言霊(ことだま)という言葉がある。
広辞苑によれば、言葉に宿っている不思議な霊威。
私はシンプルに、心に働きかける言葉と捉えている。
高野登:善光寺寺子屋百年塾塾長
元リッツカールトン日本支社長の同氏は、
ホスピタリティというテーマで講演や著作活動を行っている。
私はこれまでに3度お会いしたことがある。
1度は彼の講演会。
他の2度は参加したイベントで、たまたまお会いした。
その時々で、彼の発する言葉に心を洗われた。
そして、私もこういう言葉を発する人間になりたいと思った。
その高野氏が故笠井宏美氏と共に2011年、
「善光寺寺子屋百年塾」をたちあげた。
「百年思考」はその百年塾が10年という節目を迎えた2021年、
高野氏の講義をまとめて出版された本だ。
その冒頭、最初の講義で塾頭の笠井氏が、
百年後の人たちに向けて書いた手紙が紹介されている。
2111年を生きているみなさんへ
みなさんが生きている時代について教えてください。
家族みんな笑顔で暮らしていますか?
生まれてきたことに感謝していますか?
争いの涙ではなく喜びの涙を流していますか?
中略
「何が幸せなのか?」
「生きる軸になるモノって何だろう?」
生活が豊かになったけれど、どこか不安で何かを探しています。
中略
私たちはみな、自分の時代を生き、その後の時代の人たちへ
バトンタッチする役目があります。
今を生きている自分たちの繁栄だけを考えてきた結果、
置き忘れたものを探している私たちは、
多くの学び手とともに失ったものを探し始めました。
中略
どうぞ私たちがバトンタッチしたものが、みなさんにとって
幸せの種になっていますように。
笠井宏美
言葉の節々に魂を感じる。
時代は進化しているが、人間は幸福になっているのか?
100年前、スマホやネットはおろか、TVやラジオもない時代。
人々は不幸だったのだろうか?
私にはむしろ逆だと思える。
人間は本来無一物。
何もないところから生まれ、無に帰る。
未来を生きる子や孫の世代が幸福感を感じる社会。
それを実現するために、
今を生きる私たちはどう生きればよいのか。
「百年思考」を読み、感じてみたい。