
館長さんが、丁寧に解説してくれた。5歳違いの徳富蘇峰と徳富蘆花が、兄弟で、とっても仲が悪かったことを知った(私の知識は、いいかげんなもので、それまでは、親子と思っていた)。最後の15年間もの長い間、二人は絶交状態にあって、蘆花が60歳で亡くなる時に、やっと和解している。兄の蘇峰は、95歳まで長生きしている(とてもハンサム)。
どうして仲が悪かったかであるが、館長さんによれが、蘇峰は、いつも、蘆花に対して、常に年下で見る感じで、指導的立場で接していたからとのこと。蘆花の言うことなすことにいちいち口を出し、いつまでも兄貴面をして、自分を対等の人間として認めていないと弟の蘆花は感じていたらしく、それが非常に苦痛であったらしい。
蘆花は、敬虔なるクリスチャンで、極めて真面目な人間で、几帳面で、自分を律し、曲がったことが大嫌いな人間だったらしい。そんな蘆花にとって、蘇峰は、したいことをし、少し世間ずれを起こした人間に思えて、蘆花にとっては、そんな兄が、どうしても我慢出来なかったらしい。
蘆花は、憧れのトルストイに会いに行って実際に逢い、トルストイの平和主義に強く影響を受ける。蘆花は、一人での農作業がとても好きで、絵を描くのも上手であった。
不如帰(ほととぎす)の作品は、当時、50万部も売れて、その中の主人公を浪子とし、女性に文学の上で初めて「子」を付けたことで、それ以後、皇族にしか付けなかった子を、多くの女性の名前に子が付けられる様になったとのこと。
それから、少し、雨が降って来たが、タクシ一で「熊本国際民芸館」に行った。グァテマラ展があっていた。そこで、39歳で日本を出て、スペインに20年間も住んでいる男性に会った。彼の話は、実に面白かった。
「田舎は、世界中、どこでも同じですよ。皆さん、世界中、とこに行っても優しいです。顔の色と言葉が違うだけです。スペインでは、バルセロナとマドリードが危ないです。バルセロナの日本大使館だけで、この半年で、300件ものパスポート略奪があっていますから。日本人のパスポートが、一番高く売れますから。ツアーで行っても、やられています。別にスペインだけでなく、ヨーロッパあちこちでそんな感じになっています。今、ヨーロッパは、すごいインフレです。取る人は、そこの人でなく、南米やアフリカやジプシーが多い様です。彼等は、仕事がちゃんとないですから。・・・今すんでいる所、スペインの南にある田舎町ですが、最高にいい所です。日本も、私は、大好きです。・・・」などと言われた。
向こうの人と結婚し、時々、日本に変える様で、画家で生計を立てているとのこと。
それから、「熊本市動植物園」に行った。昔から、何故か、私は動物が好きだ。いろんな動物がいたが、私は、象を見て、涙が自然に出てきた。こんなこと、生まれて初めてだった。歳のせいかなあ。
16時から、象を調教している所が見れるとのことで、雨が降る中、その時間に合わせて見に行った。調教する人が5人ほどいて、2頭の像を、それぞれ一人ずつが中に入って、調教していた。合図で大きな象が横になり、それから合図で立ち上がり、前足後足を上げたりして、芸をしていた。その後、りんごやにんじんやパンや草を沢山もらって、中の人間は、いなくなって、外には、ガラス越しに見る自分だけとなった。
象が食べているのに、鳩が10匹近く来て、パンを鳩同士でつつき合いながら競争して食べている。鳩は、象の足元で、うろうろし、鼻先でもうろうろしている。しかし、そんな鳩を象は鼻であしらうことは、全くしなく、もちろん、踏まない様に細心の注意を払っている。それが見ていて、よく理解できた。それを見て、自然に涙が出て来た。
人の世界も、象の生き方をお手本にして、冨を独り占めせずに、ましてや、奪う会うことなどせずに、分け与えればいいのに。
ヒトを除けば、動物の世界では、一番強いと百獣の王であるライオンでさえ認めている象、そんな気は優しくて力持ちである象みたいな国も人間も、少ないなあ。