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「木暮荘物語」三浦しをん

2014年11月13日 | 本(恋愛)
登場人物誰もが愛すべき存在に思えてくる

木暮荘物語 (祥伝社文庫)
三浦 しをん
祥伝社


* * * * * * * * * *

小田急線の急行通過駅・世田谷代田から徒歩五分、
築ウン十年、全六室のぼろアパート木暮荘。
そこでは老大家木暮と女子大生の光子、
サラリーマンの神崎に花屋の店員繭の四人が、平穏な日々を送っていた。
だが、一旦愛を求めた時、
それぞれが抱える懊悩が痛烈な悲しみとなって滲み出す。
それを和らげ癒すのは、安普請ゆえに繋がりはじめる隣人たちのぬくもりだった…。


* * * * * * * * * *

築ウン十年のボロアパートの住人と
ご近所のちょっとした縁のある人々のストーリー。
それぞれが短編となっていますが、
人々も少しずつつながりがあって、全体で群像劇のようになっています。
それにしても登場人物一人ひとり、只者ではない。
カテゴリーにちょっと迷いましたが、
やっぱりこれは恋愛ものの一種なのだろうな。


冒頭「シンプリーヘブン」。
小暮荘2階の住人繭が彼・伊藤と部屋にいると、
突然に繭の元カレ・並木が上がり込んでくる。
並木には放浪癖があり、もう3年もナシのつぶてだった・・・。
普通はここで修羅場となるはずなのですが、
表面上、なんとものんきな展開になります。
並木が食材を買い込んできて、3人での食事・・・。
なんとも微妙なんだけど、チョッピリとぼけたこの雰囲気、
好きだなあ・・・。
繭が並木を待っていなかったといえば嘘になる。
しかし並木に対する伊藤の態度もなかなか大人なのであります。
この人も捨てがたい。
繭の気持ちの本当のところはどうなのか・・・。
まあ、そこが眼目です。
本巻ラスト「嘘の味」に、また並木が登場。
今度は並木からの視点のストーリーとなるのが洒落ています。


小暮荘周辺の人々もユニークですが、
やはりここに住んでいるひとたちが格別。
しかし、会社員神崎は
なんと2階から階下の女子大生を覗き見るのが趣味のヘンタイだし、
その女子大生は3人の男を代わる代わる自室に連れ込むだらしない娘・・・。
普通こういう人物をあまり好きにはならない。
けれども、そこが三浦しをんマジック。
読んでいくうちに、この人たちのことがどんどん好きになってしまいます。
特に、女子大生光子の事情には泣かされて・・・。
何にしてもだらしないコ、という印象が
鮮やかに一転していきますね。


何処にでもいそうだけれど、でも他のだれでもない、
一人ひとりの個性が光る、
是非オススメしたい一冊です。

「木暮荘物語」三浦しをん 祥伝社文庫
満足度★★★★★


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2 コメント

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三浦しをんマジック (こに)
2014-11-14 07:56:12
本当ですね。
これも映画化されたら面白いかもしれません。

登場人物がそれぞれの作品の中で存在感を示しているのが嬉しいです。
この人はあの作品の誰某っぽい、となったらガッカリしちゃいます。(最近、宮部みゆきさんがそんな感じで読む気が失せています…)

トラバお願いします♪
Unknown (たんぽぽ)
2014-11-14 20:36:36
>こにさま
普通は好きになれそうもない人物に、ここまで共感を抱かせるというのが、本当にスゴイと思います。
宮部みゆきさん、そう言えば私も最近あまり食指が動きません・・・

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