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資本主義は、略奪主義に戻る① 「お行儀がよかった冷戦時代の資本主義」

2018年02月14日 | 政治・経済

資本主義の行方について、3回に分けてお伝えします。 

冷戦時代の資本主義は、歴史を振り返ってみれば特別お行儀がよかったということである。ソ連という手強い相手があるから、まあまあ慎み深かったのです。ところがその重石が取れてしまった。

 

するとアメリカの資本主義はお行儀が悪くなった。いわゆる単独行動主義だが、ともあれアメリカの道徳、道義が低下してきたことは多くの人が認めて憂いている。

 

エンロン事件(エンロン社の巨額粉飾決算事件)、ワールドコムの事件(不正会計処理に端を発したアメリカ史上最大の倒産)がわかりやすい例である。それから裁判社会。あるいは国連の会議をアメリカは都合が悪いときは勝手に欠席したり脱退してしまう。イラク攻撃は国連を無視して行った。「わがまま勝手すぎるのでは」と、アメリカ国内からも反省の声が上がるようになった。

 

ソ連が崩壊したため、周りに遠慮がなくなったらしい。

 

ソ連が怖い存在である間は、世界の国を自分の味方につけなければいけないし、国内でもアメリカ国内に貧乏人がたくさんいると、これが共産主義に走る。実際、フーバー、ルーズベルト大統領のときはアメリカに共産党があった。

 

「ソ連に行けば失業者はいないそうだ、アメリカには25パーセントも失業者がいる。これではもう民主主義も資本主義も信じられない」と共産主義に同調する人がアメリカに生まれた。また第三党の進歩党も生まれた。

 

「これはいけない」とルーズベルトがニューディール政策を実行した。農業政策や社会福祉政策で効果が上がらないときは戦争もした。その戦争景気で失業者が消えたら話が片づいたという歴史がある。

 

しかしソ連という重石が取れてしまうと、「失業者や低所得者を20%も出すとソ連に負けてしまう。貧乏人をあまりつくってはいけない」という自制心が、アメリカから消えてしまった。その結果、アメリカには低所得者が増加し、ざっと数えて15%にも達している。

 

修正資本主義の時代は終わりである。

言い換えれば、今まで支配階級はアメリカ人全体のことを「国民」と思っていた。アメリカ国として一致団結していないと、ソ連に負けてしまうからで、戦争をするときは国民の助けが要る。

 

ところが、そのソ連が消えてしまうと、ニューヨークなどにいる人たちの頭から「国民」という考えが消えた。「人間はアメリカ人であろうと外国人であろうと、全部収奪の対象だ。何かを売りつけてやれ、何なら騙してやれ、がっぽりピンはねしてやれ」という人たちが現れて、この20年間はそれを実際に実行した。

 

すると、なるほど金持ちになれる。まわりの人よりも道徳レベルを下げると簡単に儲かるというのは、古今の真理である。それを見ると、みんなが真似をする。自粛している中流階級はバカに見えてくるという時代が始まった。

 

国民は要らない、グローバルに考えれば、地球上には資本家とお客と労働者しかいない――という自由資本主義が戻ってきた。まるでマルクスの時代である。「福祉政策はもうやめた。貧乏なのはその人の自己責任だ。頑張れ」と言い始めた。

 

---owari---

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