グリーンブレーカーズ by 高木肥料店

農業の現場の おはなしなどなど。

凍霜害があっても、田植えを急ぐ理由〔わけ〕。

2014-03-09 07:17:13 | Weblog
凍霜害があっても、田植えを急ぐ理由〔わけ〕。

3月下旬から4月上旬の気象は、気まぐれ。たとえ南九州とはいえど、
いちど寒波が襲来すれば、早朝から午前中にかけて気温が氷点下にな
ることも ままあります。

このような低温及び強風といった気象条件のなかに、田植されたばか
りのイネの苗が、あったとしたらどうでしょう。

ご存知のように、なんといっても イネは熱帯が起源の作物 ですから
12度以下の気温下になると、まずはじめに生育が止まります。さら
に続けて寒波が続くと〔遭遇した時間の長さにもよりますが〕悪くす
れば

 イネは葉先から枯れはじめ、最悪の場合は枯死

してしまうのです。

ちなみに一昨年の2012年はとくに寒さと風が厳しく、わたくしも
田植作業の終了した田に氷が張った光景を2度・3度と目撃しました。
このような田んぼで、苗が枯死した場合には、後日あらためて田の代
かきをおこない新たな苗を田植えしなおすことになります〔枯死した
苗は代かきと同時に土中に鋤きこまていきます
〕。

さて、そこでです。

なぜに農家さんは、寒波がくるかもしれないというリスクをかかえて
までも、3月中下旬に〔ある意味無茶をして〕田植えを急ぐのでしょ
か。

その答えは・・・じつは とれたおコメの価格にあります。

8月15日のお盆前、なかでも7月中にとれたおコメの価格は高いの
です。そこには、

 お盆前の、なるべく早い時期に、まとまった量の新米がほしい

という市場のリクエストが存在するのです。

というわけで、田植えをしたあとに寒波がきて、田に植えられたイネ
が枯れてしまうかもしれないというリスクをかかえてまでも、南九州
の沿岸部の農家さんが3月中下旬に早期イナ作の田植えをするのは、 

 農家さんが市場原理にのっとってイナ作をしているがため

ということになります〔需要があるというのは、ほんとにありがたい
ことだとおもいますし〕。
→ 農家は買ってもらってなんぼ の回は こちら

そして、もうひとつ。

そこには、〔30年以上にもわたって〕早期におコメを収穫する作型で
培われてきた“技術”の存在も あります。
そう、たとえ激しい寒波がきたとしても、田植されたばかりの
イネの苗を枯らさないための技術の集積が〔いまは〕ある 
 のです。

次回は、そんな冷害対策の技術についてのおはなし です。


◎  おコメの低温貯蔵の技術が発達していなかった時代の話し、
  ですが、今回ご紹介したお盆前の宮崎コシヒカリの買取価格は、
  30キロ当り 12000円することもある といった経営的には
  じつに“おいしい”時代でした。
   
 51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg 「夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染




田植えは 虫のしらせで 〔前編〕。

2014-03-08 15:39:53 | Weblog
田植えは 虫のしらせで 〔前編〕。


10日ほど前には あまりの暖かさ・雨の多さからか、代かきの
すんでいない田んぼからでもカエルの声が聞こえ始めていた南九
州でした。
が。。先日からはふたたびの寒の戻り。啓蟄だというのに昨日は
零度、今朝方は零下
というきびしい冷え込みが続いています。
そんななか はじめられているのが、例年 3月の下旬に最盛
期を迎える早期水稲の田植えの準備です。そんな田植の時
期を判断する話しとなりますが、まずは作型の説明から。

 ↓


南九州の海岸部地方では、3月中旬より4月はじめにかけて、順次
田植えがおこなわれていきます。この時期天気予報をみると、
の地方ではときおり雪のマーク
<emoji code="h190" /> も。。

日本列島は南北に長いんだなあと、実感する季節でもあります。

イネの品種は主として、コシヒカリ。収穫は、おおむね平年並み
の気候であれば7月中旬からになります。
 
余談ですが・・南九州では日常の風景となった感のある『真夏の
イネ刈り』の風景。
観光客、とくにこの夏の時期に南九州を訪れられた関東以北の皆
さまは、この真夏のイネ刈りにかなりの違和感をおぼえる光景ら
しいです。

収穫する機械、コンバインの運転席には、真っ青な真夏の空に
 映える鮮やかな日除けのビーチパラソル。。
」  
 
 ・・・やっぱり 違和感でしょうかね/笑。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 

なぜ、こんなに早く稲刈りをしなければならないのか・・
それにはちゃんと理由があります。

イネは、実をつけてから倒れると、実の品質が悪くなり収穫量も
減少します〔茎が折れるわけですから根からの養分もうまく実の
ほうにあがらないし、日当たりだって悪くなるわけですから〕。

イネを倒すのは、強い風と豪雨 ・・秋に多い台風 です。この秋
台風を避けるために、 南九州では「早春にイネを田植えし、
台風前にイネを収穫しようとしている」
わけなのです。

