何を見ても何かを思い出す

He who laughs last laughs best

真面目・誠実・真摯の根っ子は 夢

2015-12-11 13:07:19 | ひとりごと
「龍の契り」に出会って以来、服部真澄氏の作品は欠かさず読んできたが、「GMO」以降の作品は、情報化社会や遺伝子組み換え食品や環境問題について神の領域を冒しかねない技術革新という視点で書かれており、スケールも難易度も私の手に余るので、息もつかせないストーリー展開を楽しむことに終始し、ちっぽけな私の生き方を考えるためのヒントとなる言葉を探しながら読むことは少なかった。(参照「時代に即した祈り」

つい先日まで読んでいた「クラウド・ナイン」も、検索エンジン・サービスの世界的巨大企業をめぐる先端科学技術の話であり、本の帯は「人類は、技術は、神を超えてもよいのか」と警鐘を鳴らしているが、明日にも実現しそうな技術とはいえ、人工血液に宇宙太陽光発電衛星を利用した気象兵器とくれば、もう私の出る幕ではない。
「クラウド・ナイン」で書かれる人類の技術と神の領域は、私の出る幕でもお呼びでもないのだが、本書のメインテーマ「人工血液」への伏線となるサッカー・ワールドカップのドーピング問題の場面で交わされた会話を思い出させるニュースがあったので、「クラウド・ナイン」を再度手に取った。

本書でドーピングを疑われる選手は、サッカー選手としての単純な功名心でそれに手を出すわけではないのだが、事情聴収をする主人公が語りかける言葉が印象に残っていたのだ。
『''隠された罪の問題''っていうことが、ソクラテスとプラトンとの間で、すでに紀元前から話題になっていた。
 つまりー、神と当人を除いては誰にも明らかになっていない犯罪、ってことだけど』
『ソクラテスはいっている。''人は何処へ行こうと、どんなことをしようと、彼は自分を見ている者をもつ。
 彼自身は自動的に法廷となり、良心と呼ばれる裁きの場所となる'' てなことを』

これまでも、服部氏には、「GMO」の遺伝子組み換え食品のように「たとえ技術的に可能であっても人間が踏み込んでもよい領域なのか」という視点の著作があり、今回の人工血液や気象兵器でも同様の問題意識が提起されている。
遺伝子組み換え食品の利用には、食の安全を守りながら採算の取れる大規模農家の経営を目指すというプラスの面があるし、人工血液の成功は超少子高齢化社会のため2027年には百万人分の輸血用製剤が不足すると云われている日本の希望となるとも考えられるし、気象兵器の開発により近年の異常気象がもたらす大災害を未然に防ぐことが出来れば、有難いことには違いがない。
だが、人は銭金に弱いし何より功名心に取り憑かれやすいし、功名心はいずれ神の領域をも冒しかねない。
遺伝子組み換え食品を操作すれば、人の生きるための糧を握ることになり、人工血液を牛耳ることは正に他者の命を手中に収めることになる。エネルギー問題から考えれば、宇宙での太陽光発電衛星は進んで欲しいしいが、そのエネルギを利用して思うがままに異常気象を操作するとなると、開発を進めて良いとは思えない。
物事には+-両面があり、最初から間違った目的で事を進める者ばかりではないが、醜く弱い人間は、いずれ方向を間違えることになる。その醜さ弱さの分かりやすい例としてドーピング問題が使われたのではないか、本書の主題は「隠された罪の問題」ではないだろうか。
人口血液や気象兵器に私の出る幕はないが、他人の褌を利用してまでも自分の能力を偽り高評価を得ようとする浅ましさなら、よくある嫌な話であり、それを見せつけられるようなニュースがあったので、「クラウド・ナイン」のなかの「隠された罪の問題」が思い出されたのだ。

とはいえ、誰に評価されなくとも真面目に誠実に真摯に頑張っている人を応援するために、私はブログを書いているので、他人の褌でジタバタしているニュースについては無視をすることにする。

真面目に誠実に真摯に道を究めてきた方々のノーベル賞の授賞式が行われている。

<ノーベル賞受賞の大村・梶田両博士夫妻、スウェーデン国王の晩餐会に出席>産経新聞 12月11日(金)10時24分配信より一部引用
ノーベル賞を受賞した大村智・北里大特別栄誉教授(80)と梶田隆章・東京大宇宙線研究所長(56)は10日夜、スウェーデン国王カール16世グスタフの晩餐会に夫人らとともに出席した。
晩餐会に先立ち市内のコンサートホールで行われたノーベル賞授賞式では、来賓や夫人らが見守るなか、大村さん、梶田さんに国王からメダルと賞状が授与された。


ノーベル賞級の研究など理解できるわけもなく、日本人のノーベル賞受賞を喜び受賞者のお人柄や秘話などを有難く読んでいる私だが、ワンコの寿命を延ばしてくださった大村博士には殊の外恩義を感じている。ソクラテスも話題になったことであるし?そのあたりについては、つづく

ノーベル賞のノーベルとはダイナマイトを発明したことで有名であるが、やはり物事には両面がある。その良い面を人のために活かそうとする根っこにあるのは野望ではなく、’’夢’’だと思う。

敬宮様・作 テーマは’’夢’’



写真出展 TBS系(JNN)12月10日(木)13時58分配信より
       http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20151210-00000054-jnn-soci