇跡だったね
    海辺で吹き抜ける風の匂いは奇妙に懐かしい
   一体僕は誰の為に泣いていたのだろうか?
  
  自己欺瞞

 裁くべき人々が裁かれる僕に容赦なく鉄槌を振り下ろす

僕はただ君と微笑み合いたいだけだったのに

 赤いさくらんぼの実をくちに含む
  何時かの記憶
   霞み行く薄明の意識分解
    部品は明らかに足りない
     未完成な僕は哀しみの部品を
      じゃらじゃらと引っ張って歩く
       てくてくと歩く
        君の場所は遠すぎるね
         夕日が沈み月が昇った
          冬が去り春が通り抜け
           扉の向こう側では真夏の太陽が
            僕の存在をじりじりと照らし続ける

            遠くにいてもいい
  
            そばにいて

         哀しみを癒す君の言葉が嬉しくって


        もうどうすることも出来ない君の声

       数分後には

      この記憶も

     分解され処理される

    埋葬された意識のわすれな草

   やがて其れが芽をだし発芽して呼吸を始める頃

  僕は生まれ変わり夢の中であなたに手紙を書くだろう

 永遠に伝わる事ない言葉をしたため

代わり映えのしない日常に嘔吐する

 埋葬された意識を

  
  記憶の化石














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