じゃあ、もっと 早くに植えるといいじゃないか、そうしたら 
 完全に台風の被害にあわないはず
」 と、こう考える方も多い
かとおもいますが、そうもいきません。

温度です。イネは 最低気温が12度以上ないと生育しない。

12度以下の気温が続き、早朝に霜の被害をうければ枯死してしまう
んです。たとえば宮崎の平均気温が12度になるのが、3月の中旬か
ら4月上旬にかけて。イネの生育適温がそのころからはじまりますの
で、そのぎりぎりの時期にあわせての田植えがなされるわけです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 


田植えの時期のタイミングが収穫の状況を大きく左右します。

  田植えの時期が早過ぎると・・霜の被害で、悪くすると枯死
  田植えの時期が遅くなると・・収穫時の台風被害で倒伏

まさに 「前門の虎 後門の狼」 状態です/笑。
だから南九州の農家さんにとって、毎年の田植えの時期の決定は、
イネの収穫を左右する重要な決断になる
というわけです。

そんな植え付けの春は、もうすぐ。


◎ 早期米は、フレッシュさが命。なるべくはやく出荷したほうが
  価格が高い
。そういった経営的な問題からも早植えは奨励
  されています。

51P4M6yKWYL__SL500_SS75_.jpg夢で終らせない農業起業」「里地里山複合大汚染






こんなに雨が多い年になるなんて。

2014-03-05 10:21:53 | Weblog
こんなに雨が多い年になるなんて。

平年であれば、春先になると毎年水不足やヘタすると旱魃が心配される
ほどの南九州であるはずなのですが・・・本年は様子がちがいます。

 2日か3日のあいだ晴れたと思ったら、また雨

といったぐあいに “異常に雨が多い気候” なのです。

この平年とはちがうお天気の影響をうけているのは、施設栽培のお野菜
たち。お日さまのでる時間が少なくなるので、必然的に生育に不可欠な
日照量が不足がちになっているのです。

そしてそういった日照不足の影響は、たとえば

  樹の生育が軟弱となる
  午前中の温度が上がらない
  良いお花が咲かない
  昆虫の動きが鈍くなる
  受粉したとしても結実しない
  湿気が高くなるためにカビ病が多発する
  収穫量が少なくなる
  収穫物の品質がわるくなりがち

といった、生育の不良状態をひきおこす[いわゆる負の連鎖ですね]こと
にもなるのです。

1月下旬から3月中旬にかけてのお野菜の出荷が少なくなる時期に照準を
あわせた施設栽培経営にとって、この日照不足の状態はほんとに痛い状態
です。またこの作では、暖房に使う重油代も円高の影響でずいぶんかさん
でいますから[とくに収穫の山が安値と重なった場合には

 悪天候と重油高のダブルパンチをくらってグロッキー

といった状況にある農家さんも多いことだろうと、心配せずにはおられま
せん。

そこでそんな日射量が極端に少ないという、ある意味異常な天候下にあっ
ての対策ですが・・・

 ● 内カーテンの管理を適正におこなうことで日射量を確保する
 ● 日中の換気を徹底する
 ● 時間にそった適温管理に努める
 ● 湿度が高い場合は日中でも加温機で送風する
 ● 循環扇を活用する

といった管理を実行することで、施設内の温度と湿度の管理を徹底して
いくことがいちばんのお薬になることと思います。

ということで今回は、平年とはちがう異常な気象の年にあっては毎日の
ちょっとした努力の積み重ね
こそが[ふた月からみ月というスパンでみ
れば
]作物にりっぱな実をつけさせられる方法だというおはなしでした。
→ 例年の乾燥した気候下の管理のはなしは こちら


◎ 雨で大わらわといえば、平年であれば12月から2月にかけての
  乾燥する気候豊富な日照量を活かすはずの千切り大根 の管理
  じつに大変なものでした。なんといっても雨が降れば大根が干せ
  ませんし、雨間をみて干したとしても乾くのに時間がかかりすぎ
  るといったかんじです。・・・お日さまってありがたいなぁってつくづく。

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仏さまにお供えするお花をつくる。後編。

2014-03-02 09:51:46 | Weblog
仏さまにお供えするお花をつくる。後編。


2月14日分の山上のシキミ園 のつづきです。

シキミ園で育てられたシキミの枝は、樹の懐枝[ふところえだ]の部分
から採取され、長さを調整されたあとに新聞紙でくるまれ、水に浸され
た恰好で出荷されていきます。


のの シキミ出荷まで.jpg


冬場の問題点としては、これ。


のののの シキミ寒害.jpg


防霜ファンを設置しているにもかかわらず、晴れた日の早朝の放射冷却
現象に伴って部分的にでてしまう凍害だということです。
・・・シキミを育てることを考えた場合、夏場には栽培に適した涼しい
場所であるのですから、これまあしようがないことかもしれませんね。

それにしても、このみごとなシキミ園です。

獣害問題が深刻になる前から、獣害被害が少ないシキミに注目し、そし
て園の面積とシキミの販路を拡大されていった この経営者さんの先見
の明は、じつにたいしたものだと思いました。


◎ ちなみに冬場のシキミの寒さ対策には ライムショットの葉面散布、
  そして夏場の濃い緑色を出すための対策としては マグショットの
  葉面散布を おすすめしています。

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