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監督&音楽 : 桑田木英祐
裏筋 : もとい!あらすじ。
湘南鵠沼。中学生のススム少年の楽しみは早朝のサーフィン。
新聞配達のバイトで買ったサーフボードが彼の宝物だった。
ススムは不精でワックスを剥がしたことがない。
ワックスは上塗りの上塗りで、まるで塗り壁のようにべったりおかまいなしで、
ワックスの層の間には砂や陰毛がびっちり挟まっていた。
ある夜、ススムは居間でワックスの上塗りをしながら、
お気に入りの面接系ビデオ『密室の面接シリーズ』を見ていた。
左手にワックス、右手にSan Of A Bitch。
女性面接官が面接を受けに来た男性の股間をヒールでグリグリするところだ。
何故か若い男性は黒くてガッチリしていていかにもAV男優らしかった。
ススムは本番よりもこうやってイタブラレルのが、す・き・だ。
音が漏れないようにイヤホンを耳にかけ、発射体制に入った。
突然、居間へお袋さんが入ってきた。
いつもは左手にはリモコンを持っているはずだったのに、その日はワックス。
本来左手の人差し指は停止ボタンに置かれているはずだったのに、
ススムはただただワックスに指を押し込むだけだった。
焦ったススム少年、そのまま寝たふりをした。
ビデオは回り続け、下半身裸のサーファーボーイ。悲しきサーファーボーイ。
『情けない。。。。』 お袋は一言いい、ススムの下半身にタオルケットをかけてあげた。
新聞配達の道、茅ケ崎のモーテルアンデルセンの前を通るのがススムの日課だった。
『いいっすね。オイラも彼女つくってここに来たいすかね。』
アンデルセンにはいろんな部屋があって、ビートルズの部屋とかサーフィンの部屋とかいろいろある。
ここのオヤジはいいオヤジである。筆者はちょこっと知っている。
ただのモーテルなのにサザンが紹介した70年代風のモーテルと宣伝してる。ただ古いだけだ。
ススムはアンデルセンの前で立ち止まり、サーフィンの部屋で面接プレーをしたいなあ、
とボケーっと考えていたところ、
ホテル玄関から出てきたソレタコデュアル(注★1)のシャコタンカー(注★2)に轢かれそうになった。
運転手が出てきて『前乗りしてんじゃねーっ!』といっていきなり殴られた。
運転手はモノホンで少々北海道なまりがあった。
殴ったはいいけど、シャコタン男の腰には力が入ってなかった。
いきのいい魚ピチピチテイクオフ運動で少しお疲れ気味だったのだ。
ススムが気を失うほどの力ではなかった。
後々考えると、前乗りするなというのは、オレの前に出てくるんじゃねー、という意味だった。
さすがサーフシティー茅ケ崎だなと、ススムは感心した。
ススムはよく前乗りをする。
ホームポイントがそういうところなので、前乗りが当たり前になってしまったのだ。
ある日、舟前で波乗りした。鵠沼から辻堂方面に行ったポイントだ。
ダンパーめの波に乗った瞬間、背中からヘイヘイだべや!ヘイヘイだべや!と大声がした。
ススムはその声を無視して乗り続けた。
後ろのサーファーに追いつかれやがて衝突した。
『おい、ちょっと浜に上がれや。ん!お前こないだのアンデルセンの前乗り野郎だべや!』
浜に上がり、ススムは身を守るため即土下座した。
頭を砂にこすり付けた。
どっかのカップルが捨てたドムドムコーンダムがススムの口に入ってしまった。
最悪だった。どこぞの見知らぬ殿方のものが口に入ったのだ。
女性はこんなものよく口に入れるよなあ、とススムは感心した。
とっさのときに感心する心、死んだじいさんがよく寝言で言ってた言葉だ。
ススムは土下座しながら『うわっ、この最低野郎!』と叫んでしまった。
『おいおい、誰が最低なんだ?この前乗り野郎!』
ススムのハラに一発キックが入った。
『うううぐぐっ。。!』
ススムは口から白い液体を吐いた。
男は少々焦った。口から泡を吹くほど蹴り飛ばしたことを後悔した。
『僕も乗りたいんすかね。。。うううっ。。。
毎日バイトでせっかく板買ったのに。。。
あまりにも人で混んでいて、怖いし乗れないすかね。
お袋には情けないとまで言われたんすかね。』
ススムは泣きながら口のわきのメンザーをぬぐった。
シャコタン男はススムを気の毒に思った。
『お前それほど波に乗りたいなら、一度稲村に来てみろ。
来週水曜日だ。伝説の大波がやってくる。ビッグウエンズデイだ。
それを見てサーフィンの真髄を学べ。』
ススムは言われたとおり、その水曜日稲村へ行った。
こんな波は見たことなかった。腰が引けた。むしろへなへなと座り込んでしまった。
ローカルやプロの多くの勇気果敢なサーファーがその波を攻めていた。
警察や消防はサーファーが海に入ることを阻止しようとしたがムダだった。
ヘリが海上高く飛び、次々救助をした。
ジェニファーロペスもいた。ん?ジェリーロペスだっちゅうの!
一人、その大波に屈することなく華麗なアップスーンダウンを繰り返すものがいた。
一人だけ異彩を放っていた。
ブレークに食われそうになったとき男は一瞬しゃがんだ。
そのしゃがみ方は『ヤンキー座り』だった。
はっ!もしや! ススムは目を丸くし、やがて声援を送った。夢中でこぶしを振り上げた。
男は最後痛恨のワイプアウトをした。
男はなかなか海面に上がってこなかった。板だけ浜に打ち上げられた。
ススムは走っていって板を手に取った。ドナルド・タカヤマの板だった。
流血したその男は仲間に肩をかり歩いてきた。その板をススムは男に差し出した。
『凄いライディングですかね。それが言いたかっただけすかね。』
男はその『ガン』をしばらく眺めてからススムに戻した。
『次でかいの来たらそれに乗ればいいっしょ』北海道弁だった。シャコタン男だった。
関係ないけど北海道にシャコタン半島がある。
『あの、、名前を、、』
『オレはダンディーTだ。これが稲村だ。いずれ乗れよ、前乗りボーイ』
。。。17年後、ついに稲村で伝説の大波がやってくるという情報が入った。
元ハリケーンのイオケが日本に接近しているのだ。
このハリケーンIOKEは台風名ボッキーと名づけられた。
ススムは家庭での数々の不祥事(キャバクラ嬢メール事件、出張先電話で交換事件、マイレージでソープ事件などなど)
これらを一掃し、あらたな自分を生み出すため、大波に乗ると決めた。
稲村ボッキー、伝説の大波。
乗ったものにはボッキーの称号が与えられる。
しかし台風ボッキーは進路を北北西に変えてしまった。
残念ながら稲村ボッキークラシックは延期となってしまったのだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/12/e7a917a78263963e9dd93dc762dd3a6f.jpg)
(大会延期で安堵の様子を隠せない主人公)
とりあえず鵠沼ボッキーでいくすかね。
2006年秋、ボッキーのあらたな挑戦が始まる。
『暑かったけど、短かったよね、夏』
注★1:ソレタコデュアル→ソレックス社製キャブレターにタコ足エグソーストマニホールド、
デュアルマフラーの、昔の族の基本車改造3項目。
注★2:シャコタン→『ヤングマガジン』略してヤンマガに連載されたシャコタンブギがメジャー。
車高が低いのでシャコテイでもいいと思う。
シャコタン男は小樽の実家のガレージでショートホープの箱が縦に入るか入らないまで車高を落とし、夜の札幌大通りでパトカーとカーチェイスをしていた。