残念ながらフルシャ&プラハ・フィルの演奏を楽しむことは出来なかった。
まず、弦の鳴りが悪い。
ホールの音響のせいかも知れないということで、休憩後に席を移動してみたが、その印象は覆らなかった。昨年聴いた井上道義先生指揮のN響のブルックナーの音に較べ、あまりに貧弱だ。
もっとも、アンコールのスラヴ舞曲15番では、結構音が出ていたので、もしかすると今日の公演は、二夜にわたる東京公演に於ける全力投球後の省エネ奏法だったのかも知れない。
木管のピッチも誉められたものでなく、たとえば、「新世界より」の第2楽章の終わりなど、耳を疑うほど合っていない。
もっとも、はじめからプラハ・フィルにベルリン・フィルやシカゴ響のような機能性を期待しているわけではなく、「技術はともかく、空気感がよいね」という類のローカル・オケの味わいを求めてきたわけだが、本日のパフォーマンスは、それには至らなかった、というところである。
フルシャの音楽も堅実で健全であるのはよいが、少なくとも止むに止やれぬ音楽的衝動のような瞬間が、アンコールまで訪れなかったのは物足りなかった。しかし、本日の一公演でもって、評価を決めつけることはしないでおこう。
かなり、欲求不満なので、遠回りしてレコード屋に寄ろうか、とも考えたが、こんな日は大人しくするのが吉かも知れない、と家路を急いでいるところ。