靖国神社ツアーや新宿戦跡ツアーのガイドが増えてきた70歳の頃でした。明治神宮外苑「聖徳記念絵画館」を案内した時に、油彩画「振天府」を見ながらふと疑問が湧きました。靖国神社・遊就館内にあった戦利品は、夫々の関係国に返還したと聞いていましたので、「振天府」に描かれている刀剣や宝石類はどうなったのだろうかと思いました。早速、宮内庁に情報開示請求をしましたところ開示文書が交付されました。振天府がある皇居吹上御苑の地図も開示されました。
皇居吹上御苑内の「振天府」、「懐遠府」、「建安府」、「淳明府」、「顕忠府」にあった「戦利品」は「第八軍第二旅団」に引き渡しと宮内庁開示請求文書にあります。「米第八軍司令部」は、横浜市税関にありましたので「第二旅団」も横浜市内だったと思います。
明治神宮外苑「聖徳記念絵画館」
説明文に「日清ノ役、出征ノ將士、其ノ獲ル所ノ兵器、諸物ヲ以テ天皇二獻ル」「吹上御苑ノ東南二一府ヲ造謍シ・・振天府ト曰ウ。」
「北清事變ノ後、懐遠府ヲ、日露役ノ後建安府ヲ造謍アラセラレシ」とあります。
即ち、日清戦争は振天府。北清事変は懐遠府。日露戦争は建安府を造営し、それぞれの戦利品を収納したと説明をしています。
清国の獅子を描いていますが、実物を描いているのか不明です。しかし靖国神社境内にも、山縣有朋記念館庭園にも戦利品(鹵獲品)として置かれています。
アメリカ占領軍第8軍第2旅団が宮内庁から運び出したと考察できます。
振天府(管理人は、宮内庁に「振天府・懐遠府・建安府」の写真と場所を情報開示請求した。また敗戦後の「戦利品」をどの様に処理したのかも請求した。写真は提供できないということなので、建築学会から有償で提供してもらった。)
新宿区内の自宅から自転車に乗って宮内庁に行きました。
ちくま新書:井上亮著『天皇の戦争宝庫 ー知られざる皇居の靖國「御府」』は、正に「知られざる歴史」が満載の歴史書でしたが、「知られざる日本の歴史」は、全て公開すべきだろうと考えています。
戦前の靖国神社・遊就館内にも日清戦争や日露戦争の戦利品(鹵獲品)の兵器などが展示されていました。
(了)