めっきり秋らしくなってきた23日、小雨の中を宝塚に向け出発。渋滞が心配でしたが、車の量は少なく、1時間かからず劇場に到着できました。先週が連休だったのと、そろそろ運動会シーズンに入ってきたので道が空いていたのでしょうか。
座席は18列で久しぶりのセンターブロックでした。開場前スタッフの女性に「いい席ですねぇ」と言われたのにはちょっとふたりで笑ってしまいましたが。
幕が上がる前、舞台の上方にあるプロジェクターから銀河系の星々?が天井にかけて映し出されて、まるでプラネタリウム。これならいっそのこと、舞台の背景から天井にかけて継ぎ目なしのドーム状にして、プラネタリウムみたいに宇宙空間を演出してスケール感を出してもいいかもと思ったりしました。
最初はコンピューターゲームのような映像を多用して戦闘シーンを再現したり、複雑な国家と人間関係を説明する映像が続いてどうなることかと思いました。
しかし、いつもの宝塚らしい宮廷シーンに移行するにつれて落ち着いてストーリーに入って行けました。
まず一番に目に飛び込んできたのはやはり凰稀かなめのラインハルト・フォン・ローエングラムです。
この人は、私的には久々の「大人」のトップスターという感じですね。
昔の宝塚には、成熟した大人の色気を感じさせる男役のトップスター(例えば鳳蘭とか麻実れいとか)がたくさんいましたが、最近はそういう人が少なくなりました。
↑プログラム表紙です
でも、凰稀かなめはそういうスターの中に入れてもいいような容貌を持っていると思います。マントを翻して舞台を闊歩する姿は絵になります。台詞も明瞭でいい声です。
ただ、やはり歌にこだわってしまう私としては、歌唱力がちょっと残念な感じです。
かなりうまくなっていると思いますが、特に声を張り上げて歌う時に難が目立ちました。自分の感情を表現するようなしんみりした歌だと、「おっ、けっこう歌えるじゃん」と思ったりしましたが、声量を上げるとビブラートが消えてしまいます。(笑)
それに引き替え、娘トップの実咲凜音、うまいです。久しぶりに歌ウマの娘トップに出会った感じで、しかも端正な美人ですね~。
↑これもプログラムからです
歌は歌えるとかのレベルではなく、本格的な歌唱力です。
よく「歌ウマ男役トップ」と「歌イマイチ娘役トップ」のデュエットがあって、娘役がうまく助けられているというパターンがありますが、宙組は逆パターンです。(笑)
雰囲気はなんとなく大鳥れいを連想してしまいましたが、それ以上な感じです。ただちよっと今から痩せすぎな感じが気がかりです。(笑)
でも今回の最大の発見はジークフリード・キルヒアイス役の朝夏まなとでした。
歌はびっくりの歌唱力です。
こんなに歌えるのかとあっけにとられました。思わず双眼鏡(オペラというには恥しいただの双眼鏡です)を取りました。
顔は眼が大きくて、まるで鉄腕アトム(笑)みたいですが、その容貌に似合わないスケールの大きい歌声と、ひたむきにラインハルトについていく一途な役柄を演じる姿が印象に残りました。まだまだ無知な私でした。
緒月遠麻は見るからにいい人な感じで、途中の捕虜の交換式などまさに「戦場のアリア」みたいな交歓シーンで、ぴったりでした。
話は複雑なストーリーで、どう最後に収束させるのだろうかと心配するほど。前半はこれ以上展開できないというくらい話が広がりました。
さすがに小池先生だけあって、ここまでは役も多くて、生徒たちも遣り甲斐があっただろうと感心していました。幕間にプログラムを買って、出演者などを確認しました。
↑これもプログラムから
ところが、後半は、それまでの数々の両陣営の駆け引きや権謀術数にまつわるエピソードが、だんだん尻すぼみになって、結局あっけなく尻切れトンボの結末に。トップ二人の恋愛模様も全く発展せず、ただの主従関係のまま。男の友情物語でした。まあ原作がそうなのかもしれませんが。
でもあまりに地味な場面での最後なので、「えっ、これで終わり?」と思っている間に朝夏まなとでフィナーレが始まりました。ハリウッド映画の「TO BE CONTINUED」という感じです。「これはPART2が絶対あるよね、それでなかったらちよっとひどいね」とつい二人で愚痴ってしまいました。
せっかくの豪華なステージなのにと、残念感満載でした。
この結末さえもう少し工夫されていたら、トップコンビの魅力と、歌ウマも多い宙組だし、衣装は豪華でセットも立派、映像もよくできていたので、私たちは絶対リピーターになっていたと思います。
そのせいか、入りはよくなかったようで、1階は満席状態でしたが、2階から1階に降りるエレベーターは一度目でも空っぽの状態でドアが開きました。2階は入っていなかったのですね。帰りのロビーも人数が少なく感じました。
今回の観劇では、上記のように多くない客の入りにもかかわらず、男の観客が目立ちました。実際珍しく男子トイレに行列ができるほどだったのですが、この肩すかしの結末では、せっかく「銀英伝」目当てに来てくれた新規の男性客のリピートは難しいと思います。
小池先生、なんとか東京までに手直ししないといけませんよ!(笑)