ぼんくら放浪記

Blogを綴ることによって、自分のぼんくらさを自己点検しています。

枯木灘

2011-03-08 05:00:00 | 読書
先月の釣行時に田子のレストランで見た『枯木灘の中心地』という碑が気になっていて、『利休にたずねよ』の読後、紀州人なら是非とも読んでおかねばならないと思っていた中上健次の『枯木灘』を読んでみました。

話は枯木灘ではなくて熊野灘の方、作者の故郷の新宮から以東の話でした。熊野灘地方の話なのに何故『枯木灘』というタイトルを付けたのか不思議ですが、枯木灘は白浜から潮岬までの海岸で断崖続きの地であり、その断崖には木も葉を茂らすこと無く、いつも枯木が並んでいるような風景なので付けられた名称だとか、そういう地形続きなので船が寄る良港がないという観点からこのタイトルを選んだようです。

でも実際には周参見、見老津、江住、和深、安指、江田、有田、袋と小さいながらも漁港は沢山あるんですけどね。

                  

養父の繁蔵から将来を見込まれ、土方の仕事を実直に働く主人公=秋幸を中心に複雑な家族関係が絡み、実父の龍造との確執が暴走族のリーダーをはっていた弟にあたる秀雄を殺してしまうというストーリー、養父の繁蔵も実父の龍造も秋幸の正当防衛・無罪を願うのですが・・・秋幸には安心して寄港できる港=家族がなかったと言おうとした話だと思います。

和歌山と三重県境の片田舎の噂話のバカらしさや、成り上がりの手法等が話を盛り上げ、或いはそんな話が筋を折ったりも感じられるのですが、おそらく今から数えて40年ぐらい前の話であろう熊野地方の暮らしぶりがよく覗えます。

新宮の街をよくは知らない私ですが、国道42号線から熊野川沿いの道へと曲がる交差点や、国道を直進すると熊野川を渡る橋などは自分の脳裏を甦らせます。

三重県側に入って、鵜殿・井田・御浜というような地名が出てきて、その上に有馬という地名が出てきます。秋幸の実父=龍造が建てたという先祖浜村孫一の碑が実際に有るのやら無いのやら、その有馬の地に行って海よりの寺を散策してみたいと思ったりもします。

             

難点は字が細く小さいこと、近距離も遠距離も焦点の合わなくなった年老いた目には適いません。

それに、南紀地方の方言は理解できるつもりの私でも、これは何を言ってるんだろうと首を傾げたところがありました。TVでも南紀地方の方言は放映される機会などあまり無いのですから、これだけこの地方の方言を織り込んでしまうと、全国的に読んでもらうのは読者にとって労を要することだと思います。

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